『公爵』ヘレナの容赦ない攻撃により、徐々に身体の自由を奪われつつある、『魔皇』ソロン・・・

 

けれど彼は、見た目の通り『全身鎧(フルプレート・アーマー)』で全身を覆っているので、その表情や、本当に“中身”があるのかすら、疑わしい限り・・・なのですが。

 

それでも大技、『地獄の九所封じ』により、“背中”“両腕”“両足”等を破壊され、その機能は低下・・・

更には、前段のジョカリーヌとの闘争に於いて、『指輪』の機能も、本来の“それ”より3割まで削減されてしまっていた・・・

 

だからとて、ヘレナからの攻勢は、間断なく続き―――

 

 

ヘ:覚悟しナッ―――『地獄の九所封じ:その7』『グラウンド・ブレイカー』!

ソロ:ぐはっ―――!

 

ブ:(あれで・・・“腹部”の機能も断たれた―――)

セ:(それより恐るべきは、ヘレナの身体能力・・・あの鎧、軽く見積もっても700kgはあるでしょうに・・・)

 

ヘ:へばってんじゃないよッ―――!ソロン!!

  『地獄の九所封じ:その8』『魔吸のハンズアップ』!

ソロ:ぬおぉっ―――ヘレナ・・・貴様・・・この私の・・・っ!

 

ソフ:な・・・何をしているんですか、アレ―――

ギ:単純に見りゃ、両手を合わせての『力比べ』にも見えるな・・・

 

プリ:(ハッ!)違うよ・・・恐らくあれは、“思考力”と“魔力”を吸引してる・・・?

 

市:“思考力”に“魔力”も・・・ですか?!

 

プリ:うん・・・聞いた話なんだけど、人の(てのひら)には、考える力を司る“ツボ”があるって―――

  なら、今あの人がしている事は、そのツボから“それら”を吸引してる・・・っていうのが、正しい味方なのかなあ―――って。

 

ヘ:ン・フフフ・・・賢いのもいたもんだね?

  そうさ・・・こいつが“8番目”の『九所封じ』・・・!

  それに、闘争中ならまだしも、その事を知っている相手には、こうした組み合いは難しいしねえ?

 

 

だが、『魔皇』は『公爵』からの“力比べ”に応じた・・・いや―――()()()()()()()()()()

これが、“条件反射”を巧みに応用した、公爵ヘレナの戦闘術の確かさでもあったのです。

 

そして、“五体”そのほとんどの機能を失い、更には思考力も奪われ、意識も朦朧とさせている魔皇に・・・

 

 

ヘ:さあ・・・それでは仕上げと行こうか!

  『地獄の九所封じ』ラスト・ワン!

 

 

その、総仕上げともいえる、ヘレナの『極め業(フェイバリット・アーツ)』を見て、“プロレス”と言う総合格闘技に詳しい事が知れた、ギルバートの口からは・・・

 

 

ギ:あれは・・・ッ! 『ダブル・アーム』・・・いや、違う? 『スピン・ダブルアーム・ジャイアントスイング』だ、と?!

 

ヘ:ハハハハ―――その通り!

 

ブ:そん・・・な?! あの巨体を振り回した―――だけでなく、上空へと放り投げた??!

セ:なんと言う怪力・・・あの重量がある全身鎧(フルプレート・アーマー)すら、ものともしないとは・・・!

 

プレ:いや・・・そけだけじゃないぞ、ヤツめ、既に上空へと飛んでいる!

 

ギ:なにっ?! だとすると、『ルチャ・リブレ』のように、“空中殺法”も思いのままか!?

 

プリ:けれど・・・だとしても、あの体勢でなにをしようと?

