≪六節;出師の表≫
〔こうして―――二年の月日は瞬く間に過ぎゆき・・・
予(かね)てよりの密約の通り、パライソ国の女皇は、ある日の朝議の席にて、後世にまで残る大演説―――「出師の表」を公示したのです。〕
ア:これより、朝議を開きたく思いますが、その前に私から一言云っておきたいことがあります。
それは―――私はこの度、カルマを倒すと云う決断をしました。
けれども、私は以前から、一つの国を滅ぼすと云う事は、その国に住む者達の身になって考え、なるべくそうしないようにと努力はしてきたのです。
このことを、よく己の身になって考えてもらいたい・・・国を失った者達の哀しみを―――
確かに、ならばカルマの今までの行為はどう説明するのか、そう思われるでしょうが、
それでも今まで私たちが自ら撃って出て行かなかったのは、彼らと同じような行為に出ていれば、いづれは私たちが彼らのようになってしまう―――
自分たちの欲望のままに身を委ね、他者の持ち物を際限まで欲しがってしまう・・・果たしてそれでいいのでしょうか―――
そんなことが良くないことだと判っている―――だからこそ、私は派兵するのに断固として拒み続けてきたのです。
ですが・・・もう・・・私の我慢も―――憤りも限界にきました。
それと云うのも、私がこれ以上彼らの行為から目を背けていけば、彼らは際限なく私たちの国の民を・・・
云うなれば、私の家族と云って差し支えのない者達を、虐げ・・・蹂躙していくと思うのです。
そのことは許せない・・・赦せようはずもない・・・・
だから、私は、私の矜持に反しようとも、私の家族を手にかけようとする者達を懲らすべく、
今回カルマへの征伐軍を出すと云う動議を提案したいのです。
〔今まで、戦を起こす度に難渋の色を示し、人と人とが争うことを良しとはしなかった国の君主から、果たしてそのことに踏み切るまでにどれだけ苦悩をしてきたか・・・
世間体には、今までとは掌を返したようなものだと云われかねないとはしても、不倶戴天の敵が存在する限りは、略奪や殺戮が繰り返されるのは目に見えていた・・・
相手の国の民にまでその慈悲を投げかけ、憐みを感じようとするのは崇高かもしれないが、
ならば相手側は、こちらのそう云った考えを見透かした上でそう云う行為に及んでいるのならばどうだろう・・・
それではまさに本末転倒―――自分の国の民を蔑(ないがし)ろにし、敵対国の民を尊重するのでは、この国は全くと言っていいほど国としての機能をしていないと云う事になる。
それに―――カルマからの侵攻戦の度ごとに、軍を派遣していたのでは、兵や国諸共に疲弊しやがてはカルマに吸収されていくこととなる・・・
そのことの愚かさに気付かないではない女皇は、ならばこの度は先手を打ち、ガルバディアを統一するための戦を興すべし・・・と、
並みいる諸官の前で熱く語ったのでした。〕
To be continued・・・・