≪四節;西国一の名城を前にして・・・≫
〔それはそうと、ワコウ攻城戦の最前線では―――〕
タ:やはり・・・と、申そうか、列強の一つの都城であっただけのことはあるでござる。
ノ:やれやれ―――だ、な、全く・・・
それがしたちの城を攻め落とすことの難しさは、誰よりもそれがしたち自身が心得ておると云うに・・・
チ:それを―――この度の戦の緒戦に・・・とは、長い間先送りにしておいたツケを払わされている気分にございます。
べ:(いい気なもんだぜ・・・だったらどうやって攻略すんのかねぇ〜)
〔元は、自分たちの都だった城を攻め落とすことの難しさを、この国の出身者である二人の口から紡がれた・・・
―――とは云え、初戦から苦戦してしまうのでは、これから先のことが思いやられることでもあるともし、
様々な攻略の手段を講じてみるのですが、これが思うようにまとまらず、今にして難攻不落の城を見上げ嘆息を漏らしてしまうのです。
そんな時に、本陣からの援軍を伝える伝令が―――〕
伝:報告―――左将軍キリエ様、ご着陣の模様です!
ノ:ほう・・・―――って、なにぃ?!
チ:キ・・・キリエ様が―――
タ:どうして・・・なのでござろうか。
〔思えば―――以前からの西部戦線で、一番功績があったのは、「蒼龍の騎士」という異形の騎士でした。
しかしその蒼龍の正体こそは、やはり以前より自分たちと一緒に闘ってきたキリエという人物だったのです。
しかも、その正体をキリエの直属の上官であり、母である人物から曝け出されたとあれば、
その反応たるや、ノブシゲ達以下の反応を見ても判ろうと云うもの。
云うなれば、そこには一種異様な緊張感が漂い始め―――・・・〕
キ:大尉・驃騎将軍の命により、参陣仕りました―――って、どうされたんですか??皆さん・・・
べ:どーもこーもありゃしねえよ。
強(こわ)いあんたが来ちまったことで、この戦場がひと荒れもふた荒れもしちまうんじゃねぇか・・・って、思っちまってんのさ。
キ:ええ〜〜っ、心外よね・・・それって。
べ:そうは云うけどさ―――実際仕方ねぇんじゃねぇの?
だってよ、あんたとあんたのおっ母さん、あの場で飛んでもねえこと云っちまうもんだからさ。
〔左将軍キリエが前線の陣に着陣したことに伴い、その場にいた将たちは神妙な顔つきになりました。
そのことを訝しんだキリエは、どうしてそんな風にしてしまうのかを尋ねたのです。
以前ならば・・・気軽に誰とでも話しあえたものなのに―――自分の正体がばれてしまった今となっては、そうするしかないのか・・・
すると、ノブシゲ達よりも以前からこの女性のことをよく知る、虎髯の武将は、何やらニヤついた顔でそうなった原因を教えたのです。
そのことについては、誤解させてしまった―――と、申し訳に苦慮する、屈強随一の将がいたのでした。〕
To be continued・・・・