璃莉霞達が、浴衣パーティーで(かしま)しくやいでいた頃・・・

一方のこちら、米国での騒動に巻き込まれた清秀達は。

 

 

清:そーれで、話しって何だ。

 

厳:うむ、清秀―――単刀直入に聞こう。

  “彼ら”の事を、どう思う?

 

清:“彼ら”―――

 

柊:「DIVA」―――と言う人達の事ですか。

 

厳:ああ、そうだ。

  仲間の事を思い、そして助けてやれる・・・

  それは大切で、大事なことなのだろうと、オレは思う。

 

  ただな―――オレは思うのだ、ならばオレ達は・・・あの場にいた“オレ達”は、なんなのだろうと・・・な。

 

 

「“あの場”―――だけの事で言えば、オレ達は完全な「オブザーバー」だ」

「言わば「関係のない人間」なのだ」

「“彼ら”の仲間が窮地に陥っていれば、その仲間が救う・・・」

「それは、“彼ら”が為せばいいだけの事なのだ」

「だが、「関係のない人間(オブザーバー)であるオレ達は、それをせられた・・・

 

米国一のサーバー・エリアで、体験・・・見てきたことの感想を、同じくして同じ景色を見てきた2人に話す厳三(よしみつ)・・・

けれどしかし、厳三が言いたかったことは、人と人が助け合う―――と、言う事ではなく、

寧ろ彼は、現実的に物事を捉えていたのです。

 

 

厳:ただな、清秀・・・

  これは、オレ達にとっては「機会」なのだ。

 

清:どう言う事だよ―――

 

厳:「オレ」「お前」、そして「市子」・・・

 

柊:この地域で、最も影響力のある「家」―――!

 

厳:そう言う事だ・・・。

  清秀、オレ達はまだ“若い”。

  若いと言うには、余りにも知らなさすぎる事が多い。

  清秀に柊子、お前達は、あの「クソババア」の事を、どう思っている。

 

清:お―――おいおい・・・滅多なことを口に出すもんじゃ・・・

 

柊:千極様は、何か心当たりがあると?

 

厳:オレは、常々思っている事がある。

  あの方の為されよう―――それこそは、まだ何も知らぬオレ達を鍛える為に・・・

  そうは思わんか。

 

 

悪く言えば、厳三は“出来過ぎた”人間でした。

彼としての年相応でなく、どこか達観し、広く遠くを見ているかのような物言い・・・

今回の件に関しても、第三者からの勧誘はあったものの、そればかりで捉える事はなく、

これを“機会”に・・・と、考えていた節があったのです。

 

そう・・・“今”は、学生気分でいいのかもしれない―――・・・

けれど自分達は、これから確実に年齢を重ね、“学生”から卒業をする・・・

そうなった時―――自分達が成人となった時、“この地域”と言う小さな枠組みではなく、もっと広い世界―――

そう・・・「世界」を相手にする―――

 

けれど自分達には、やはりそれをするだけを“経験”が足らない―――

そこで焦点に上げられたのが、「瀬戸朝霞」・・・

 

あの、(はかりごと)多き人物、そのやり―――

これまでに自分達が、あの御仁からの“かわいがり”により、どれだけ(もてあそ)ばれてきた・・・

 

しかし厳三は、今でこそ思うのには、あの方の“かわいがり”こそは、

そうした自分達の成長を見込んだ上での、「教育」なのだ―――と、思うようになっていたのです。

 

そこを考えれば、この「オンライン・ゲーム」は、最適・・・

現実的には、世界各国を飛び回るのには、数十時間を要しなければならないものを、

ネット経由で会えるようになれば、ものの数秒で目的地へと行く事も出来る―――

しかも、「プレイヤー」も他人が操作する・・・と言う事は、そこでの人脈も培える事も出来る・・・

 

その事を、教えてくれたのは、誰あろう―――

 

 

厳:清秀よ―――お前は、お前の連れの事は、好きか。

 

清:はあああ―――?!

  つ・・・連れ―――って・・・

 

厳:松元璃莉霞の事だ。

  あれは大したものだ、探したところで中々いない。

  だからこそ―――だ、逃げられんようにしろ、落胆をさせるな。

 

清:そ―――そりゃ、ありがたいこったけどよ・・・

  じゃ、なんであんたは・・・

 

厳:オレを、ここまで至らせたのは、彼女だ。

 

柊:どう言う事です?

 

厳:実は、あいつに目を付け、雷鳳に来させようとした事があってな。

 

清:ん・なっ―――?!

