前話「#7」より、そう時間が経っていないログイン光景・・・
その“屋敷”―――荘厳なる神社のような建物の一角、「社務所」において、
武装で身を固めた者が行き交いをする、そんな物々しい雰囲気漂う中―――
その“集団”の頭―――“統率者”とでも言うべき存在がありき・・・
その者は、あの市子と同じく、「巫女装束」を纏い―――なれど、表情が判り難くなるような“フード”を目深に被り、
杳としてその容姿を拝められないのですが・・・身形としては、上背低く―――やもすれば“幼女”とも、見られなくもなかった・・・。
その“幼女”を頭に頂く、この「謎の集団」―――
この世界に於いては、「小さな集団」は『PT』と呼ばれ、最大で「4人一組」がその構成―――と、なっているわけなのですが、
この場所に集っている者達は、“それ”よりはまだ「大所帯」―――
つまりは、この「謎の集団」こそは、『クラン』という、「集団」であり、「組織」なのです。
そして・・・この「クラン」こそ―――『妖改方』・・・
すると―――この頭の背後に、今・・・音もなく忍び寄る者が・・・
頭:して―――首尾の方は?
忍:はい〜☆ 奴さんたちは、NPCの村人さん達を追っかけまわすのに、夢中〜でありまして、
こちらが探りを入れているのに、気が付かない模様〜〜で、ありまーす☆
頭:左様か―――ならば、行けぃ!
その者―――今、音もなく忍び寄った者こそは、「隠密」「偵察」「間諜」のプロ・・・『忍』でした。
しかし、この忍の独特の言い回し―――??
どこかで見聞したかのように、錯覚するのですが・・・
するとこの忍は―――
頭:うん?いかがした―――お主もはよう行け。
忍:いえ、その前に〜〜もうお一つ「ご報告」を・・・と☆
頭:ほう―――報告とな、ならば手短に・・・な。
忍:実は〜〜―――(ゴニョゴニョ)
今回のクエストの内容である《村を襲う妖魔共を駆逐せよ―――:B》
この、討伐対象の相手の陣容を報告するため・・・だけかと思われていたのですが、
別の―――「違う趣旨の報告」をする為にでもあった・・・
それに、この「報告」を受けた、この「クラン」の頭は―――
頭:ほほ〜〜ぅ、『あの者の娘』が、のう・・・。
フフフフ―――・・・いや、重畳の至りとはまさにこのことよ!
こうしてはおれぬ・・・久々ながらに滾ってきおったぞ―――
このワシの“友”の「娘」よ―――そなたが“立つ”と言うならば、このワシが露払いをして進ぜようぞ――――!!
この・・・“幼女”と見られる、クラン『妖改方』の頭の態を見るに―――
しかして“それ”は、「幼女」の“それ”では、なかった―――・・・
言うならくは・・・「幼女の形」をした、“別の何か”・・・
それと言うのも、やはり・・・前出した、“あの”女子高生のように、不釣合いのモノ―――
“彼女”の場合では、「殺気」―――ではありましたが、今回感じているのは・・・「妖気」―――??
自分の「集団」に所属する“忍”からの報告に、つい喜びを隠しきれないでいる頭・・・
只ならぬ、物々しい“妖気”に包まれた「幼女」は、次第に態を変じ「“妖”女」へと、成る―――
しかしながら、そのことこそは、「幼女巫女」が己に課した、「枷」のようなものであり、
逆に“そう”しないと、現実の世界では、不便もあったから―――なのではありましたが・・・。
ならば、この「幼女巫女」の“真実”とはどこにあるのか―――そこはまた、興味の対象となるのです。
#8;運命の悪戯
閑話休題―――もう一方のこちら・・・あの三人組も、今はなにやらの“身支度”をしていたようです。
その理由とは―――・・・
市:どうなさったと言うのです―――急に召集をかけるなんて。
リ:ああ―――ちょっとした、この私自身の「上」からのお達しでね、そこへあんたらを「連れて行け」だと。
蓮:「上」からの・・・?
リ:そ―――
それに、私と「お稽古事」やってても埒が開かんから、これを機会に「さらに上へ」・・・てなこともあるんだろうよ。
市:(・・・)それで、その“お達し”―――つまり、クエストの内容とは?
