やはり・・・再び来た―――あの宣言通り・・・
ですがDIVA達は、捲土重来した武者巫女の異変に、すぐ気づきました。
そう・・・最初の強襲では、瞑られていた両の眼が、今度は―――
カリ:(・・・)あの娘―――今回は・・・
バー:ああ―――・・・「開いた」ままだな。
(チ)どう言うつもりだ、そこまでして私達を愚弄する必要が、あるとは思えないのだが。
当然・・・と言われれば、当然―――
最初の強襲は予想すらしていませんでしたから、“奇襲”と思われても仕方がなかった・・・
けれども、彼女の方も深く計画していなかったから、失敗に終わってしまった・・・
だからこその“撤退”―――
その間際には、明らかに今回に通ずるセリフ―――『また来ます』。
それに備えて、対応策・準備も怠りなくしたものだったのに・・・
なのに、“最初”とは違う態様に、なぜそうしてまで自分をイラつかせる態度を取れるものか・・・
しかし、武者巫女は返さない―――
その事に、またもイラつくバーディーなのでしたが・・・
「この・・・感覚―――?」
「いけない―――!」
ドゥ:ダメ―――待って!
バー:ドゥルガー?!
恐らくは、DIVA達全員が、共通して感じているであろう異変・・・
それとはまた違った異変を、ドゥルガーは感じていました。
しかし―――そう・・・それは・・・
クル:どうしたって言うのよ―――
ドゥ:あの人・・・昨日より見違えるほどに強くなってる―――
クル:はあ? なによそれ、たった一日・・・いや、18時間しか経っていないのに、どうしてそんな・・・
ドゥ:どうしてかは判らない・・・でも、この感覚―――そうとしか思えないの!
『だって私は、この人と死闘を繰り広げてきた・・・だからこそ判る―――』
『信じられないかもしれないけれど、私のこの感覚・・・説明が出来ない―――』
思えば、18時間前の“昨日”、襲撃者の武者巫女と対等に亘り合えたのはドゥルガーだけでした。
だからこそ、判る事がある・・・
昨日のように、目を瞑っていなくても、感じられてくる危険性―――
けれど、どうやって・・・?
なにをすれば、そんなになれるのか・・・
すると、武者巫女は―――
市:やはり・・・あなたはそうでしたね―――
ならば、私のしたことは無駄ではなかったようです。
ドゥ:(・・・)判らないわね―――あなたのしようとしていた事なんて・・・どう言うつもりなの?
「判らない・・・私には―――」
「こんなの、“所詮ゲーム”だと思っていたから・・・」
「だからこの人が、己の“何か”を賭けて挑もうとしている事なんて、判ろうはずがない・・・」
ドゥルガーが、マリアがこのゲームにのめり込んだ理由・・・
それは、「現実逃避」のなにものでもありませんでした。
若くして才能あふれるも、直属の上司からの“セクハラ”を告発した事により、その逆恨みから将来の出世の道を断たれてしまった・・・
そうした現実から目を逸らし、背を向けた先が「ゲーム」だった・・・
仮想内は現実内とは違う・・・
男・女、身分の上・下、人種も関係なく「愉しめる」・・・
だからこそ、現実で溜め込んだフラストレーションを発散させるには、最適でした。
それにまた、マリアは「軍隊式格闘術」にも心得があった為、PCである『ドゥルガー』の強さは、
瞬くの間に北南米エリアに拡散り、挑戦して来る者達も絶える事がなかった・・・。
その総てを屈させ、エリア1の武勇を、ドゥルガーは誇っていました。
なのに・・・そんな自分の前に立つ、強者―――
武者巫女は微笑む・・・しかしそれは、“嘲笑”のそれではなく、
ようやく自分と対等になれた者に対しての、歓待の―――歓喜の様なものにも見えた・・・
その感覚―――その“感覚”こそが、ドゥルガーが感じた、異和の正体・・・
それに震えている自分―――これは、“恐怖”のそれでは、ない。
強い相手と闘争を繰り広げ、そして勝利を迎えられる事への、歓び・・・
だから―――なのか・・・
市:実に、良い表情です―――
では・・・始めましょう―――
そう言い放つなり、これまで感じた事のない、言い知れない感覚に襲われる・・・
けれど、まさしくの“それ”は―――
ドゥ:(結・・・界? い、いや・・・まずい―――!)
