マリアが、自身のバカンス―――と、あと珍しくも夫の手伝い(?)をする為、日本に降り立った・・・
その日のAM3:00―――
人気のない公園で、スーツを着こなした男性(推定65歳)が、一人ベンチに座っている・・・
なぜこんな夜更けに―――?
それと、何かの取引なのか、大事そうにアタッシュケースを小脇に抱え、しかも不安そうにしている・・・
すると、人気がないハズなのに、男性が座っているベンチの背後―――それも木陰から・・・
≪オチツケ―――≫
男:(え?あっ??)“あなた”―――ですか・・・?
≪オチツケ アマリ フシンナコウドウヲ スルナ オチツイテ マエダケヲ ミロ≫
男:あ・・・あっ、はい―――
〜☆カチリ☆〜
≪―――ユックリダ・・・ ユックリト ケースヲ アケロ ミョウナマネヲ スルト・・・≫
“この国”が、平和ボケをしている―――と揶揄される所以・・・
“あの敗戦”より軍隊を持つことを憲法により禁じ、戦争をしない事を宣言してしまった事から、
国内は“内紛”等は起こらず、また国外に於いても、戦争行為を一切行わずに傍観している―――
そんな“行為”とは一切無縁―――であるが故、まさしくの「平和」を謳歌していると言えました。
けれど、その代償として、危機管理が無くなった・・・極端に弱くなってしまった―――
確かに治安は良くなりました、どこかの諸外国の様に、分単位で強盗・殺人・発砲―――等々の、物騒な事とは無縁・・・
だからこそ、この男性の様に怯える―――
そう、この男性こそは、今、自分の背後にいるであろう“存在”の事を周知おり、今ここに居る―――
この国は、実に“平和”にして、治安も“安定”―――しすぎている・・・
だからこそ、どこかの諸外国の様に、銃の発砲音ごときで、話題にならない―――
事はない・・・
警察機構も優秀で、銃の持ち込み、所持・使用禁止のこの国で、そんな事態が起きようものなら、どこに居ようともすぐさま駆けつけてくる。
だからこそ迸る緊張―――今現在、実際に自分の背後にいて、もしかすると拳銃で自分の後頭部を狙われているかもしれない・・・
そうした緊張感―――
そして数分後―――過ぎた緊張感から解放された男性は・・・
男:ふう〜〜やれやれ・・・何とか依頼は引き受けてもらえたか。
それにしても妙なものだ、外国人だからさぞかし日本語は苦手なモノと思っていたのだが・・・
それに“あの声”―――まるで機械で合成されたモノのようだったなあ・・・
はは―――そんな訳はないな、あの銃を突き付けられたような感覚・・・あの場所にはいなかったと感じられないくらいだったのだから・・・。
どうやら、その男性の“依頼”は、引き受けられた―――ようでしたが。
この男性が奇妙に感じたのも無理らしからぬところだったようで、この度の依頼を引き受けた者の“声”が、
どこか作り物のように聞こえてしまった・・・あんなにも、“殺気”をその男性は感じていたのに―――?
疑惑は深まるばかりでしたが・・・そんな疑惑の時間より数十分後―――
とある高級ホテルのロビーにて・・・
#96;夜はキケンな香り
ホテルマン:ああ―――これはフランソワ様、お帰りなさいませ・・・
フ:・・・なにかあったの?
ホテルマン:ああ―――どうやらこの近辺で、発砲事件があったらしくて・・・
フ:物騒になったものね、日本も・・・
ホテルマン:ははは―――・・・ルーム・キーになります、快適な夜を・・・
その女性―――フランソワ=ベアトリーチェ。
海外に拠点を置く実業家で、今回この国に訪れたのも、ビジネスの為・・・なのだとか。
それに、彼女も久方ぶりに訪れたからなのか、夜の街へと出て、そこから戻ってきた時に、妙に周りがザワついていた・・・
それを、ホテルのインフォメーションに訪ねたところ、この平和な日本で、発砲による殺人があったのだとか―――
けれど彼女は、表情一つ変えず、“チクリ”と皮肉を言っただけ―――そのことに、ホテルマンは苦笑を浮かべたものだったのです。
そんな―――・・・同じ時間帯での出来事。
自分が偶発的に遭遇した者と、自分が「危険人物」と認識している者との整合性を確かめる為、マリアは・・・
マ:ジゼル―――ちょっと今いい?
≪どうしたんですかあ? マリア。≫
マ:あなたにちょっと、調べてもらいたいことがあるの。
≪ほいほい。 一体どんな用件? ああ―――それと、質問の内容により、料金違うからねえ〜?w≫
マ:ん、もう〜〜〜現金なんだから・・・。
実は、「ピース・メイカー」の特徴を教えてほしいの、あとそれから、彼の者が今どこにいるか・・・
すると、途端に―――スマフォの向こう側からの、反応が途絶え・・・た?
マ:(?)ねえ―――ジゼル?
