≪五節;錆び逝く過去≫
キ:な・・・なぜだあぁっ―――なぜワシの傷の再生が始まらん!!
ワ・・・ワシは・・・再生者(リジェネレーター)だろうが!?
大:それは無理と云うものだ―――キュクノスとやら・・・
まだ気付かぬのか、汝のエクソシズムを受けておきながら・・・なぜに余が未だ平然としおかれているか―――
キ:な・・・まさ―――か?!
大:気付くのが遅すぎたようだ・・・な。
汝程度の術では効かぬのだよ―――余を・・・この術にて音を挙げさせたくば、ミトラぐらいでしかおるまいて・・・
リ:ミ・・・ミトラ―――?! ミトラ・・・って、マハトマの最高神であり、創始者だった―――って云うじゃない!
それをどうして・・・エルムドア様が??
キ:そうだとも・・・なぜにお前がミトラのことを知っているというのだ!
このワシですら―――ヴェルフィオーレにある偶像でしか知らぬものを・・・
〔嘆かわしいものだ―――・・・汝か為した功績も、後の世である現在では、最早語り継がれるモノではなくなってしまったようだ・・・
汝が苦悩し―――いかにしてあの者に取りなさんとしたか・・・
風化と云うものは・・・実(げ)にも畏ろしいものだ―――なぁ・・・ブリジット・・・
この僅かな間にも、エルムドアは思いを馳せていました―――
それも、現在・・・に、ではなく、遠い―――遙かな過去の記憶に・・・
けれども、喩えそうだとしても、エルムドアの闘争は結末を見たわけではなく―――〕
大:ふむ・・・此度の闘争は、中々に愉しめたものだった―――ぞ・・・
では、エンデ―――だ・・・
=裏面・85式:ギガグラビトン=
〔まるで・・・片手で、服に付いた塵を払うかのように、淡々と強力な魔術を行使する大公爵―――
その彼の前では、魔将と畏れられたキュクノスでさえも、「猛獣の前の赤児」「激流に揉まれる木の葉」・・・に、過ぎなかったのです。
そう・・・ついにキュクノスも、己より強い者の力に屈し、一枚の薄い布の切れ端のように・・・
その強さを垣間見た、リリアとマキは―――〕
マ:うへぇ〜〜ペラペラ―――まるでのしイカ見たいになっちゃってるよ・・・
リ:(私たちが束になっても敵わなかった相手を―――・・・
強い―――強すぎる・・・まるで次元が違いすぎるわ・・・)
大:ふむ・・・やはり出来る―――とは云っても、この程度のものであったか・・・
気が晴れぬ…余はいつまで待てばよいというのだ・・・余を、心の底から愉しませてくれる強き者を・・・
マ:・・・おじちゃん―――淋しいんだね。
おじちゃんみたいに凄く強い人が中々現れないから―――・・・
あたしが、もう少し強くなってあげれたら・・・退屈なんかさせてあげないのにね―――
大:・・・フフ―――汝は、存外にも面白いことを云うものだ。
だが・・・今は、その心意気だけで十分だ―――
〔その時のエルムドアは、嬉しかったに違いはありませんでしたでしょう・・・
力弱き存在ながらも、いつかは彼自身並みの強さになって、退屈をさせない―――と、云うマキに・・・
こんな・・・思わずも嬉しくなるような、気概を吐いてくれる――― 一人の人間の娘に・・・
けれども、そんな思わず微笑ましくもなる光景を見ていても、リリアだけは冷静に見定めていました。
どうしてこんな強い人が―――・・・いや、強すぎるからこそ、周囲(まわ)りから疎んじられ、やがて中央から追いやられていったのだ・・・と。
ならば―――大公爵と同族であるエルムは・・・サヤは・・・?
あの二人も、いつかはこの人のようになってしまうかもしれない―――
それが喩え・・・彼ら自身がそうしなくとも、自分たち人間が―――そうしてしまうのだ・・・
人間とは畏ろしい・・・やもすると魔物よりも―――・・・
そう云う感情が、ふとリリアの頭の隅を過(よぎ)るのでした。〕
To be continued・・・・