 

 

総重量700kgはあろうかと言う、『魔皇』の鎧・・・それを軽々と振り回す―――だけかと思えば、“捻り”を加えた上で上空へと放り投げる・・・。

それにヘレナは、見た目身長はそこそこしかない(165cm程度)ものの、自分より大きいソロン(200cm以上)を、こうもあしらえるとは・・・

それだけで、その肉体は鍛え上げられていると言って、差し支えなかったのです。

 

それに、上空へと投げたソロンを追いかけるように、またヘレン自身も上空へ飛び・・・

 

そう、ヘレナは“力”も“技”も、そして“空中殺法”も得意とする、「オール・ラウンダー・プレイヤー」でもあったのです。

 

しかも、その上空から繰り出された技こそが・・・

 

 

ソロ:(・・・)フ・・・フフフ―――さらばだ・・・ヘレナ・・・

 

ヘ:(チイッ!)逃がすかぁ―――!!

 

≪地獄の断頭台≫

 

大音響・・・地響きと共に、地上に激突する『魔皇』と『公爵』・・・

 

しかし、今の一連の出来事を見れば、結果は判ろうと言うもの・・・

 

公爵ヘレナの持つ大技、『地獄の九所封じ』の、最後の1つを受け、鎧の全箇所にヒビが入り、そして崩落していく・・・

 

が―――しかし??

 

 

ギ:あ゛? なんだこりゃ・・・中身「ガランドウ」じゃねえか・・・

ソフ:えっ? じゃあ・・・私達、今まで中身のない鎧と闘っていたんですか?

 

ヘ:そいつは、ちょっと違うよ―――

 

ソフ:えっ?

 

ヘ:すまないよ・・・ジョカリーヌ、逃げられちまったようだ。

 

ジョ:そうか・・・なら、それでいい―――

 

セ:逃げられた―――と、言う事は?

 

ヘ:言葉通りさ、『断頭台』をセット・アップしたまでは、“中身”はちゃんといたのさ。

  その証拠に―――見な、『金の指輪』がなくなってる・・・

 

ブ:(まさか・・・)“アレ(金の指輪)正体―――だと?

 

ヘ:少し違うけれど・・・そう言った方がいいのかもねぇ。

 

市:立てますか? 手をお貸しします・・・

ジョ:ありがとう―――市子・・・

 

 

砕け散った鎧の残骸には、“人体”と思わしきモノは、どこにもありませんでした。

 

つまり、自分達は、今まで「中身のない動く鎧(リビング・アーマー)と、ってきたのか―――と、わしくなったのですが、

ヘレナの証言よろしく、『逃げられた』・・・とは、まさにヘレナが技のセット・アップ中に、ソロンの“本体”が緊急脱出をした―――

と言う事に、他ならなかったのです。

 

 

とは言え、“欧州方面”での『因縁の宿敵』戦は、終了―――

また、“米国方面”の『レイド』も終息した事に伴い、またも『あの場所』―――・・・

 

【次元の狭間】にて、緊急の会合を開く『7人』・・・

 

しかも、その発端も、この度の米国で起こった出来事を、知ったが如くに―――ではなかったのです。

 

そう・・・自分達の“次元(こきょう)で、あったのか―――・・・

 

 

 

#84;“最悪”の事態に備えて

 

 

 

ミ:では、早速だが始めるぞ。

 

ジイ:その前に―――説明を。

   進捗上問題はなかったように思われるのですが?

   だから、本来はこのまま進め、『四凶』の二柱の討伐を進めるべきなのでは?

 

ミ:ところが―――そう言う訳にもいかなくなったのだよ、ジル・・・

 

ガラ:(・・・)何か―――あったんだね。

 

ミ:お察しの通りだ、ガラティア・・・

  しかも、ワレだけではなく、レヴィも見聞した事だ。

 

ジョ:何が・・・あったと言うんです?

 

 

本来なら、『13人』で話し合うべきを、運営・開発チーム内でも、上級位に位置する『7人』で話し合わなければ、ならなくなった事項・・・

 

そうした事態が、望むと望まざるとに関わらずに起こってしまった事を、これから話し合い、

“最優先事項”も変更し、『四凶』のレイド戦前に行わなくてはならなくなった・・・

それ程の危機を、ミリティアは感じていたのです。

 

そして―――・・・

 

 

ミ:(・・・)『南東の集落』で、なにやらがあったらしい―――

 

ガラ:(!!)ちょっと待ちなよ―――“南東”って!

