≪八節;復活した龍皇≫
〔そして、ヱリヤからの報告を聞くに及び、アヱカの方でもその事実は自然と気が惹かれてくるのでした。〕
ア:それは・・・もしかすると、次元跳躍―――ではないのか?
ヱ:恐らくは・・・しかしこの術を行使できる人物を、私は数えるくらいにしか存じ上げておりません。
それに・・・どうも厭な予感ばかりが先に立ってくるのです。
ア:しかし・・・憶測でモノを云うべきではない―――
ここは慎重に調査を進めることで、事態の真相を解明することとしよう。
〔その―――ヱリヤが奇妙に感じた現象を聞くと、アヱカは自分の内でも心当たりがあることを呟(つぶや)きました。
それが―――次元跳躍・・・
簡易的に場所から場所へと渡り歩く術式ながらも、その構造は難解であり、当時としてはまだ扱える者が限定されていただけに、
奉竜殿で引き起こされた事態も、その行使者の絞り込みは容易と云えたのですが・・・
ヱリヤやアヱカが知っている者ともなれば、さらに限られてくるのです。
けれども、その事実があるはずがない―――そうであって欲しくはない・・・と、していたことだけに、口外にすることは容易ではなかったのです。
それはそうと、コキュートスにあるガラティアの秘密のラボでは―――
例の女性が目覚め始め・・・辺りを見渡した時―――〕
龍:・・・これはどうしたことだ―――? 私は・・・悪い夢でも見ているのではないのか・・・。
今私が目にしている三人・・・総て知っている―――
そのうちの二人は、私の恩人であり仲間であるが―――あと一人は・・・敵だ!!
これはどうしたことなのか―――説明して頂きましょうか・・・マエストロにプロフェッサー。
ガ:んん〜なんだか懐かしい響きがするね―――その呼び名。
だけど、早速勘違いしているようなので、説明しておこう・・・ここにいる者達は全員―――仲間だよ。
龍:揶揄(からか)わないで頂きたい・・・その端(はじ)の方にいるカスは気にしなくとも―――
そこにいる奴は・・・かつて我らに抗(あらが)い、先頭に立って苦しめてきた―――七魔将筆頭のビューネイではありませんか!!
ジ:ラゼッタ―――・・・
ス:(スターシア=ラゼッタ=アトーカシャ;この人物が今回のお話しでの重要なファクターである「龍皇」なる人物。
彼女の人柄などは、本篇の過去編である「SaGa編」に詳しい記述がなされている。)
それに・・・これはなんの悪い冗談なのです―――?!
この場所には・・・見覚えがある・・・
忘れたくとも忘れようはずがない―――この場所こそは、ヤツら・・・カルマの巣窟、コキュートスではないのですか!!?
ビ:スターシア様・・・これには事情が―――
ス:五月蠅い! 気安く私の名を呼ぶな!!
〔渦中の人物―――スターシア=ラゼッタ=アトーカシャは、現在自分が身を置いている・・・目にしていること、そのどれもが信じ難いことであると口にしました。
かつては―――さらなる過去に、自分たちのフロンティアスピリッツ(開拓精神)に基づき、この惑星へと降り立った仲間・・・同志たち。
しかし、同じ時期に、この惑星には自分たちとは真逆の考え方を持つ者達も降り立ち、自然とその者達とは激しく抗争を繰り広げたものでした。
そして―――現在自分が身を置いている場所は・・・そんな敵とも云える者達の本拠と云える処に、
また自分は捕えられてしまったのか―――と、さえ、思いたくもなってしまったのです。
すると・・・スターシアの様子を見ていた死せる賢者は・・・〕
ガ:フフ―――あの頃とどこも変わっていないようだね・・・ラゼッタ。
あの子の―――私の妹である女禍のことを想っているのがよぅく判るよ・・・
だけど、辛いだろうが―――ここは堪(こら)えておくれ・・・
なにも私たちは、誰もが好き好んでそうしているのではないのだから―――・・・
〔死せる賢者―――リッチーであるガラティアは、優しくその存在に語りかけました。
これから自分たちがなそうとしていること―――・・・どうして、かつての敵同士が手を取り合い、そのことの成就に邁進しているのか・・・
その事実としての計画を聞くと、龍皇・スターシアは溢れんばかりに涕を流し、
また自らも死せる賢者の計画することに力を貸すことを、ここに誓ったのでした。〕
To be continued・・・・