≪五節;欠員アリ≫
〔一方、マディアノ内部でも・・・潜行していた工作部隊が、今の砲撃の音により、この要塞に籠るカルマ軍が反撃に転じたモノと認識し・・・〕
ヒ:(思ったより反撃が早い―――これは愚図愚図していられないわ・・・)
ここは二手に分かれよう―――アタイが率いる大砲の制圧組と・・・もう一つは、裏切りモノがいることを触れまわって。
ユ:いいでしょう―――その役目、私が請け負います。
ヒ:頼むわね・・・ユミエさん。
それと一つ確認しておきたいんだけど―――
〔自分達の工作の遅れが、味方に甚大なまでの被害を及ぼしてしまったものと思い込んだヒヅメは、
急いで拡散波動砲の制圧と、人心操作のための撹乱に力を注いだのです。
しかし―――・・・
実は、その場にはある一名の欠員があったのです。
それも、彼女達・・・潜行工作組が、この要塞に潜入した当初から―――・・・
その疑問を、その欠員が所属している組織―――「禽」の副長である、『鵺』ことユミエに訊いてみると・・・〕
ユ:あの人―――いえ・・・「アレ」は、正統な持ち主と「アレ」自身の判断によって・・・タケル様の下にいるわ。
〔妙なことを云うモノだ・・・云わば、自分達をまとめるリーダー格を、まるで人間ではない様な云い方をするなんて―――
それに―――?
その人には、正統な「所有者」がいて、加えてその人が持っている自己の判断・・・?
謎が謎を呼ぶ―――ユミエの不思議な言い回しのお陰で、ヒヅメは混乱してしまいそうになりました。
けれど・・・今は混乱をしている暇などないことが判っていたため、その疑問は頭の片隅に置いておくことにしたのです。
それにしても―――そう・・・その時の一名の欠員とは、もしかしなくても「禽」のリーダー格であるあの人物・・・
而してその人物は、鉄扉の破壊手段を失ったパライソ軍首脳が控える、陣幕を潜ろうとしていました―――
片や、この要塞攻略戦の総責任者でもある元帥・タケルは、北部総督であるカインと共に、智慧の捻出をしているところでした。〕
タ:うぅむ・・・やはり―――予想した結果に終わってしまったな。
カ:とは云え―――やれるだけのことはやった・・・現在私たちが有している技術では、投石機以上の遠隔からの破壊兵器は存在しないからなぁ・・・。
〔頭の痛いことは、二大要塞攻略の前から判っていたことでした。
それに彼らは、過去の文献によって、カルマが並み外れた・・・いや―――まるで時代にそぐわない技術を擁していることを、知っていたのです。
しかもその技術は、性格は違うながらも・・・パライソ側も有していたのです。
そう―――皇城シャクラディア・・・
今の自分達の学識では、到底説明のつかせようのない高度な技術が皇城にあしらわれていることは、
作匠大夫であるゼシカ=ノーム=ヴェスティアリから報告されていたことで知っていました。
でも、その技術のノウハウの一切を唯一知る女皇アエカは、技術の兵器転用を畏れてか容易に他へは流出させようとはしませんでした。
つまり、ここにきて―――マディアノ攻略は、大きく足踏みするものか・・・と、思われたのですが・・・
ある存在の出現によって、要塞攻略の進行度は格段に早まることとなったのです。〕
To be continued・・・・