≪三節;哀しみを振り払って・・・≫
〔しかし―――この機会に、マサラからアヱカの重すぎる「運命」を諭(さと)そうとした時・・・〕
―――ガ サッ!―――
マ:(もう来たのか!!) 姫様、あそこの岩陰に、隠し扉のスイッチがございますから、それを押して・・・上手く落ち延びて下さい!
ア:でっ・・・でも・・・そうすると、マサラはどうするの・・・
マ:あたいは・・・・もう一緒に行けやしません・・・。
今こうなってしまったのも、偏(ひとえ)にはあたいの責任・・・。
ア:で・・・・っ、でも・・・
マ:姫・・・姫様・・・!!
あなたと一緒に暮らせた日々・・・とても愉しかったよ・・・。
うぅん、あたいだけじゃなく・・・兄さんや他の皆も・・・だから・・・・だから・・・!!
ア:マ・・・マサラ・・・!!
マ:だから・・・最後のお願い・・・。
形見に姫様―――・・・
ア:え・・・?
マ:あなたのお顔、頂戴いたします―――
ア:え・・・?? ぅうっ―――?!
〔今少しで・・・伝えることが出来たのに―――またもや運命の悪戯か・・・
自分たちが隠れている洞窟のすぐ側で、何者かの足音がしたため、ここはアヱカを逃がす選択を取るマサラ。
そして、今生(こんじょう)の別れが近付くに際し、この女将軍マサラのとった行動とは・・・
自らの掌を、姫の顔にあてがい―――そして再びその掌を自分の顔にあてがったその瞬間!
なんとそこには、同じ容姿を持った女性が二人いたのです。〕
ア:マ・・・マサラ・・・!!そ、それは・・・!!?
マ:・・・・。
ア:あぁ・・・マサラ??!
マ:おさらばです・・・・
ア:ああ・・・・あぁっ! マサラ・・・・マサラ――ッ!!
おっ!いたぞ!あそこだーッ! 囲めーッ!生け捕りにするんだー!
う゛っぎゃああぁっ!
あ・・・っ、こいつ・・・ヤレーッ!ぶち殺せーッ!!
ぅああぁ―――――っ!
ア:あぁ・・・っ、マサラ・・・マサラ――ッ!
〔それは・・・この大陸では異文化とされる「忍術」の一つ―――「身代わりの術」・・・
なぜ、小国のテラに、そんな術を使える女性がいたのか・・・知る術はなかったのですが―――
唯一つ確かだったのは、この女護衛の将にしろ、前(さき)に華々しく「自爆」した男護衛の将にしろ・・・
「状況選択」には手馴れている感じはしたのです。
主からの命(めい)を忠実に守り、遂行する―――・・・
素性の如何を問わなければ、これほど有用な「道具」としての人間はいなかったことでしょう・・・
それにしてもマサラは、現在の自分の主であるアヱカの顔を奪った理由を明らかにはせず、
黙って壁に仕掛けられた装置を作動させたのです。
するとそこには―――巧く周囲の岩に似せた「仕掛け」が・・・
その仕掛けを作動させ、黙ってアヱカをこの洞窟より外に・・・
そしてそれよりは、マサラが「アヱカ」に―――
すると、テラの生き残りを捜索していたカルマ兵は、この洞窟を見つけ出し・・・中を覗いてみると―――
そこには、自分たちが血眼になって探していた一級の容疑人が・・・
これで自分たちの苦労が報われるだろうと思っていたその時―――なんと、この姫から手痛い反撃が・・・
当初は、生きて捕えることがその命題でしたが・・・
ここまで抵抗されるとは思ってもいなかったため―――つい感情に任せて、兵士の一人がアヱカを・・・
そう・・・この姫の最後の護衛を勤めていた、女将軍のマサラ―――
自身を姫の影武者と化して、華々しく散って逝(い)ったのです。
そして、この時より、この姫君は天涯孤独の身に・・・もう頼るものは、己が身一つとなってしまったのです。〕
ですが・・・
いつまでも その場に そうしているわけにもいかず・・・
総ての 哀しみを 振り払い
この姫君は
たった一人で
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歩み始めたのです。
To Be Continued・・・