初めての“彼”と“彼女”との出会いは、衝撃的―――と言って、差し支えありませんでした。

 

“一仕事”終え、悠々と去ろうとしている泥棒を、その逃走ルートを詠み、逮捕まで至れた『猟犬』・・・

 

しかしながら、『猟犬』が署に戻った時には―――・・・

 

 

 

バ:逃げられたぁ?

 

マ:はいっ! 申し訳ございません、バルディア警視殿。

 

 

 

当時、まだバルディアは州警察ではなく、連邦警察の“警視”でした。

 

そのバルディアが、自分の部下が『心当たりがある』からと、単独行動させたのでしたが―――

 

 

いや・・・しかし、この部下が、逮捕まで至った容疑者に逃げられるはずが(一度喰らいついた獲物を離すはずが)―――

なにしろこいつは、その執拗・獰猛性のお蔭で、『猟犬』とまで称された(よばれた)だからな・・・

それを、『逃げ()()()どとは―――!?

 

 

バルディアは知っていました。

この、優秀に“過ぎる”部下であり後輩が、そんな初歩的なミスを犯すようなヤツではない事を・・・。

だから、真相を探るにも慎重を期し・・・

 

 

 

バ:マリア―――()()()()()()だよな

 

マ:はい、そう言っているではありませんか。

 

バ:どうして逃げられた・・・

 

マ:署に戻るまでに、少々()()()()まして―――どうやらその・・・

  私がパトカーに戻った時には、既に・・・

 

 

 

()()()()()()・・・どこかこいつは、いている

それも、こんなにも分かり易く―――嘘の吐けないこいつが??

 

 

バルディアも、無能ではない・・・だからこそ、マリアの偽証(ウソ)ぐさま見抜けたのです。

 

けれど彼女―――バルディアにしてみれば、何故そうまでしてマリアが嘘を吐くのかが判りませんでした。

 

 

自分の為にもならないのに・・・

 

 

バルディアも、マリアの出世の道が断たれた経緯(いきさつ)っていました。

なのに・・・だからこそ自分の手元に置き、徐々に実績をつけさせようとした矢先の出来事だった。

 

けれど今、ここで厳しく追及したとしても、恐らくマリアは真相を話そうとはしないだろう・・・

だからこその“搦め手”で・・・

 

 

 

バ:―――そう言えばお前、例の“オンライン・ゲーム”は続けているか。

 

マ:(?)は・・・あ―――続けていますが・・・?

 

バ:そうか―――なら気晴らしに、久しぶりに一緒に“狩り”でもするか。

 

マ:はあ・・・構いませんけれど―――

 

バ:よし―――なら、23:00(フタサンマルマル)ログインするとしよう。

  クラメンの・・・そうだな、『バンディッド』に『クルセイダー』も呼集(よぶ)とするか。

 

 

 

『急に、妙なことを言いだすものだ』・・・と、マリアは思いました。

容疑者を取り逃がしてしまったのだから、“始末書”くらいは覚悟をしていたのに、逆に・・・の、お咎めなし―――

 

マリアも―――バルディアも、この頃流行していたオンライン・ゲームを、プレイしていたプレイヤーの一人でした。

だからなのか、手柄を立て損なった部下を気遣う為か、その日の23:00にログインし、

クランの仲間と“狩り”を・・・レベル上げの目的や、アイテム収集・採集の目的で為される戦闘を愉しもう―――と、誘ったのです。

 

無論これは、バルディアなりの気の利かせ方・・・と同時に、同じクランに所属する、

“ある技術”に於いては並ぶ者がいない、その道のプロフェッショナルに依頼をする為の“布石”でもあったのです。

 

 

 

*      *      *      *

 

 

 

そして同日の21:00―――約束していた23:00より2時間も早くログインしたバルディア・・・こと、プレイヤーネーム『バーディ』は、

自分のクランに所属している“ある人物”・・・

 

 

 

?:お呼びっスかあ―――

 

バ:すまんな―――

 

?:いいってことっスよ―――それで?

 

バ:ああ―――実はな・・・

 

 

 

その人物とは―――“その道”・・・『ハッキング』の技術にかけては、右に出る者がいない、

時代の寵児―――『クリューチ』こと、本名をジゼル=オーチャード・・・

そんな彼女を呼び出し、バーディが為そうとした事とは・・・?

 

 

 

ク:ああ―――“コレ”っすね。

 

バ:(これは!!)

 

ク:はい―――逮捕・・・と。

  んーで、この道筋・・・ちゃんと署に向かってますけどねえ?

 

 

 

クリューチの恐ろしい処・・・

彼女の手に掛かれば、プライベートもあったものではない。

 

今バーディが見せられていたモノとは、ロス中に付けられている防犯カメラの映像―――

それを、クリューチが持っているノートPCで見られるとは??

