≪五節;動き始めた―――非戦論国≫

 

 

〔そうこうしているうちに夜が明け―――予定通りにヱリヤの見舞いと称して、彼女の邸宅を訪れたエルム・・・

 

いつもは、また騒がしくなるから―――と、訪れる旧知の仲を追い返すものなのですが、

現在持っている悩みを、そう云った間柄でもあるから聞いてもらいたかったのか・・・いつものようにはせず邸内に入れるヱリヤ・・・

 

しかし―――とは云え、エルムも今回の真相を知ってしまっているから・・・

また、その真相を話してしまわないように固く云いつけられているから、話題をどう切り出したらよいか迷っていたのです。

 

しかも・・・そんな態度は、知れずの内に不自然な象(かたち)となって表れ始めてしまい―――〕

 

 

エ:き・・・今日は、いい天気だねぇ〜お前サマ―――

ヱ:・・・まあね、昨晩は雷がひどくて、今日はどうなる事かと思っていたけど。

 

エ:そ、それより―――・・・ねぇ、お前サマ、何か悩みがあるんだろ?

  だったらさ―――私が相談に乗るよ・・・なにしろ、女の子には悩みが尽きないもんだから・・・ね。

  ほら・・・体重や、恋の悩み―――とか、さ・・・

 

ヱ:シュターデン・・・相変わらずだな―――お前は・・・

  だが、今私が悩みとしている処はそんなことではない―――

  お前もすでに耳にしているとは思うが・・・私のママーシャの御霊を封じたドラゴンオーブや、スプートニクまでもがどこの小悪党とも判らない者に盗まれてしまったのだ。

 

  そう云えば・・・ここ数年―――奉竜殿に向かわせる足も遠のいてしまっていた・・・

  思えば・・・私は・・・親不孝な子供なのだろうな―――

 

エ:そ・・・そんなことはないよ―――!

  スターシア様は、お前サマをそんな風には思ったりはしない・・・

  それどころか、人一倍お前サマのことを心配してるんだよ―――

 

ヱ:・・・シュターデン―――?

  フ・フ―――余り、人間の世界に首を突っ込みすぎるのはよくないぞ。

 

エ:違う―――違うんだよぉ!

  あの・・・なんて云ったらいいか―――要するにだね?

 

ヱ:もういい・・・もういいんだ―――シュターデン・・・

エ:お前・・・サマぁ―――

 

 

〔何が云いたいのかは、中々見えてはきませんでしたが、旧知の仲はどことなく必死だった―――

その必死さは、落ち込んでいる自分を元気づける・・・励ます意味合いの様にも感じられましたが、

実際のところ深い意味を含んでいたことを、この時のヱリヤは気付くはずもなかったのです。

 

 

閑話休題―――

今日(こんにち)、どちらの勢力にも属せず、永世中立・非暴力主義を徹底して貫いているサライ国では、

この度起こされた出征について、色々な協議がなされていました。〕

 

 

ゴ:(ゴウガシャ=ジグ=ミハエル;サライ国の大司教(マルシェビキコプス)、教皇・ナユタに次ぐ実力・・・発言権を持つ)

  これより―――カルマとパライソの両国間でなされた紛争について、諸卿達の忌憚ない意見を述べてもらいたいと思います。

  何か意見のある方は―――いらっしゃいませんか。

 

枢:では―――・・・この度起こされた紛争に関しましては、パライソ国が単独で起こしたものであり、

  云わばカルマ国につきましては受ける側・・・つまりは、被害を被ったところとも云えます。

 

  それを証拠に、戦死者の数もパライソ国のそれを上回るモノであり、

  何よりパライソ国は、当大陸においても有数である軍事国家―――ヴェルノア公国と提携を結んでいることもあり、

  かの国からの兵器流通がここの処倍増している事実があります。

 

  確かに―――これまでのカルマ国の行いも、非難して然るべきところがあるとは思うのですが、

  こう云った現状を鑑みる限りでは、今までのようにカルマ国のみを非難の対象にするのは、妥当ではないと思うのですが・・・。

 

枢:いやいや―――そうではあるまい。

  この度パライソ国が立ったのは、国民を護るための義戦―――

  それに、カルマ占領下の土地では、人間たちは奴隷並みの扱いであった・・・と、そう聞き及んでおります。

 

  然るに―――この度起こされた戦は、起こされるべくして起こされた・・・と、位置づけるのが妥当ではないか―――と・・・。

 

司:いや―――だとしても、話し合いでは解決できなかったものだろうか。

司:何を莫迦な―――あの暴虐の国が話し合いに応じるなどと!

司:その通り―――それに、もし話し合いに応じたとしても、かの国にのみ条件のいい提案をして、

  事態を悪化させていくのが関の山だとは思いまするが。

 

 

〔その国家の内部でも、この度なされた「第一次カルマ征伐」に関しては賛否両論があったようで・・・

カルマ側寄りの発言をする者や、パライソ側に立って擁護の発言をする者など、様々にしていたようですが―――

 

中でも取り分け話題が集中したのは、それまで大きな戦を好まなかったはずのパライソ国女皇が、今回の事態に踏み切ったその真意を糺(ただ)す為、

サライ国・教皇である、ナユタ=ディーヴァ=シルメリアの権限において、パライソ国に使節を派遣することを、全会一致で採択したのでした。〕

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

あと