皆―――その人の周囲3mから近寄らないで!
市子を取り巻くDIVAの、近接戦闘スキルを備えていた者4人は、既にその“範囲”に収まっていました。
そして、明らかなる“開始”の合図と共に、ドゥルガーですら足を竦ませるまでの、言い知れ様のない“危険性”・・・
それに、最早“小手先”は必要ない―――・・・
だからこそ、言える―――・・・
市:構いませんよ? 皆さんでかかってこられても―――
バー:(チ)舐めた余裕を―――見せてくれるじゃないか!
ドゥ:ダメです! バーディー!!
バー:遠慮することはない・・・そちらのお嬢さんが言ってくれたことじゃないか。
だから・・・本来の私達の実力、見せて差し上げようじゃないか―――!!
クランマスターであるバーディーには、自信があった・・・
レイド戦にしろ、ろくに“タンク”“ヒーラー”が居ないにも拘らず、トップクランとして認知されていたのには、訳がありました。
それが―――「距離感の認識」。
そう・・・つまりは、“アタッカー”が多目のDIVAが、トップクランに成れた理由とは、
“タンク”“ヒーラー”不要の、『超火力重視』―――
しかも、“アタッカー”も、近接距離だけではなく遠隔距離もある・・・
つまりは、ドゥルガー・カリギュラ・バンディット・ワスプ達が、近接でMobのターゲットを取っている間、
バーディ・クルセイダー・バジリスクの遠距離勢で叩く・・・
けれどこれは、PT戦闘の応用でもあったのです。
そう―――反撃を被るよりも前に、「攻撃多過」で潰す・・・
確かに、これはこれで、論理的には間違っていなかったのです。
そう・・・普通の敵だったなら―――
そして今回は、その「普通」ではない、エネミーにエンカウントしてしまった・・・
だから、今までの戦術で、間違いはない―――そう思ってしまった・・・
けれど、やはり―――・・・
クル:(ん・なっ??)私の―――二丁拳銃での“跳弾”と・・・“チャクラム”までもが、通用しない・・・?
バー:バカな・・・私の糸も―――?
バジ:ボクのスキルも届いていないみたいだ・・・
何か―――何かがあの娘の前で、弾いているかのような・・・?
クリ:―――ですねぇ・・・今モニターして確認したところ、まるでバリアを張っているかのようッスわ。
バー:なんだと??
「そう言う事??」
「ならば・・・先程のは、なにも“舐めた余裕を見せていた”のではなくて、完全に私達の攻撃を潰せる自信があったから・・・?」
「これが・・・私が感じていたモノ―――」
「けど、このままでは―――・・・」
自分達の戦略・戦術を、真っ向から否定してきた―――
しかも、それを実践で見せられた―――
けれど、だからこそ思う・・・
「いつの間に―――」
最初の強襲より、そう間を置かずに捲土重来してきた・・・にも拘らず、前回よりも強く感じてしまった相手。
それに―――・・・
#94;矜持
市:もう終わり・・・なのですね―――
少し寂しい感じはしますが、あなたは違うのでしょう―――?
では・・・問い直します―――
――あなたは、変わろうとしたのですね――
昨日とは、明らかに違うう質問―――
昨日は、『変わろうとしていますか』―――だったのでしたが、
今日は、その表現を変えてきた・・・
けれど―――
ドゥ:判らないわ―――あなたの意図なんて・・・
[だって私は―――]
[私―――は・・・こんなの、「所詮ゲーム」とでしか、認識してこなかったもの・・・]
[私も・・・同じですよ―――]
[え・・・っ―――]
[私も、ほんの数か月前までは、あなたと同じでした・・・]
[こんなモノ、所詮は・・・日頃の鬱憤を発散させるための、便利な手段でしかなかった・・・]
[けれど、それを―――]
[そんな価値観を一変させてくれる人に、出会えたのです・・・。]
[・・・そう言う事ね、あなたが、私達の知らない間に、強くなったと言うのは―――]
[強い・・・? 私が・・・?]