ジイ:そんな・・・最終の防衛ラインが―――

 

ミ:落ち着け。

  まだワレは、『なにやらがあった』としか、申してはおらん。

  不謹慎なことは口を慎め。

 

レ:じゃがのぅ―――ガラティアもジィルガも、“そう”思うのも無理ないでぇ。

  現にワシも、そこの住人じゃあ言う『カーマ』言うんを捕えて、聴取したけんのぅ。

 

ジョ:では・・・“陥落”までには至っていない―――と・・・?

 

ミ:そう言う事だ。

  だが、“攻略”を受けている事実には変わりない。

  ()してや、そこの衛兵兵士ではなく、一般住民が、逃げ出している事を(かんが)みねばなるまい

 

ジイ:では・・・『太母(マザー)は・・・?

 

ミ:それも判らん―――救援の軍隊を派遣したのかも知れんし、そうでもないのかもしれん・・・

 

ガラ:で・・・どうしようって言うんだい?

 

 

「#83;知られざる異次元(こきょう)の実情」で、自分達の“次元(こきょう)異変ったミリティアレヴェッカでしたが、

その存在・・・「カーマ」なる者が、こっちの次元(こちら)へとているに、ガラティアジィルガは、同様最悪想定し始ていたのです。

 

 

そう・・・「カーマ」なる者が定住していた“集落”こそは、“集落”とは言え、彼女達の勢力の「防衛」の要でもあったのです。

そこの“住民”が難を逃れ、こっちの次元(こちら)へとている言う事実―――

これがもし、「陥落」にまで至っていると言うのならば、自分達の聡明な主である『太母(マザー)に、危機差し迫っているとでもあった・・・

 

それに―――

 

 

ジョ:そう言えば・・・この件は関係があるんでしょうか。

 

ミ:うん? どうしたね―――ジョカリーヌ・・・。

 

ジョ:はい―――実は・・・ソロンがこちらへと来ているんです。

 

ガラ:あんたの“元”恋人であり、高弟でもあった、“あいつ”が?

 

ジョ:はい―――何か関係があるんでしょうか。

 

ミ:(ふぅむ・・・)あやつもいわば、ワレらの一派から“(はぐ)れたレギオンではあるが・・・

  ここは少し、調査が必要なようだな。

 

 

そう・・・ジョカリーヌの、あっちの次元(あちら)での、恋人であり、高弟でもあったソロン・・・

その存在が、こっちの次元(こちら)へと来ており、自分と刃を交らわせた・・・

 

そこの処も思う処となるのですが・・・やはりミリティアは、この一級の緊急事態に備えるべく・・・

 

 

ミ:だがやはり、『太母(マザー)安否がかりだ。

  よって、少し強引ではあるが、ワレは一か八かの賭けに出る。

  異論は・・・あるまいな。

 

ガラ:ああ・・・そうだね。

ジイ:何を於いても―――の、事態ですものね・・・。

 

ミ:では、「ベェンダー」―――『招来(コイ)

べ:(・・・)―――いかがなされましたか・・・

 

ミ:(ナレ)には少々予定にはが、ザッハークってもらう

  だが、やるべき事は変更点がある。

  よいか・・・決して(たが)えてはならん

 

べ:御命(ぎょめい)―――りました・・・。

 

 

“事態”は動く―――それも、自分達が想定していたよりも早く・・・

 

そしてミリティアは、()()()準備もある一か八かのけに―――としたのです。

 

その“賭け”とは―――

ミリティアによって召喚(よば)れた通称纏ろわぬ者(ホモンクルス)・・・ベェンダ

そのベェンダーに、これから先、やらせる事項の変更と、予定されていた“役割”を為すよう、

「ある者」の前に立ち、“遂行せよ”―――との通達が行われたのです。

 

 

 

つづく