リリアとドゥルガーが、互いの拳を交り合わせ、相互の理解を深め合っていた頃・・・

 

愛しの妻より遅れてこの国に入ってきた夫は―――

 

 

カ:さあ〜〜って、と―――ようやく着いたけど・・・マリアの奴、早速こっちで一悶着起こしてないだろうねえ?w

 

☆−〜ピロリン〜−☆

 

カ:はあ〜いよ、今着いたとこだぜ。

≪ふふゥ〜ん、時間通りっスね―――≫

 

カ:一応、今回のターゲットの資料に目を通してるとこだ。

  目途が着いたら、また連絡するよ。

 

 

かれの“本業”は、泥棒―――

それも、ここ最近では、価値のある古美術品や金銭などではなく、「知られてはならないモノ」・・・

いわゆる大企業や政府―――または大物政治家連中が、直向(ひたむ)きにそうとしている・・・それもある意味での・・・

 

では―――KAINが狙う宝が、ここ日本にも・・・?

 

一つ間違えてはならないのは、彼にとっては“国家”も“富”も、その興味の対象ではない・・・

彼の興味の対象となっているのは、偉くなった者達が隠そうとしている“(モノ)・・・

なぜなら“(KAIN)こそは、泥棒―――なのですから・・・

 

 

その一環―――下準備であるとでも言う様に、互いの情報を交わすKAIN。

 

そして、妻が待つ予約していた高級ホテルへと到着し・・・

 

 

カ:予約していた者なんだが―――連れはもう来てるかい?

 

ホテルマン:ああ―――これは・・・『ロックフェラー様』。

       はい、お連れの方は、既にお部屋にご案内させて頂いております。

 

 

彼の“表”の顔―――IT実業家にして、一代で財を成した新進気鋭の“天才”・・・

そんな大富豪が、高級ホテルを宿泊先に選ぶことなど、普通によくある話し・・・でしたが、

ここに奇妙な関係性が―――・・・

実は、このホテルのロビーに来ていたのは・・・

 

 

小:(ん〜〜? 今、聞き覚えのある家の名を耳にしたと思ったけど―――

  ありゃ、ここ最近メディア進出で、(あちら)話題になってるカインじゃねえの

  それにしても、またなんでこの国に・・・?)

 

 

この国の、ある特定地域にて、財閥のご令嬢として知られている橋川小夜子・・・

その彼女も、明日(みょうじつ)えているレセプションの打合せの為、このホテルを訪れていたのです。

 

それに小夜子も、カインの事は知らなくても、その家名―――『ロックフェラー』に刺激を受けていたのです。

 

 

それはそれとして―――

 

☆―〜コンコン〜―☆

 

妻:はあ〜い―――

  あっ・・・

 

カ:会いたかったよ、ハニ〜〜。

  君がいなくて、寂しさで死んじゃいそうだったよ〜〜。

 

マ:はいはい―――いつも聞いてると、聞き飽きてくるものよねぇ・・・

 

カ:つぅ〜れねえこと言うよなあ?

  ホント、付き合い長くなるほど、冷たくなってきてるぜえ〜?

 

マ:そりゃだって・・・この国に入国した本来の目的、知っちゃってるモノ―――

  泥棒の本来の目的知ってる捜査官としてはねえ〜〜ドライな関係でいたいものよ。

 

カ:そんなにガッつくなってw いつもはお前に捕まえられてるじゃないか。

 

 

そう言うなり、夫は妻の唇を奪い、そのまま夜のお愉しみへと直行―――

 

 

彼と彼女は、本来“追いつ追われつ”の関係にありましたが、こうした関係上では、“ドライ”にならなければならない、少し奇妙な関係でもあったのです。

 

けれども、その“奇妙な関係”が、二人の仲を燃え上がらせるのだとしたら・・・?

