今までは、知って来ようとすらしなかった“真実”を―――それも、魔王から優しく説かれ、その教義の下に理解をしていく璃莉霞・・・。
それに、彼女自身思ったのです。
本来の、自分の次元ならば、忌み嫌われ最終討伐の対象ともなる『魔王』が、
こんなにも理知的で、やもすれば自分の次元で言う処の、『ノーベル賞学者』並みの知識量を蓄えているなんて・・・
しかも―――
エ:それに・・・やはり、そうした国の民には、“愚かしさ”こそが似つかわしい。
どうしてだか判るかい。
璃:・・・・・・その考えが、本当は間違っている―――と、気付かないから?
エ:まさにその通りだ。
それに、そう言う事をするには、“言論”や“思考”の統制を行い、隷属階級には疑う余地すら与えさせない・・・
また、その思想の厄介な処は、他国からしてみれば、その国家の住民を“人質”に取られている―――と言っても過言ではないだろうからね。
璃:そう言う考え方も・・・
(あ)だったら、その結果―――
エ:そう、他の国が取る手段としては、概ね3つ・・・
「黙って、その国からの脅迫に屈してしまうか」
「それとも“人質”を無視して、その国にいる総ての国民を皆殺しにして占領をするか」・・・
璃:そ―――そんな・・・
エ:私は、何も間違った事は言ってはいないよ。
それに、こうした主張をする国家の総てが、“そうである”―――とは言いきれないけれども、
ならば君は、戦争状態になっている国からの一方的な蹂躙を受け、君だけ・・・たった一人残されてしまった時、侵略してきた国の事をどう思うのかな。
そこでまたしても、璃莉霞は衝撃に打たれながらも、また一つの事を理解しました。
「そうだ・・・確かにこの人に言われた事が本当に起こってしまえば、私はその国の事を赦しちゃおけない・・・」
「今この人は、判りやすいように「私一人」と言ってくれたけれど、これが10人―――100人―――1000人―――万人と生き残れば、」
「その怨みは、それだけの数だけ募ってくる・・・」
「そうなんだ・・・そう言う事なんだ―――」
璃:戦争って―――怖い・・・
エ:そう・・・実に愚かで哀しむべき事だと、私は思うよ。
けれど、広く歴史というものを見つめてみると、「なくてはならない」・・・通過しなくてはならない儀礼のようなものなんだ。
璃:けれど、そんな・・・そんな哀しい事―――
エ:では、改めて君に問おう―――
『ならば果たして、遥かな太古にあった“文明”や“遺跡”の事を、どうして『古代文明』と言うのだろうね。』
『えっ―――?』
『もし―――君が厭う戦争が、起こらなかった・・・と、仮定しよう。』
『だとしたら、その文明は、今尚息づいていなければならない。』
『判ったかい? 戦争とは、何もかもを破壊する。』
『“美術”を―――“文化”を―――“建物”を―――“理念”を―――“思想”を―――“宗教”を・・・』
『では、一斉を破壊し尽した後、なにも生まれてこなかったのだろうか?』
『つまりはそう言う事―――確かに、大変哀しい事ではあるけれど、戦争とは「旧きモノからの脱却」を意味するモノだと、私はそう捉えている。』
『「新しい」ものを創るには「旧態依然」としたものは不要―――』
『けれど、各地のあちらこちらに見て取れる“遺物”こそは、『ここには歴史がありましたよ』と、私達に教えてくれる知識の産物でもあるんだ。』
璃莉霞は・・・魔王からの講義に中っている最中、震えが止まりませんでした。
しかしそれは、恐怖からのモノではない―――新たに得る事の出来た、歓喜のそれ・・・
いや―――けれど・・・しかし?
璃;魔王様―――あなたが仰ってくれたこと、大変良く判りました・・・
ですが、ならばどうして、ミリティア様やジョカリーヌ様が、私達の次元へ?
エ:非常にいい質問だね。
けれどそれはまさしく、この世界が“ある危機”を迎えようとしている証拠でもあるんだ。
#90;破極点
璃:き―――危機??
『そう・・・これは、危機なんだ。』
『しかも、それを招いてしまっているのは、私達魔族に他ならない。』
『えっ?
