トウキョウ・サーバーにあるクラン、「カレイドスコープ」では、
自分宛てに掛かってきた{ダイレクト・コール}に出ようとしたものの、
途中で切断されてしまった回線に不信を抱いた、クランマスター・ジョカリーヌが、
サブ・マスターである市子に問い合わせ・・・
市:{はい、市子です―――}
ジ:{ああ、市子、今リリアから私宛ての{ダイレクト・コール}があった様なんだけれど?}
市:{その事なんですけれど、急にリリアさんが消えてしまったんです。}
ジ:{「消えた」?ただ事じゃないね―――
状況を詳しく聞かせてもらえないかな。}
自分達の目の前で、急に消えた―――との事に、心中穏やかではなくなるジョカリーヌ・・・
とは言っても、今一番落ち着いていられないのは、
今まさに自分達の目の前で、信じ難い光景に出くわした市子達だった・・・
だから、「詳しくの説明を」―――と求められても、程度以上の説明は出来ず、
するとそこを上手くフォローしてくれたのが・・・
サ:{すみません―――割り込み失礼します。}
ジ:{何か知っている事でも?}
サ:{恐らく・・・ですけど、リリアは「強制転移」をさせられた―――
誰かの、何かしらの事情で「召喚」されたんだと思います。}
ジ:{「強制」?!
待って―――確認してみる。}
サヤが、たった一つ心当たりある案件―――
それが「強制転移」でした。
しかし、この高位高等魔術を扱えるのは、今の時点に於いては、そうはいない・・・
ジョカリーヌは、自身の心当たりを基に、クランマスターの権限で、クランメンバーの一人が今どこにいるかを検索にかけたのです。
すると・・・
ジ:{はあ〜・・・良かった、見つかったよ}
サ:{本当ですか?
それで・・・どこに?}
ジ:{理由までは判らない。
けれど、今リリアがいるのは、「ロサンゼルス・サーバー」と言う事になっている。}
サ:ロスぅ?!
なあんでまたそんな処に・・・・
市:どうしたのです?
サ:ああ、リリアのヤツ、今ロスにいるって。
市:どうしてまた・・・
サ:さあなあ・・・
{ああ、すみません、ちょっと今、時間空いているんでしたら、「ロンドン」まで来てもらえませんか}
何とも不思議なことに、リリアは現在、ロサンゼルス・サーバーにいるとのこと・・・
けれど、本当に消えてしまったわけではないので、皆安堵の胸を撫で下ろしたみたいです。
(中でもプリンは、「本当に消えちゃわなくてよかったよ・・・うん、本当に―――」と、意味深な心の声での発言をしていたようですw)
そして、ここでジョカリーヌが、市子達と合流し―――
ジ:皆、ご苦労様―――
早速だが、報告を聞かせてもらおう。
プ:でも、リリアの事は・・・
ジ:心配には及ばないよ。
あの子は、そんな簡単に潰されはしない。
それは、私が一番よく知っている事だからね。
ブ:・・・強いのですね―――
ジ:「強く」はないよ・・・私なんて所詮、君達よりほんの少しだけ特別なチカラを授けられているに過ぎないんだから―――ね。
さ、それより、君達が知り得た情報を、聞かせておくれ。
「なんとも気丈な方なのだろう・・・」
「今の言葉にしろ、ショックを受けている私達を気遣い、和らげてくれる為に・・・」
「嗚呼・・・今こそ分かりました―――・・・」
「あなたが、この方を“師”と仰いだその理由・・・」
「この方は優し“過ぎる”―――」
「なのに、『四凶』となって、私達を試した・・・」
「ならば―――?」
「『四凶』という存在は??」
市子は、朧げながらも、この『四凶』なる存在に関して、少なからず疑問を感じ始めました。
確かに、判らない内では、凶悪にて冷酷な「ボス・キャラ」然とした存在でしたが、
この「ジョカリーヌ」と言う、為人を見ていると、決しての純然たる“悪”ではない・・・
「これは―――試練・・・」
「そう、「試練」なのだ」
「神々が、私達人間に、これから待ち受けるであろう困難に打ち克つ為の、「試練」を課している・・・」
「では、私達を待ち受ける、“困難”とは何なのだろうか―――・・・」
『四凶』は、都合これで2体目―――
もしかすると、総ての『四凶』に打ち克った時、何かが判るかもしれない・・・
そう市子は思うのでした。
それはそうと―――
ジ:なんだって?!
こちらの「因縁の宿敵」が、『ソロン』??
サ:ああ―――ええ・・・
で、その“対象者”が、私達のクランの一員「公爵ヘレナ」て人です。
市:(?)あの―――ジョカリーヌ様?
ジ:え?あ・・・ああ―――
こちらでの状況を聞いていく内、ジョカリーヌの反応には、意外性がありました。
その事に、違和を感じ始める市子―――・・・
「何でしょう・・・今の、この方の反応―――」
「まさか、彼の者の存在を、存じているのでは?!」
そう・・・その反応は、まるでその存在―――
こちらでの「因縁の宿敵」である、『ソロン』なる者を、あたかも知っていたような反応だった―――
しかも、それは―――
「そんな・・・「あの人」が?!」
「でも、どうして“この次元”に・・・?」
「なんだろう・・・イヤな胸騒ぎがする・・・。」
「リリアが、(誰かに)「強制転移」させられたのもそうだが―――」
「・・・まさか?!」
「“あの次元”に異変が??!」
“知られる”わけにはいかない―――
未だこちらには、不安要素・不確定要素ともにあり、
「自分達」の事情の“総て”を、話す訳にも、知られるわけにもいかなかったのです。
だからとて、停滞訳にはいかない―――
ならばこそ―――
#80;“魔皇”なる存在
ジ:大体の事情は呑み込めた。
ならば、その「ソロン」を打倒することこそが先決だと思う。
そして行く行くは、『四凶』である『サトゥルヌス』を鎮めるんだ!