 

それに、今のベッド・インにしても、普通のベッド・インではなく―――

“夜のお愉しみ”を、一頻(ひとしき)えさせた二人・・・

 

 

カ:そ〜れで・・・今回のバカンスは楽しめたのかい?

 

マ:ええ―――それはもう。

  それに、若いっていいわねえ・・・ここへと来た甲斐があったと言うモノだわ。

 

カ:おいおいw 老け込まないでくれよ?

  オイラの奥さんは、まだ若くて美人さんなんだから。

 

マ:『まだ』―――ってねえ・・・私はこれでも十分若いですッ!

 

カ:ハハッ―――悪ィ悪ィw

  ―――ん? どうした、マリア・・・

 

 

(カイン)れる到着していた(マリア)は、当初目的がありました。

 

自分達のエリヤで、最強を自負していた自分をも超えた強さを持つ者―――

その強者も認める、更なる強者を知る事と、ならばその強者達を培った環境は、自分達のエリヤと比べて何がどう違うのか・・・

それを知りたかった―――

 

そしてその本懐は遂げられ、まだその先を目指すべく、暫くはここに滞在するつもりなのでしたが・・・

 

それよりも気がかりなことが、マリアにはあった・・・

そう、彼女が入国の手続きを行う際、ある危険人物と邂逅した事を、包み隠さず夫に伝えたのです。

 

 

カ:ええっ?! 「ピース・メイカー」が??

 

マ:ええ―――その時は、多分そうじゃないかと思ったんだけど・・・

 

カ:確認は既に取れてるって言うのかい?

 

マ:一応は・・・ほら、ジゼルは「ピース・メイカー」の情報屋だって事は、私達の間じゃ知らないわけじゃない事だし・・・

 

カ:ふぅ〜ん・・・ちょっとこいつは危険だな―――

 

マ:それってやっぱり?

 

カ:ああ、その事を知られたら、君もジゼルの身も、危ない・・・

 

マ:まあっ、もう・・・妬けちゃうわねっ。

 

カ:冗談言ってるんじゃねえよ。

  ジゼルはオイラにとっても、貴重な情報源だしな。

  それに・・・あと、オイラ達は“仲間(クラメン)だろう?

 

 

稀代の暗殺者―――「ピース・メイカー(平和の使者)が、目的このへと入国をしている・・・

けれど、その事が判ったかとて、安心はできないのです。

 

なにより彼の者は、“繋がりを持つ者”・・・今回で言えばジゼルしか、その正体を知らない・・・

それまでは、連邦警察に務めるマリアでさえ、「ピース・メイカー」の性別すら知らなかった・・・

()してや、外見以ての外(もってのほか)―――

人種も―――果ては肌の色さえも・・・

 

けれど、とある北欧風の金髪美人のの背後を、“ただ通りすがった”―――()()だったのに・・・

 

不意な攻撃を受けた・・・

 

マリアは、優れた“嗅覚”を持つ、卓越した連邦警察捜査官にして、『猟犬』・・・

その彼女の嗅覚に、この鋭すぎた攻撃が引っ掛かったのです。

 

 

所変わって―――

都内にある安アパートで、自分の“春”を売った娼婦が、自分の“春”を買ってくれた男を自分のアパートに連れ込み、

自分の身体を預けさせていました・・・

 

ただ―――その娼婦の実に奇妙な処と言えば、“春”を買ってくれた男に、いいように身体を弄ばれても、

喘ぐことすらせず・・・頭の中では別の事を考えていた―――

 

しかし、その肉壺より(ほとばし)潤滑油満足らしめ、絶頂りに放精するものの、

行為を終えさせると適当な金品を与え、去らせたのです。

 

そして―――・・・

 

 

フ:(フフ・・・それにしても、空港内で遭遇したのが、噂の『猟犬』だったとはね。

  ならば、彼女の事も、今件の依頼を遂行する上での、“計画”に組み込んでおかなくては・・・)

 

 