でも―――・・・』
『いいかい?璃莉霞―――君もその最初から思っているように、世の“悪”としてあるべき「魔族」の「王」足る私が、なぜ自ら戦争を仕掛けないのか・・・』
『それも、戦争の利害関係をこうも詳しく述べることが出来るのに、ならば実力としての行使をしないのか・・・不思議に感じているのだろう。』
『けれどね、この私が魔王を継承して、まだ精々が100年―――』
『そのずっと以前から、魔族は君が思っていた通りの行動を示してきたんだよ。』
『そ・・・それじゃあ―――?!』
『その通り・・・この私が魔王となってからは、魔族側から他への侵攻はさせていない―――』
『ただ、その事を知ってしまったニンゲン達から、今は逆襲を受けてしまっているんだ。』
有り得ない事実―――
遥か昔は、やはり璃莉霞自身が思っていた通りの出来事が起こされていたようでしたが。
当代の魔王と成ってからは、その逆―――今まで“蹂躙”“虐殺”“占領”“支配”の受け皿となっていた側から、反転攻勢をされていると言うのです。
しかし―――ならば、魔王エリスは、その間何もしなかったのか・・・と、言うと―――
璃:(あ・・・)だからこその―――「対話」・・・
エ:そう・・・。
言ってみれば、それもまた「争い」の形態ではあるんだけれどね。
璃:(え??)あの・・・どうして対話をすることが、戦争と同じ・・・
エ:違うよ。
「争い」と言うものは、そういうものじゃない―――
君は、気付いていたはずだよね。
ならば一つ―――君は、“誰か”と話しをする時、「独り言」でも言うつもりかい?
璃:(え・・・)あっ―――
エ:だろう? 「私」は「あなた」ではないのだから、「あなた」とお話しをする・・・
それにね。「会話」と言うのは、「話し手」と「聞き手」がそんざいするけれど、相手が何も話さなくても「会話」は十分成立するんだよ。
璃:(???)う〜〜〜ん?
エ:では、互いが「話し手」だとしよう―――
立ち待ち議論は白熱し、それこそ寝食問わずとなってしまう。
どこかで、その話し合いの接点が生じてくれればいいけれど、お互いの「話し手」は“主張”を譲らない・・・
璃:ああ〜〜〜そう言う事ですか。
『「聞き上手は話し上手」と言う事は知っているかい。』
『これはただ単に、「話し手」からの情報を受け流す―――と言う意味ではなくて、ちゃんと耳に入れ、相互理解を深める努力をすると言う事でもある。』
『そして、「聞き手」の主張と、「話し手」の主張を擦り合わせた時・・・』
『そこへ、次へと進める「可能性」を持つことが出来る―――そうは思わないかい。』
その時―――璃莉霞は、雷に打たれた衝撃と似た感覚になりました。
『そう言う事なんだ―――・・・』
『あの人達が、挙って口にしていた「可能性」―――』
『あの言葉を始めて耳にした時、何が何やら判らなかった―――』
『けれど、この人の説を聞いたお蔭で、今は良く判ってきた・・・』
『“それ”が、私達―――?』
『いや・・・けれども―――』
璃:すみません・・・間違っていたらごめんなさい―――
エ:なんだい。
璃:人間である私達が、エリス様を初めとする魔族の人達と、同じような理解に至った時―――
エ:その為の、「対話」の模索を、私はしている―――
それまでは、単なる“ゲーム”での話しだと思っていた―――
しかし・・・もう―――“ゲーム”は“ゲーム”でなくなってしまった・・・
異世界―――異次元での争乱を止めさせるべく、永い年月を使い「可能性」を見い出そうとしていた者達・・・
そして、彼女達の『選定』に合った自分―――
しかし、問題点としては、そこだけではなく―――
エ:先程も述べたように、私達が対話の相手として交渉するべきは、こちらの世界の「ニンゲン」と言う種属だ。
けれどやはり、先程も述べたように、私よりも先代・・・もっと言うのならば、私以外の歴代魔王達は、ニンゲン達を侵略するのを“善し”としてきた。
璃:(!)もしかすると、エリス様に従わない者達が―――
エ:そう、その彼らの事を『レギオン』と呼ぶ―――
璃:私、聞いたことがあります!
確か、直近に私が相手をした、「カーマ」・・・
エ:(!)彼女が? それは本当かい?
璃:はい・・・間違いありません―――
ようやく繋がってきた、数々の事象―――
この次元へと飛ばされてしまう前、直接相手としてきた「カーマ」・・・
そして、魔王エリスと最初に開校をした時、部下から聞いた、ある集落の行方不明者の名―――
あれは偶然ではなく、仕組まれていた“必然”・・・
それにしても、誰が、一体何の為に―――?
女は―――揺蕩う・・・
闇の そのうねりに・・・
澱みのうねりに―――身を委ね・・・そして機を待つ
その傍らには ある魔族の肉体を有し・・・
では・・・始めると致しましょう―――
世界の終焉りの体現を
つづく