[フフッ・・・ウッフフフ―――私より、強い方なんて、いくらでもいますよ。]
[そして、その事を、あなたも気付いてしまった―――]
[ええ・・・そうね―――]
その間―――彼女達は、互いを見つめ合ったまま、一切の会話は発生させていませんでした。
が、不思議と互いの意思の疎通は出来ていた・・・
そう、ドゥルガーも、市子と死闘を繰り広げたことにより、新たなる―――
ドゥ:だって私は! これまで気付かなかったし! 気付こうとすらしなかった!!
だけど、気付いてしまった今となっては、このままでは終われない!!
―――≪烈風拳≫!
市:この私に―――衝撃波は通用しませんっ!
―――「一つ」!
バー:(何をやっているんだ、あいつは!!)それは昨日―――
カリ:いや・・・違うな―――
市:
―――「二つ」!
バー:なんだと? どう言う事だ、カリギュラ!
カリ:あいつは・・・あの技を―――
ドゥ:(ここ―――っ!!)
―――≪荒咬≫!
市:ぐふっ―――!
ドゥ:
―――≪九傷≫―――≪八錆≫―――≪七瀬≫!
市:か・はっ―――・・・
ドゥ:これで・・・極める―――!
―――≪大蛇薙≫!!
そう・・・ドゥルガーの衝撃波技こそは、市子を“誘う”為の、「デコイ技」だったのです。
そこから、ドゥルガーの猛追撃―――
炎を纏わせた拳から繰り出される、多彩な連撃・・・
それは、技の出がかりこそ同じであっても、次に繰り出されるモノは、どれ一つと同じものはない・・・
だから市子は、ドゥルガーからの反撃を喰らってはいたのです。
ですが・・・ここ一番で極める、『仕留めの技』が・・・
ドゥ:(くっ・・・外した?!)―――ッッ! あなた・・・それは―――ッ!!
市:これは―――私の信友の技です・・・
見様見真似でしたが、幸い賭けは“吉”と出たようです―――
「信じられない・・・」
「この私の、連続技を―――」
「一度、相手が喰らえば、反撃不能の私のスキルを・・・」
「あ・・・れ? 信じられないけど、愉しい―――愉しくなってきちゃった・・・」
「この私の、必殺技を外されて、危機に陥っていると言うのに・・・」
本来ならば、“必殺技”とは、必ず相手を、その技で、戦闘不能にしなくてはならない技・・・
だからこそ、技としての威力は絶大ではあるものの、仕留め損なった時の、隙や硬直は計り知れない・・・
今も、ドゥルガーの放った必殺技が、何故か空を切り―――身体が宙を泳ぐ危険な状態となっている・・・のに、
何故か市子からの反撃はなかった―――
「そう言えば・・・必殺技を発動させるまでの連撃―――」
「あの時も、この人は、私と瞳を合わせてきた・・・?」
「まさかこの人は、あの連撃を喰らいながらも、ここまでの事を詠んでいた―――?」
「凄い・・・敵わない―――」
「だけど・・・愉しい―――!」
ドゥ:けれど・・・判らないわ―――なぜそうまでして・・・
市:総ては可能性の為に―――
ドゥ:それ・・・このゲームの「キャッチ・コピー」?
市:いえ、違います・・・このゲームのは、『総ての可能性の為に』―――
ドゥ:それが動機ね―――
市:ええ―――その“可能性”を、あなたに見い出すことが出来ました。
ですから今度は、あなたが今回至る事が出来なかった人達の為、導いてあげてください・・・。
では―――仕上げと参りましょう!!
つづく