≪なあマリア・・・それ、本気で言ってる?≫
マ:(・・・)ええ―――
≪どう言うつもり? 私に「死ね」と言ってるのか?≫
マ:違うわよ―――ちゃんと訳を話すから、良く聴いて。
そこでマリアは、その日あった事を、嘘偽りなく話しました。
とは言え―――・・・
≪はあ〜〜〜・・・ 言っとくけどさ、マリア―――≫
マ:判ってる、あなたが「ピース・メイカー」の、“情報屋”だって事は・・・
すると、スマフォの向こう側で、軽く舌打ちを鳴らすと、天才ハッカーは・・・
≪一つ“貸し”―――だよ。 ああそうだ、今あんたが話してくれた通り、“そいつ”がそうだよ。≫
マ:ありがとう、恩に着るわ・・・。
やはり、自分が知っていた特徴と一致した―――あの「金髪美人モデル」こそが、裏の業界で知られている「ピース・メイカー」だった・・・
では、ならば・・・今回彼女がこの国へと訪れた理由とは―――・・・
けれどマリア自身、今回この国を訪れた目的は、“そう”ではないとし、気分を改めてのログ・インをしたのです。(現在時刻AM3:00)
一方、クラン「カレイドスコープ」では、メンバー揃ってダンジョンを踏破し、その事による「反省会」と称する、チャット談義に華やいでいました。
リ:イヤ〜〜〜皆しっかりと成長してるよね!
ようやくソフィアさんも、ヒーラーとして通用してきたし、プリンさんはサポーターに好し、サブのヒーラーに好し・・・だもんね。
でも何よりうれしいのは〜蓮也が見違えるほどに逞しくなってるコト♪
蓮:なんだあ?そりゃ・・・それじゃあオレは、今までお荷物―――だったてのか?
市:そうですよ―――少しは自覚なさい。
蓮:お嬢〜〜そりゃ―――(ゲフゥ!)
市:その呼び方は止めなさい―――と、何度言えば判るんですか!
再教育し直しましょうか?
ギ:ハハ―――サブマス容赦ねぇなww
プ:それよりソフィアは、リキャストタイムを把握しておかないとね。
ソ:スミマセン―――!スミマセン―――!
プ:まあ〜〜こういうのは慣れだからねw
ジ:けれど、皆がそれぞれ成長しているのは事実だよ。
私もクランマスターとして誇らしい限りだ。
出会えた頃とは違い、個々の特性を理解し合い、また指摘し合える・・・それが成長をしていく過程―――
クランマスターであるジョカリーヌも、今回のダンジョン攻略に参加しましたが、彼女の役割である「司令官」としてはもちろん、
ヒーラーやキャスター、更にはサポーターとしての役割も果たしてはいなかった・・・
ただジョカリーヌは、可能性ある者達の“卵”を、じっと見つめていたのです。
それに、このクランには、既に「至りし者」としての2人・・・リリアと市子は前線には出ず、後衛であるギルバートやソフィア・・・
よりもまだ更に後方に収まり、メンバーが余程の窮地に陥らない限り、行動を開始することはなかったのです。
しかし、それでも難易度AAのダンジョンをクリア出来た―――これは、一つの成果と捉えてもいいのです。
―――と・・・そんな彼らがログインしていた時間帯に、やはり同じくしてログインした存在・・・
薄手で、その者の卓越した“ダイナマイト”なボディラインが浮き出てくるような、強調するかのようなバトルスーツを身に纏い、
頭部には表情が判り難くなるようなバイザー・・・
このサーバー、「トウキョウ」では見かける事のない、そのプレイヤーこそは・・・
≪(さて・・・始めるとしましょうか―――)クリューチ、こちらドゥルガー、準備は出来たから早速教えて。≫
ク:人使い荒いんだからなあ〜〜〜もう・・・ 今回の請求、さっきのと含めて出しときますからね。
≪判ってるわよ―――それで?≫
ク:その位置から東北東―――2時と3時の間に、貰ったIDがいますね・・・
それに結構人が集まってるなあ―――ひょっとして、クランの集会か何かかな?
≪ありがとう―――東北東・・・2時と3時の間ね。≫
北南米エリヤ最強と謳われたプレイヤー『ドゥルガー』・・・
彼のプレイヤーと、≪ダイレクト・トーク≫で会話をしていたのは、ドゥルガーと同じクラン、『DIVA』のメンバーの一人で、天才ハッカーの呼び声高い『クリューチ』でした。
そこで彼女達は、先般自分達のクランを強襲してきたプレイヤー・・・そのIDとアバターのみを手掛かりに、
彼のプレイヤーが東洋の島国である日本―――トウキョウ・サーバーに拠点を置くプレイヤーではないかと推測し、
天才ハッカーの能力によって、そのプレイヤーがやはりトウキョウ・サーバーを拠点としていると断定。
しかも、そのIDを持つプレイヤーの周辺には、複数のプレイヤーIDも確認されたため、クリューチはクランの集会をしている者と推察したのです。
それを頼りに、彼らへと近づくドゥルガー・・・・
やはり彼女は、自分達を襲い来た者に対し、その“お礼参り”に―――と、この機会を選んだのでしょうか。
つづく