その“内容”―――不実に極まれり・・・
その内容を聞いたのと同時に、市子も蓮也も、そう思わざるを得ませんでした。
それもそのはず―――その“内容”こそは、ここ最近、新規作成したプレヤーばかりを狙い、襲う連中がいる・・・との事だったのです。
つまりは、《「新規狩り」を見つけて討伐せよ―――:B》・・・と言うわけなのですが、
よく考えてみれば、市子や蓮也が、この「リリア」なるプレイヤーを知ったきっかけも、「新規狩り」とさして違わなかった・・・
とは言え、この「リリア」の目的は、そうした連中とは多少なりとて事情が違っているのですが、
未だこのゲームのシステムの事を、余りよく理解しきれていない蓮也にしてみれば・・・
蓮:ああ―――そういや、あんたもこのオレを狙ってたんだっけな。
リ:はあ?! 私の目的は最初っから違うだろーが、こいつらと一緒くたにすんじゃねぇよ―――バカ・・・
市:そうですよ、蓮也―――今はこの人に謝りなさい。
しかし・・・実に不実ですね―――
リ;(・・・)ま―――仕方ねえんじゃね?
第一こういう連中、運営も認めてる・・・ってことなんだろうからさ―――
そこで市子は、この「リリア」からの返答に、どこか違和を感じたのでした。
「この人は・・・“その者達”の事を「理解っている」―――とは言うものの、納得まではしていない・・・。」
「それにこのことは、運営自体にも問題があると言うこと・・・」
「こんなにも、不実極まりない集団をのさばらせておく―――と、いうのは、」
「例え仮想世界でもあってはならないこと・・・」
「ならばなぜ、運営は・・・この集団に関わるプレイヤー全員に対し、『BAN』などの適切な措置を取らないのだろう?」
その市子の疑問こそは、普通にプレイしていて考えてみても、当たり前の事・・・
なぜならば、そうした「不逞」「不実」の行為を主体とする「集団」こそ―――『クライム・エネミー・プレイヤー』・・・だと言う事なのです。
しかも彼らは、NPCの“賊”などではない―――歴とした「プレイヤー」が、「クライム」・・・つまり、“犯罪”を主旨とする「集団」でもあるのです。
彼らは好んで・・・「盗み」「犯し」「殺人」を行う―――“人”・・・なのに「人」ではない、プレイヤー・・・
やもすれば、「獣」のような、プレイヤー・・・
(ここで言う「殺人」とは、「PK」のことを言う)
そんな「犯罪者の集団」が、今まさに新規でこのゲームを始めたプレイヤーを、「襲撃」しているのだという・・・
しかも“彼ら”は、それなりにプレイヤー・スキルを備えており、今回受注したクエストのランクも「B」と、割と高めの設定であることに、
「上」からの思惑を汲み取り始めるリリア―――・・・
しかしながら、“真実”は―――蓋を開けてみないことには、始まらない・・・
それに、その“真実”に直面してしまったリリアも―――
また・・・リリアにこのクエストを発注した「上」の存在も―――
況してや、市子や蓮也は知ろうだにはずもなかった“真実”―――
それは―――・・・
装備していたモノを身包み剥がされ、今まさに、一人の新規「女性プレイヤー」・・・『ヒイラギ』の身に、
差し迫るクライム・エネミー・プレイヤー達の魔の手・・・
そこへ―――?
市:―――そこまでです!
犯:ああ〜ん?なんだ手前ぇら―――
市:その不埒なる悪行三昧の数々―――見過ごすわけには参りません!
犯:アホか!w 手前ぇは・・・
犯:なーに格好つけてやがんだか―――w
犯:おおよ―――オレ達はこいつに勝ったんだぜ、だから「勝者」の権利としては、と〜うぜんあるだろうが?w
蓮:うるせえ―――謳ってんじゃねえ!
お前らそれでも人間か?!こんなことを・・・許しちゃおけねえ―――!
新規の女性プレイヤー「ヒイラギ」の身に迫る、魔の手を討ち払わんと―――市子が・・・蓮也が躍り出る。
では、ならばこの二人よりも「熟練」であるはずの、リリアは―――?
