≪四節;知られざる協力者≫
〔そのことは―――同時に「北伐」が完了したことを意味していたのです。
―――が・・・
その一方で、自分たちの役目が終わったことを、そのビューネイ某によって知らされたという養父子(おやこ)は・・・〕
リ:ええっ? ビューネイ本人から・・・そう云われたの?!
ヒ:うん・・・けど、あたい自身だって耳を疑ったよ。
なんでもそいつ・・・ビューネイ―――って、カルマの内でも一番に強くて知恵もある・・・って聞いていたから。
それに―――あたいたちにそうするように仕向けさせたのは、ビューネイって人の云うにはシホって人で・・・
エ:シホ? ―――初耳だねぇ・・・。
マ:あっ・・・シホちゃんのこと? へえ〜〜あの人、そう云うことをしてたんだ―――・・・
エ:ん? どう云う事なんだい、マキちゃん・・・
マ:うん―――そのシホ・・・って人、あたしたち「禽」の一人なんだよ。
でもね? あたしたちの元からの仲間なんかじゃなくって―――こっちに来た時に・・・
リ:え? “こっちに来た”―――って、どう云うこと??
マ:あっ・・・(ちゃ〜〜しまったあ〜〜) あぁ・・・いやぁ、しょのぉ〜〜―――・・・
エ:いいから、先続けて・・・今はそんなことは重要じゃない―――
〔そこで初めて、今までの経緯を話すことになるヒヅメ・・・
自分たちは本意でカルマに降ったのではないこと―――
また、ある者を介してカルマへの少なからずの叛意を示してみないか・・・と、誘(いざな)われたこと―――
そして、そのある者の名を出された時に、同じ「禽」の一人であったマキが、そのある者のことを語り出したのです。
自分たちの仲間でありながら、最初からではない―――中途採用と云う象(かたち)で自分たちの仲間に加わり、
その実何をしているのか判らない・・・『鴉』であるシホのことを。
けれども、彼女が仲間になった経緯は実に有耶無耶なところがあり。
つまりは仲間内であるマキがそうなのだから、そうではないヒヅメやリリアにしてみれば何のことかは判らなかった・・・
しかし、不用意に発言してしまったマキの言葉には敏感に反応したのです。
―――ともあれ・・・ひと仕事終えて創主の下に戻ってきた者はと云うと・・・〕
ビ:ただ今帰還致しました―――創主・ガラティア様・・・
ガ:ごくろう―――して、首尾は。
ビ:こちらに―――・・・
ジ:これがアクター・ネファリウスの欠片・・・これで残るはあと一人―――アナウスだけというわけね。
ガ:ああ、だけど焦らないことだ。
焦らず・・・じっくり、ゆっくり―――奴らに裁きの断を下さなければならないんだよ・・・。
〔シホは―――いや・・・ガラティアは判っていました。
かつて、自分の妹である女禍とジィルガが、焦るあまりに彼らを取り逃していたことを・・・
それにその事態を、誰彼知ることのない「空間の澱(よどみ)」で歯噛みをしながら見ていた時に、
ガラティアの頭にある考えが浮かんだのです。
それが―――自分自身の存在を偽り、敵中に潜り込んで彼らを一人づつ抹殺・・・また或いは滅亡に追いやる・・・
幸いにしてこの企みは、外部からの干渉が出来ないこの空間ならではの特性を利用し、自分しか知らない・・・
またそれに、天文学的奇跡でこの空間に辿り着いたとしても、常人如きではどうにもならない―――そんな過酷な環境の下だったからこそ、
じっくりと完璧なまでの計画を練ることが出来たのです。
そして出来上がった計画は―――まづ最初にしなければならなかったことは。
自分自身の・・・ガラティアと云う存在の痕跡を、過去百万年に遡って消しておかなければならなかった・・・
過去百万年―――とは、人間たちにしてみれば到底計り知れない時間の流れではありましたが、
彼女たちにしてみれば、それは瞬(またた)きくらいの感覚でしかなかったのです。
そんな時に、作業の途中でラージャに来た折、以前に目にかけておいた少年が、
この・・・ガルパディア大陸の人間ではない―――数人の女性たちを『禽』と名乗らせて何かをやらかそうとしている・・・
元々、策略を好む性格であったガラティアは、シホと名を変え・・・目にかけていた少年に近づき、彼女たちの仲間に加わりたいと願い出たのです。
そしてシホは―――迷うことなくカルマ行きを選択し、計画に着手した・・・
カルマを―――サウロンを―――自分を裏切った愛弟子を・・・裁くという計画を。〕
To be continued・・・・