「カレイドスコープ」のクランマスター、ジョカリーヌたっての指示の下、
急遽組まれた「ソロン」討伐の為のPT編成。
その為に、至急トウキョウ・サーバーより、クランメンバーのギルバートとソフィアも加えられたのです。
ジ:皆さん始めまして、宜しくお願いします。
PTの編成は、先程にもなされましたように。
第一PT―――リーダーはサヤ、セシルはヒーラー担当、ブラダマンテはタンク、プリンはサポート担当で、
第二PT―――リーダーは市子、ギルバートはキャスター、ソフィアはヒーラー、
そして不肖、私ジョカリーヌは、指揮を担当します。
討伐PT総勢8名が、討伐の対象である「因縁の宿敵・ソロン」を討つ為に集結した場所こそは、
ダンジョン難度SSの『コキュートス』・・・
そのダンジョンの名の由来となったのは、巨大な魔を封じ込めた、“地獄の最下層”の意であり、
ならばやはり、今回のダンジョン・ボスこそ、『魔皇』と名乗っている以上、そうなのだろうか・・・
「それにしても、なんとも悪趣味なっ―――」
「まるで同じじゃないか―――」
「では、ならば・・・やはり「あの人」なのか―――?」
自分が知っている存在と同じ名を名乗り、
居住としている場所の名称も同じ・・・
だからこそ、嫌な予感が頭を過る―――・・・
ならばこそジョカリーヌは願っていたのです。
全くの「他人の空似」であることを。
そうであって―――欲しいと・・・
なぜなら―――・・・
とは言え、さすがに難度SSと言うだけの事はあり、Mobにしても倒すのに一苦労・・・
それに2〜3体だけならまだしも、数十体も湧いてくると、上級者が5人いても、
無用な戦闘での消耗は避けるべき―――との、方針の下、ダンジョン攻略は続けられたのです。
各フロアの中ボスも各個撃破し、辿り着いた先の最終フロアに待ち構えていた存在とは・・・
「やはり―――!!」
見紛うはずもなかった・・・
黒光りする「全身鎧」に、『覇蝕の大剣』と呼ばれる、巨身の剣。
そして・・・彼の者の薬指に嵌められた、『金の指輪』・・・
否定したくとも、否定できない―――
何から何まで、自分が知っている「彼」と同じ・・・
いや、「彼」そのものだった。
だが―――なぜ―――
その「彼」が、どうして“この次元”に来ている―――?
けれど、そのことを問うたとしても、答えてはくれないだろう・・・
ならばこそ、自分達の流儀で―――
ソロ:フ・・・「よく来た!」などと飄言しますまい。
己の持ちうる技量の総てを、この私に示してみせるのです!
「こ―――これが、あの「ソロン」??」
「わ―――私達がイメージしていたのとは・・・」
「全く違っている―――私達が、「あの物語」で知っているのは・・・」
「どっちかつぅと、まさしくの「魔」の「皇」然としていたヤツだったが・・・」
「それが、この「魔皇」は、どちらかと言うと真逆・・・」
「けれど、どちらかと言うと、こちらの方が手強そうな感じですわね・・・」
「それより・・・ジョカリーヌさん・・・?」
ソロ:それはそうと―――どうやらそちらに、見知った顔がいるようですね・・・。
ジ:(・・・)―――“私”です、ジョカリーヌです。
なぜ“あなた”がここにいる・・・
ソロ:それを―――「ただ」で話せ・・・と?
ジ:無論・・・「ただ」で―――と言う訳にはいかないでしょう・・・
ならば、我らの流儀に則り・・・
ソロ:「勝者のみには総てを与えよ」・・・。
フフ―――忘れていないようで、なによりだ。
市:え?ジョカリーヌ様・・・?
あなた様―――
ジ:間違いであってほしい―――そう願っていたけれど、所詮儚い夢だったようだ・・・
そう言う事だ、あそこにいる「彼」こそは、私達と故郷を同じくする存在。
だが、「こちら」には来れるはずもない・・・と、そう思っていたのだが―――
そこも詳しく訊かなければならなくなったようだ・・・。
「あの時、気付いておくべきだった―――」
「私達のクランマスターが、今回の討伐対象の名を聞いた時、」
「いつになく、大きなリアクションを示していたことに・・・」
「けれど、この方も、今も言っていたように、」
「なるべくなら今回の事は、間違いであって欲しかった―――と、言う事なのだろう。」
「しかし、なぜそう願うのかは、私達には判らない・・・」
「それは、お互い同士が知り過ぎているきらいがあるのだろうから・・・」
「「お互いを知り過ぎている」―――と、言う事は」
「“お互い”の“手の内”を、知り過ぎている・・・」
「得意としている手―――」
「不得意としている手―――」
「弱点・・・等々」
「しかし、それでも討伐さなければならない―――としているのは、」
「何かとてつもなく、大きな事が、蠢いているからなのだろうか・・・」
そう―――市子は理解するのでした。
つづく