 

柊:「鳳凰祭」・・・ですか。

 

厳:うむ。

  まあ―――その時は、彼女自らが実力を示したことで、ご破算になった。

  なったのだが―――その詫びとして、誘われたのが、「レイド戦」だ。

 

柊:そこで何を見たと言うのです。

 

 

それこそが、仮想内に於ける、「リリア」としての人脈―――

日本国にある、サーバー・エリア「トウキョウ」だけに留まらず、

各国にあるサーバー・エリアに知り合いがいる・・・顔の広い交友関係に。

 

けれどそこは、所詮「仮想の世界」―――

現実としての、世界ではない・・・

 

ただ、“交友”としての“関係”は、活きているのだと言う事を、厳三は知りました。

 

そして、今回の米国での出来事・・・

 

仲間内の関係性を見させられた内では、「美談」で収まるだけでしかありませんでしたが、

厳三は、そこで違うものを見せられた気がしたのです。

(事実、「秋定」(厳三の仮想内でのアバター)は、その場にいた者達とは、フレンド登録済み)

 

だからこそ―――

 

 

厳:だからこそ―――このイベントが過ぎたら、すぐさまあの地へと戻るぞ。

  そして、この事は一切、他言無用だ。

 

清:ああ、判ってる。

 

柊:判りました。

  ―――けれど・・・

 

厳:うん?どうした―――

 

柊:もう少し、早く判り合えたら良かったですね、私達・・・

 

清:そう言えばそうだよな!

  大体あんたも、やり方が強引過ぎるから、誤解招くんじゃねーのかよ!

 

 

 

#75;取り巻く環境の変化

 

 

 

そこで厳三は、破顔に、一笑に附しました。

 

かつては、狭い視野でしか物事を捉えられず、国際的に見ても各国との乖離が見て取れるこの国・・・

その事が判ってはいても、何もできない自分に、歯痒い日々を送り続けるしかない、毎日・・・

 

だからこそ、多少、強引なりと判っても、まずは自分達が暮らす、この地域を一つに纏める為に、

学生の時分から動き出すべきだ―――と、厳三はそう捉えていたのです。

 

そうした自分の矜持を、根底から覆させた者―――

それが、仮想内の「リリア」と言う存在でした。

 

彼の者は、自分よりも強く―――また、幅広い交友関係を持っていた・・・

 

それも、現実内ではなく、仮想内に―――

 

けれどそれは、いつしか現実的にも影響してくるモノ・・・

 

そして思う、自分は“今”、一人ではないのだと。

 

その事は、密かに自分の内で課していた“禁”を破り、

自身の“幼馴染”を食事に誘った時に、現れたものでした。

 

 

市:松元・・・璃莉霞さんを―――ですか?

 

厳:うむ、お前達は、ここ最近でより交流を深めている―――そう聞いたのでな。

  それで、お前はどう捉えているのだ。

 

市:恥ずかしい事ですが・・・

  私も、彼女の事を深く知るようになったのは、つい最近の事なのです。

 

厳:ほう―――

 

市:彼女は・・・言い換えるなら、地中に埋もれていた「宝石の原石」―――

  いえ・・・原石ではありませんね、宝石そのものです。

 

 

「私が知った頃の“彼女”は、やもすれば野暮ったく、目立つ存在ですらありませんでした。」

「けれど私が、彼女の真実を知るようになったのは、かの「オンライン・ゲーム」での出会いからだったのです。」

 

市子も最初は、現在では信頼し合える友になる以前の璃莉霞の捉え方を、

周りの誰しもがそうであるように、「地味娘」の範疇を越えるものではありませんでした。

 

けれど、仮想内に於いては、そんな普段の・・・“現実内”としての松元璃莉霞の雰囲気は感じられず、

やもすれば他人の様にも思えた・・・

 

それがいざ、深く関わってみると、彼女は行動的で―――美しく、何より強い・・・

自分の逆境にもめげず、その上“ここぞ!”と言う時には、頼りになる・・・

それに、交友関係は、少ない―――かと思えば、

海外サーバーの、それも「エリア・マスター」と言う、高い地位の人達との結びつきが濃かった・・・

 

「私は・・・これまで、他人の価値と言うものを、上辺(表面上)だけでしか評価できなかった・・・

 

恥ずかしい話しながら、自分は、その事の間違いを、たった一人の「英雄」と呼んでいい存在から教えられた・・・

実際、信友との付き合いで、劇的に広まった、自身の交友関係・・・

 

ライバル校のお嬢様や、信友の後輩、果ては海外出身の人や、最近では元アイドル・ユニットのメンバーだった人、

そして・・・信友自身の、“師”―――

 

この数ヶ月間、市子は、あの出来事がなければ、知るだにし得なかった知識(コト)数々ること出来たの―――と、

感涙に(むせ)いたのです。

 

その市子の涕を、拭う為のハンケチを、無言で差し出す厳三・・・

 

その涕は、美しいモノ―――

哀しさではなく、偶然が織りなした奇蹟―――とも言える嬉しさに対してのモノ・・・

 

思えば市子は、通う高校の生徒会長に、収まってはいましたが、

徐々に離されて行くライバル校との関係と、その実力差に於いて、気が休まることがありませんでした。

 

そこへ、カンフル剤として、自分の指示で清秀に・・・

自分もプレイをしている、あの「オンライン・ゲーム」を勧めたのが、“きっかけ”だった―――

 

その“きっかけ”のお蔭で、自分の眉は晴れた・・・

その“きっかけ”で、知ることとなった、「自分だけの英雄」―――

 

もうその場には、鎬を削り合う者はいない―――

ただ一人の、「英雄」を取り巻いての“約束事”が、暗黙の内に取り交わされたのでした。

 

 

 

つづく