やはり―――“知った”存在同士だった・・・

「魔皇」と呼ばれている、今回の強敵―――『ソロン』

そして、かつては自分達も討伐(うちたお)した事のある、「四凶」の一柱(ひとり)―――『ジョカリーヌ』

 

ただし、ジョカリーヌからの言質(げんち)に依れば、(魔皇ソロンは)()()()()()()()()()()()()()()()―――だとも言う・・・

 

・・・“この次元(こちら)”には―――?

 

何とも気になる物言い・・・

一体、彼女達の間には、どんな“因縁”が隠され、

ならばなぜ、()()()()()()()()()()()()()()、「魔皇」なる存在がいるのだろう・・・

 

ただ判るのは、互いが直接の対決を(のぞ)んでいる―――

 

互いと、互いをぶつけ合い、そして“勝ち”を得た者のみが、“総て”を得る。

 

ならばこそ―――

 

 

ジ:<シフト・チェンジ>―――<細剣使い(フェンサー)>!

 

ソロ:ほう・・・この私に対し、初めからその“形態(フォーム)”を取るとは・・・

   賢明な判断だ。

 

ジ:なぜ・・・あなたが、“こちら”へと来ているのか―――話してもらいます。

 

ソロ:だが、「それ」はないのではないかな?

 

市:(え・・・?)

 

ジ:<禍剣:ヒョウガ>―――!

 

 

自身の、「攻撃職」である、「細剣使い(フェンサー)」へと、形態(フォーム)シフト・チェンジし、

自身の奥義を繰り出すジョカリーヌ・・・でしたが―――

 

あの、目にも止まらぬ、突進系の攻撃を、避けるまでもない―――と言った具合に魔皇は・・・

 

 

市:そ・・・んな―――!?

サ:傷一つ付いてない―――だ、と?

ギ:ヤツは化け物か!

 

プ:(しかし、なぜ・・・)

セ:(それよりも気になる・・・先程、魔皇と言った者の、あの“言い様”・・・)

ブ:(あの“言い様”、まるでジョカリーヌと言う方が・・・)

ソフ:(ならば、あの魔皇を倒す手立ては・・・)

 

 

その場にいた全員が、共通とさせた認識―――

市子やギルバートにソフィアは、同行したことがあるから、「焔龍の祠」でのジョカリーヌとその実力は知っていました。

 

ただ、この戦闘の前に、ソロンからの気になる一言・・・

「だが、「それ」はないのではないかな?」

 

そう言えば・・・「焔龍の祠」での中ボス、キリエも同じようなことを言っていた・・・?

今、自分達が目にしているのは、「細剣使い(フェンサー)」としてのジョカリーヌであり、

装備もレベル相応のモノを着けていた。

 

それに「武器」も、「焔龍の祠」攻略の折、装備していたモノと、()()・・・

 

すると―――?

 

 

ソロ:フッフッフッ―――所詮、乗ってこないあなたの奥義(わざ)ど、気合れてまけるまでもない。

   ()てや・・・けるまでもね―――

 

ジ:(・・・)―――。

 

ソロ:何を気にされているのかは判りませんが、そうした余裕は―――

   「命取り」になると、かつてのあなたは、私にそう教えたではないか!!

   <フレイム・ディスラプション>―――!

 

ジ:(く・・・)転化<禁鞭>!

 

市:(・・・)あの一撃を、防ぎ切った―――?

ギ:(互いの初撃は無効化できたか・・・)

ブ:(けれど、これで「膠着」するか―――或いは・・・)

セ:(いずれにしろ、次からは手を変えていかなければ・・・)

 

 

 

#81;交錯の果てに

 

 

 

ジョカリーヌの剣技「禍剣」を、気合で受け止めるでもなく、涼風同然で受け流す魔皇。

それに、このジョカリーヌの奥義に対しても、「乗ってこない」とは・・・

ならばジョカリーヌは、全くの「本気」ではなかったのか―――?

とは言え、彼の者は「魔皇」と呼ばれるほどの実力者・・・に、

果たして「本気」になれないなんて―――?

 

そんなジョカリーヌに、ほんの少しばかりの“返礼”とばかりに襲う、「炎の4連撃」・・・

それをジョカリーヌは、「真空の層」を創り出して、魔皇からの反撃をシャットアウトしたのです。

 

その様子を見た、魔皇ソロンは・・・

 

 

ソロ:ふむ・・・判らないものだ。

   「攻撃」は“その気”はないのに、「防御」とくれば、完璧を見せる・・・

   あなたの狙いは、一体なんだ。

 

ジ:それを・・・私が話すとでも?

 

ソロ:なるほど―――・・・

   どうやら意志は固いものとみた。

   ならば―――!!

 

 

「私の奥義が届かなかったのは、先刻承知・・・」

「やはり、「あの指輪」は、正常に機能している―――」

「彼に、私の攻撃を届けるならば、やはりあの指輪の機能停止を優先させない事には・・・」

 

ジョカリーヌが「乗ら」ないのには、理由がありました。

そしてそれは、今の彼女の心の声にもあったのです。

 

それが、魔皇ソロンの装備品の一つ―――『金の指輪(マスター・リング)・・・

 

あの「指輪」は・・・ジョカリーヌが、かつての“想い人”に贈った品・・・

その「指輪」を装備するだけで、魔力は飛躍的に跳ね上がり、

「攻撃(物理/魔法)」「防御(物理/魔法)」を、500%に引き上げ、

状態異常や属性での攻撃による効果を、完全無効化

更には、魔法を一定確率で跳ね返してしまうと言う性能や、

装備者の周りの空間を歪曲させてしまう機能までも兼ね備えさせた、まさしくの“超”一級品・・・

 

まず、彼と対話をするのならば、武力だけで押し切らず、

彼が頼みとしているモノを断ち切らなければ・・・

 

だからこそ、ジョカリーヌは―――

 

 

ジ:させないっ―――!