「ピース・メイカー」フランソワにも、ある種の不安材料が付き纏っていました。

それが、あの空港での一件―――フランソワ自身が嫌う、背後を取られた事により、条件反射で繰り出した手刀・・・

その者の命を絶つための手段―――であるにも拘らず、寸での処で(かわ)されてしまった

 

とは言え、依頼人に会う前に話題になってしまう危険も冒したくない為、そこでは素直になったものでしたが・・・

 

それでも気になっていた、あの「眼」―――

 

 

あの眼は“普通”ではない―――

普通の(イヌ)なら、もう従順をしている・・・

それが、あの(イヌ)は、普通われている愛玩動物としての、愛嬌あるそれではなかった・・・

“狩猟”をする為に品種改良された―――獰猛な“猟犬(イヌ)”の眼・・・

 

 

「ピース・メイカー」は、その彼女(猟犬)危険性理解とするとともに、自分情報屋情報め、

自分の事情を知られているであろう事を知りました。

 

が・・・「ピース・メイカー」は、その情報屋が実に優秀であり、自分に有益に役立っていたことから、

今回だけは大目に見る事にしたのです。

 

 

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それはそれとして―――その翌日の出来事にて・・・

 

 

 

#99;市子の社交デビュー

 

 

 

リ:え・・・っ? 市子、今日はログ・インできないの?

 

市:ええ―――本来は、お父様たちの大人の会合であるはずなのに・・・

  けれど先方様が、娘の私も同伴で―――と、望んでいるらしくて・・・

 

 

期せずして、彼女達の現実にも、少しずつの変調があったのです。

 

それがどうやら、市子の細川家と、取引先の関係にある“先方”―――つまりは大手企業が、

自分達との将来性を見込んでの事なのか、次代の当主である市子に、『一目会ってみたい』との申し出があったらしいのです。

 

市子もそれまでは、自分の父親のビジネスの関係上に於いては、ノー・タッチにして学生身分の自分に関しては、関係のない事だ・・・と、思っていたのですが。

 

そんな市子も高校2年生―――来年には卒業を迎え、そろそろ進学するか・・・就職するか・・・の、進路を決めなくてはならない時期に来ていた・・・

そこへ来て―――の、この打診・・・

 

それに悪い事と言えば、まさにこの時まで全く自分に無関係だと思い込み、現在自分の父親が、どこの誰と取引をしているのか、全く知らなかった・・・

 

―――とは言え、全く知らないままで、今回の一件に当たると言うのは流石に失礼にして無謀だと感じたため、

付け焼刃とは感じても、限られた時間・・・昼の休憩時間に、取引相手の事を出来得る限りで収集したのです。

 

その結果が・・・

 

 

市:「ロックフェラー」・・・!!

 

 

最近になって、メディアに進出する機会が増えた、米国の富豪・・・「ロックフェラー」。

 

一世一代で巨万とも言える富を築き、なんでもその妻はハリウッド女優並みの美貌なのだとか・・・

 

いやしかし―――そんな大物が、自分の家の取引相手だったとは・・・

 

市子には、いつになく緊張が(はし)っていました。

この取引が成立すれば、落ち目となっている自分の家の立て直しが出来る・・・加えて、自分の想い人の唱えている戦略(プロジェクト)にも参加すること出来・・・

 

それに、恐らくは・・・先方が、自分を『見たい』と言っているのにも、何かしらの理由がある・・・

これは“賭け”―――細川の・・・娘である市子自身にとっての・・・一世一代の、賭け・・・

 

この大舞台で先方に失望をされてしまえば、家も自分も・・・総てがお仕舞いとなる。

けれども成功―――気に入れられれば、(さき)けてくる・・・

 

総ては、自分のこの双肩にかかっているのだろう―――

 

 

市子は、未だ知らない・・・知る由も、ない―――

謎の富豪、「ロックフェラー」の事を・・・

 

 

 

つづく