≪七節;主従懇談≫

 

 

〔それはさておき―――シャクラディアへと戻ってきたタケルは、主でもあるアヱカに謁見し、

今回のことと、それからのことを話し合っていました。〕

 

 

タ:アヱカ様―――須らく「西伐」「北伐」、共に終わらせて参りました。

ア:うん―――ご苦労だった・・・。

 

タ:それから・・・アヱカ様にお願いが御座いますのですが・・・。

ア:ああ―――聞いているよ。

  ギャラハット・ヒヅメ・カインの事だろう。

 

  彼らのことは、タケルが一番よく理解しているだろうから、タケルに任せるとする。

 

タ:有り難き倖(しあわ)せ―――

ア:それより・・・私が早期の、それも無期限の停戦を望んだことに、他の者達は不平・不満を漏らさなかっただろうか。

 

タ:いえ、特には―――・・・

  まあ、確かに他の者達には意地と云うモノがあったのでしょうが・・・

  所詮、戦を行うのは将ではなく、兵たちなのです。

  その兵たちの活力ともなり得る食糧と云うモノがなければ、今後の各戦線の維持にも支障をきたしたことでしょう。

 

 

〔そこでは、主に今回の戦役のことに関してのことが話し合われていました。

しかも、戦局を有利に進めていたにも拘らず、対戦国でもあるカルマからの停戦要求を呑まずにいられなかったのも、

苦戦を強いられながらも、ようやくの思いで所領を回復させたベルべニア地方(旧クーナ国方面)―――

そこには大陸全土を養えるだけの食糧が保管されているはずであるのに、残されていなかった―――・・・

つまりは、敗戦の色濃くなるのを予感した、当時―――ハルナを訪れていた魔将の筆頭により、総ての食糧を持ち出されていたことに他ならなかったのです。

 

そう・・・今回の戦役の当初の目的と云えばそこでした―――

国の官を問わず、国の礎・・・根本となるべき民が餓えてしまっては、国の運営が難しくなる・・・

だからこそ、パライソの女皇であるアヱカは、自身が最も望まない―――人と人とが争い合う「戦争」と云うモノを起こさなければならなかった・・・

―――の、ですが・・・

 

その当初の目的―――民たちの活力ともなるべき食糧を、カルマに握られてしまっては、この先の交渉も向こう側に有利に運んで行くのは目に見えていたのです。

 

そしてそのことについて、タケルはアヱカに耐え忍ばなければならないことを申し出るのですが・・・〕

 

 

ア:私なら大丈夫だ。

  それより・・・他の者達のことが気がかりだ―――

  官や将・・・兵や民たちにまで回る食糧はいつまである?

  果たして、来年の今頃まで義倉は保(も)つのだろうか―――?

 

 

〔アヱカは・・・まづ、自分のことよりも民たちのことが心配でなりませんでした。

だからこそ、苦汁の選択をして今回の「西伐」「北伐」を起こしたものでしたが、結果としては・・・

戦術的には勝ったけれども、戦略的には敗けてしまった―――・・・

 

それと云うのも、深刻になりつつあった―――慢性的な食糧不足・・・

それが今回の戦役で解消されるものと思われていたのに、叶わなかったという事にアヱカは胸を痛めていたのです。

 

そのために、ここぞという時に蓄えていた義倉を解放しようと云うのですが・・・

それもいつまで保つことが出来るのか―――・・・

 

そのことも、今回の戦役がパライソ単独で起こしたものであり、各地に残る勢力と連合して行わなかったことにも、そのそもの原因がありました・・・

本来の「戦争」と云うモノの性格に、“正義”はついて回らない―――あるのは、領土拡張と云う 侵略 と云う“悪意”のみ・・・

つまり、旧クーナの所領回復名義で行われた今回の戦役も、終わってみればパライソの領土を徒(いたづら)に拡張させたものに過ぎなかったのです。

 

そしてそのことは・・・ついに、非戦主義国でもあるあの国をも、動かしてしまうことにもなるのです。〕

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

あと