 

そう、これがクリューチが持つ『ハッキング(能力)

 

現に今、マリアの証言通り、KAINと思わしき人物を確保・・・逮捕にまで至った経緯が、まざまざと―――ありありと、刻明に映し出されていた・・・

 

だが、ここまでは―――

そう・・・()()()()()マリア証言通―――

 

バルディアが本当に知りたいのは、マリアが有り得ないミスで、KAINに逃げられたかどうか・・・その一点のみ―――

 

そして・・・恐るべき事実が、明かされる―――

 

 

 

ク:あれっ? 道逸れちゃいましたね―――

  ん〜〜にしても、そんなとこに車停め・・・あっ―――

 

 

 

やはり・・・自分が疑った通りだった―――

そう、マリアは、容疑者に逃げられた―――のではなく、わざと逃がしたのだ・・・

 

だが・・・しかし―――事の真相を知ったとて、自分はどうしようと言うのだ?

素直に“上”に報告を上げ、査問を請けさせるべきか・・・

いや―――この自分とて、今の連邦警察の腐敗ぶりは目に付いている。

 

ならば・・・自分はどうするべき―――

 

 

 

ク:ねえ〜〜〜コレ、どうするンすか?

  コレ知られちゃったら、マリア警察にいられなくなりますよ?

 

バ:判っている―――そんな事は・・・

  だからと言って、ならばどうすればいいんだ!!

 

ク:(・・・)―――そう言えば、防犯カメラって、録音機能ねぇんスよねwww

 

 

 

“録音”・・・か―――確かにそうだ。

マリアがKAINを逃がす際、車内で“何か”を話してるようだった・・・

そして、その“何か”を話し終えた後、KAINを車から下ろしている・・・

事の真相を明らかにするには、『この場所で何が話されていたか』―――だ!

 

 

バーディの推理は、徐々に真相へと近づいて行きました。

 

そして、次に呼び出されたのは―――

 

 

 

?:どうした―――

 

バ:ああ、悪いな・・・急に呼び出して。

 

?:気にするな、いつもの事だ。

 

バ:実は、この場所を“読み込んで”もらいたいんだ。

 

 

 

彼の名は、アーノルド=ヴァルザック―――

 

仮想内にログインしていたバルディアは一旦ログアウトし、現実内で彼の助力を得ることにしたのです。

 

そう、この彼こそは、ある異能を持っていました。

その場に残る“残留思念”―――それを読み取るという、『リーディング』。

 

つまりバルディアは、古くから付き合いのある、軍隊経験がある警察特殊部隊(SWAT)所属能力てにしていたのです。

 

そして通称、『読み取る人(リーダー)ばれるァルザックが、読み取った思念とは―――・・・

 

 

 

ヴ:・・・ひどく後悔―――を、しているようだな・・・

 

バ:(うん?)それは、容疑者を逃がした事に関してか?

 

ヴ:いや、違う―――『上司を殴った』・・・とか、言っているな・・・

 

バ:(!)アレか―――!

 

ヴ:知っているのか?

 

バ:ああ―――マリアにセク・ハラをした奴がいてな・・・だからそいつをマリアは殴り倒したんだ。

  だが、そのお蔭でマリアは出世の道を断たれた・・・そうか・・・そう言う事だったのか―――

 

ヴ:それに、まだある・・・『例え彼を逮捕したとしても、手柄は上司のモノ』だとか・・・

 

バ:恥ずかしい話だが―――それも事実だ・・・。

  今、マリアについている上司と言う奴が、出世欲の強い奴でな・・・。

  私の耳に届いているのは、次の移動では“ワシントン”にご栄転―――だと・・・。

 

ヴ:どこも変わらん―――か・・・。

 

バ:ああ、すまなかつたな。

  今度お礼に、一杯付き合おう。

 

 

 

やはり・・・“気にしていない”―――と言う、その顔の向こう側では、自分がしてしまった行為に激しく後悔をしていた。

それに加え、警察内部の腐敗ぶりにも目に余るものがあったのだろう―――

 

 

判る・・・その気持ちは痛いほど良く判る―――が、自棄(ヤケ)なってはダメ・・・

 

 

バルディアは、マリアの優秀さ有能さを知っていただけに、未だ平の巡査で収まらせておくには勿体ないと思っていました。

 

けれども、容疑者に“逃げられた”のならまだしも、彼女の意志で“逃がして”しまっては・・・

 

そしてこの後、彼らの運命は流転していくこととなるのです。

 

 

 

EX2−2;“警察(ケイ)”x“泥棒(ドロ)

#2;掛けられた疑惑

 

 

 

つづく