≪七節;受け継がれる大志≫
〔そして―――・・・ここで総ての映像は途絶え、元のままの『玉座の間』が、あったのです。
しかし・・・今ここで、アヱカの目の前で映し出されたものとは。
その所々が途切れながらも、史実として知られているところの『カルマ平定戦』であり・・・
最後の映像も、「敵の総大将サウロン斃さる―――」の、その証拠ともなった、
彼の黄金の『力の指輪』を、高々とその槍に掲げた―――「真紅の猛将」の存在だったのです。
そして―――今の、この信じ得難い事を目の当たりにし・・・そこにへたり込むように座るアヱカ・・・・〕
ア:こ―――っ・・・これは―――
それに、今のは一体―――・・・
影:―――・・・驚いたかい、アヱカ・・・
今、君が見たのが真実―――本当にあった出来事なんだ。
ア:これが―――真実?? で・・・では、現在わたくしたちに語り継がれている、あの伝承は――――
影:あれは―――後の世に、丞相が都合のいいように編纂しておいた・・・いわば、創作話(つくりばなし)なんだ。
ア:で―――では・・・この映像でも見た、あのカルマと申す者達は・・・
影:残念ながら・・・今、君が見たものと、現在この世に存在し、君の故国を滅ぼしたる者も・・・・その存在は、全くに於いて同じなんだ・・・。
ア:そう・・・ですか・・・。
では、あなた様は――――もしかすると・・・・
影:――――いかにも・・・もう、君にも判ってしまったように、君達の時代に「仁君」として語り継がれている存在だよ・・・
ア:そう―――だったのですか・・・・
影:君には・・・アヱカには、本当にすまないと思っている。
私自身が生きていた時代で起こしてしまった不祥事を・・・この時代まで持ち込んでしまい、
剰(あまつさ)え、関係のない他人の・・・・アヱカまで巻き込んでしまっていることを―――
がっかりしただろう―――? 「仁君」と讃えられている存在が、こんなにも不甲斐の無いものだったということを―――!!
ア:―――・・・いいえ、わたくしはそうは思っておりません・・・
影:(え―――?) ア・・・ヱカ?
ア:あなた様は―――確かに紛う事のなき「仁君」でございました・・・。
それを、その事を知らずに、つい吐いてしまった暴言の数々・・・・どうか、このわたくしをお許し下さいますよう・・・。
影:そうか―――すまないな・・・・
ア:どうしてすまないなどと・・・・お止めになって下さいまし、女禍様―――
〔そう――― そこでアヱカは、自分の身体を借りている存在と・・・
先程、自身の目で確かめた「仁君」としての存在が、「皇・女禍」であることを識ったのです。〕
女:それでは・・・いいんだね?アヱカ・・・・この私が、君の身体に留まってしまっても・・・
ア:はい・・・・
女:でも、それは言ってしまえば、君の自由を束縛してしまうことにもなるんだよ?
好きな事をすることも・・・ましてや、好きな男(ひと)と一緒になることでさえも―――
それでも・・・構わないのかい??
ア:わたくしは―――これも宿命と思っております・・・。
わたくしの故国テラが、カルマに滅ぼされたのも宿命なれば・・・女禍様が、わたくしを見初めて下されたのもまた宿命・・・・
なればわたくしは、あなた様とこれから運命を共にし、あなた様の時代でなしえられなかった悲願を、成就して差し上げたいと存じます―――!!
女:アヱカ・・・・有り難う―――― 本当に・・・有り難う――――!!
〔そして、ここで改めて、女禍とアヱカは運命共同体としての契約をしたのです。
アヱカは・・・・今後一切の、自らの自由・倖せを放棄し・・・始めて自らの胸中を語ってくれたその存在―――「皇・女禍」と、その運命を共にする事を誓ったのです。〕
To be continued・・・・