確かに本来、リリアとしては、新人である蓮也を鍛え、成長させるべくのため、自らは手を出さない方向性―――でした。
けれど・・・これは“偶然”なのか―――はたまた“目の錯覚”か・・・
で、ないとすれば「運命の悪戯」なのか―――・・・
今まさに、リリアも目にしている、新規の女性プレイヤー「ヒイラギ」・・・
そんな、新規プレイヤーを目の当たりにして、リリア自身「まさか―――?」と、思うことがありました。
そして、次第に確信へと至る・・・
恐らく―――確実に・・・自分の予測に間違いがないとすれば―――・・・
「そんっ・・・な? バカな―――?」
「なんで・・・どうして「あんた」が、“ここ”に―――??」
故に・・・なのか―――確信にまで至ってしまったことで、「ある人物」に“変調”が訪れていたのでした。
“それ”は―――現実の世界でも、抑えておかなければならない“モノ”・・・
“それ”は―――濫りにも、仮想の世界でも、出してはならない“モノ”・・・
なぜならば―――・・・
“それ”こそは―――「肉食」の「獣」である、“証し”・・・
「そんな“モノ”」を、見境なく出してしまっていては、“獲物”は寄り付かなくなってしまう・・・
故に、「上」から―――「師」たる者からは、“注意”を受けていた・・・
“はず”―――なのに・・・
自分が至ってしまった所為で、図らずも滲み出てきてしまったのです・・・。
そう―――「ヒイラギ」とは、「柊」と読み替える事が出来る・・・
そのことにより、リリアは自分の知人であると確信に至り、今まで抑えていた“殺気”が、終ぞ滲み出してしまっていたのです。
もう・・・止まらない―――
滲み“出して”しまった殺気は、次第に周囲にまで波及をする―――・・・
そして、その殺気を感じ取ってしまった者達は―――?
市:(!
えっ・・・?)この・・・“気”? これは―――??
蓮:(う・・・おおっ?!)な・・・なんなんだ、こりゃ―――!?
犯:(ヒイィッ?!)さっ―――“殺気”??
ヒ:(う・・・あっ・・・!?)こっ・・・これ―――は?!!
リ:(・・・)悪ぃ―――お前ら・・・今回のこのクエスト、諦めてくれや。
市:はあ・・・? なんっ―――ですって?? 何を言っているのですか、リリアさん!
ヒ:(リリ・・ア?)けど・・・この“感じ”―――?!
リ:「何を言っているの」―――?
なんもねえよ―――・・・只、こいつは私の我が儘だ。
“私”が、“こいつら”の事を、許しちゃおかねぇ―――そう思ったからだ・・・悪いか?
蓮:(うっ・・・)じっっ―――じゃあ、“アレ”は?
このクエスト自体、あんたの「上」からの指示じゃなかったのかよ?!
リ:(・・・)ああ―――そういうこともあったっけかなあ?w
市:(「そう言う事」―――って・・・)
リ:フフフヘヘヘ―――・・・まあ・・・師匠にゃ怒られっけど、仕方ねぇやw
いくらあの人でも、事情なりと話せば、ゲンコ一個くらいで済ましてもらえるだろ!ww
その“殺意”―――まさに、目の前の不逞の輩を、喰らわんと欲ス・・・
自分の“同級生”が、どういった理由で・・・かは知らないけれど、この世界に新たに参入を果たし、
また、どう言った経緯で、「犯罪者」達の標的になりえたのかが、判らない・・・
だがしかし―――現実としては、この女性新規プレイヤーは、身包み剥がされており・・・
“あの時”の“自分”のように、辱めを受けようとしている一歩手前だった―――
“あの時”は、自分もそれなりに、この世界の流儀と言うものを受け入れていたこともあり、
自分が貰い受けたキャラクターを消すようなことはありませんでしたが・・・
まだ知識の浅い「新人」が、こんなにもキツめの行為に晒されたらどうなるか―――・・・
キャラクター・デリートは故より、実生活にも支障を来たすかも知れない・・・
だからこそリリアは―――
“殺意”を―――“殺気”を剥き出しにするのに、理由としては“それ”だけで足りてしまっていたことだたのです。
つづく