  <禍剣;セイラン>!

 

ソロ:フッ・・・あなた本来の武器を使わずして、何ほどの効果があるものか!

   <カウンティラ・デストラクション>!

 

ジ:(ここだっ―――!)

  <禍剣;ヤミドウコク>!

 

ソロ:なにっ?!“誘い”か・・・!

   だが、この指輪の効果があれば―――

 

ジ:今だ!

  <禍剣;ミズチ>!

 

 

先程見せた“突進技”を、遥かに上回る速度でソロンに近づくも、ソロンは余裕の対処・・・

しかし、その行動を読んでいたかの如くに、次々と発動する、ジョカリーヌの奥義、「禍剣」。

 

一時行動不能(スタン)撃から、りに皇からの、ある行動引き出させた・・・

それが、“万能”の性能を持っていると言う、「金の指輪(マスター・リング)効果発動―――

 

実は、ジョカリーヌの一連の行動は、総て、魔皇に“この行動”を取らせるための、布石だったのです。

 

その、“奥義”と“奥義”の組み立て方に、まるで剣の演舞を見ているかのように、見惚(みと)れてしまう市子達。

 

以前にもあったように、市子とギルバートとソフィアの3人は、ジョカリーヌの闘い方と言うのを目にしてきました。

けれどそれは、まるで教師が教え子に対して、教鞭を取っての「レッスン」に他ならなかった・・・

 

「この方が、本気になれば、こんな芸当は、いつでも披露できるのですね。」

 

・・・・・・。

「この方が、「本気になれば」―――??」

 

「そう言えば、キリエさんも、このソロンと言う人も異口同音にして、同じようなことを言っていた・・・」

「そしてそれは、先程はっきりと、ソロンと言う人が言っていた・・・」

 

『あなた本来の武器を持たずして』

 

?   ??   ???

「では・・・ジョカリーヌ様が、今手にしているのは、あの方本来の―――」

 

 

戦火渦巻く中、一人冷静な思考に至ったのは、市子だけでした。

そう、彼女だけは、気付いてしまったのです。

 

“今”のジョカリーヌが装備している武器は、所詮・・・

 

 

ソロ:く・・・それにしてもさすがですな―――ジョカリーヌ・・・

   あなたの真の目的が・・・

あなたから直接頂いた、この指輪の効果無効にあったとは―――!

 

ソフ:そ!それはまるで、お二人が以前付き合っていた・・・

ギ:ああ・・・オレにも、そう聞こえたぜ―――

セ:道理で・・・互いの手の内を知り尽くしていると言うのも・・・

ブ:(しかし・・・なのだとしたら、この選択は、あまりに非情!)

 

ジ:(・・・)先程の「ミズチ」で、その指輪本来の性能を、30%カットさせました。

  けれど、まだ完全ではない・・・念には念を―――

 

 

「なぜ、そんなに・・・」

「いえ、総てが判ってしまった、今の私ならば判ります。」

「判りますが、今は決着を急ぐべきではありません―――」

「ジョカリーヌ様・・・あなたは一体、何に焦っていらっしゃるのですか?」

 

「本気」に、成れない理由―――

そして、「本来」の武器ではない武器の装備と、“酷使”・・・

 

そのどれを取っても、ジョカリーヌが何かに焦り、決着の幕引きを急いでいるのかが、手に取る様に判ってきてしまいました。

 

そしてこのまま、この対決戦は、最終局面へと向かうのですが・・・

市子は、自分が止めなければ、誰しもが思わないような結末になるだろうことは、目に見えていたのです。

 

だから―――

 

 

市:いけません―――!

  ジョカリーヌ様、早まっては!!

 

 

すると彼女からは、「心配しないで」とでも言う様に、「ニコリ」と微笑むと、

あの体勢―――へと入ったのです。

 

それこそが、ジョカリーヌの「禍剣」最大の奥義である・・・

 

「なぜ・・・あなたは、そこで微笑んでいられるのですか―――」

「なぜ・・・頑なに、決着を着けようとしているのですか―――」

「そこにはもう・・・あなたの“勝ち目”など―――・・・」

 

見覚えのある「構え」・・・

まるで、極限まで引き絞られた矢が、放たれるのを待っているかの如く、ヒリつくこの感覚・・・

 

「なぜなのです、ジョカリーヌ・・・」

「賢いあなたが、こうまで愚直に、この私に対しての決着を望むとは・・・」

「だが、まあいいだろう・・・」

「私も、かつてのあなたの高弟としてではなく、一介の戦士として―――」

「我が最大の奥義を(もっ)えるとしよう

 

互いに、最大の奥義を繰り出す為の体勢・・・「構え」に入る二人。

 

この互いの奥義が、同時に炸裂した―――その先にあるものは、

確実に「勝者」と「敗者」があるのみ。

 

ならば果たして・・・勝利はどちらに転がり込むのか―――

 

ジ:<禍剣;ジッソウコク>―――!!

ソロ:<インサニティ・カプリッツィオ>―――!!

 

 

 

つづく