≪四節;心理戦≫
ジ:ならば・・・そんなに私の言質(げんち)が信用できないと云うのなら、直接コキュートスと連絡を取ってみれはいいことじゃない。
でも・・・多分その時には、ビューネイが出てこう云うのではないかしら・・・
「おかしなことを云うモノだ・・・最強を誇った我らが、惰弱な人間如きにどうして後(おく)れを取らなければならない。
それに・・・アラケスの護るジュデッカは、まだ陥落してはいないと云うのに―――
まさかべリアス、お前は・・・パライソに寝返ったのでは―――?」
・・・っ、てね。
〔畏るべきは、マエストロの先見の目―――
先ほど彼女が口にしたことと同じことが、緊急を知らせる交信口の向こう側からなされた・・・
自分にはそんなつもりはない・・・とは云え、自分を完全に疑ってかかったかのような口調に、べリアスは堪らず一方的に遮断してしまったのです。
これによって、べリアスの立場は確定―――漏れなく「裏切り者」の烙印を押されてしまうのです。
そんな彼が心配しなければならないのは、寧ろ・・・彼自身の「これから」の身の振り方―――〕
べ:く〜〜くそぅ・・・なんでこんなことに!!
このままでは、オレは永久にコキュートスに帰れねぇじゃねえか!
・・・いや、まだあるぞ―――そうだ・・・マエストロ、貴様の馘を・・・
ジ:あらあら、足らないお頭(つむ)でようやくその結論に辿りついたってわけね。
いいわよ―――私は・・・寧ろそちらのほうが殺(や)り易いしね。
それに・・・あの子たちも迫ってきていることだしw
べ:ほ、ほざけ!! このオレも、痩せても枯れても・・・
ジ:―――ああ、殺(や)る前に一つ云い忘れてたんだけど・・・
〔狡猾な者にも、まだ自身が生き残る策はあったモノと見え・・・
ならば「裏切り」の烙印を、救援に来てくれた黒き宰相から唆(そそのか)されたことにして、ジィルガにその罪の総てを背負わせようとしていたのです。
この自分が―――唆(そそのか)した黒き宰相の馘を、魔皇サウロンの御前に備えれば・・・
しかし、所詮は矮小なる者の策略・・・この直後の、ジィルガの更なる事実の告白にべリアスは―――〕
ジ:実は今回の計画、私のじゃないのよね〜。
だってほら―――私は今まで、女禍ちゃんを失ったことで失意を覚えて、北に造っといた「地下迷宮」で淋しくしてたんですもの・・・。
それにラゼッタも・・・まあ〜あの娘に関しては、この私がある方からの指図により甦らせたまでのこと。
べ:なに? ・・・だとすると―――
ジ:朧げながらも、ようやく何かを掴みかけてきたようね―――
けれど・・・もう手遅れ。
七万年前は、私たちが地団駄を踏む羽目になってしまったけど、今度はお前達の番―――
ああ、それとね・・・魔将の生き残り・・・って、あんたたち二人しかいなかったのよ。
べ:―――なんだと? だが、コキュートスにはビューネイやサウロン様が・・・
ジ:その彼らが―――本当は、一番最初にいなくなっていた・・・のだとしたら?
〔今の今まで信じてきたことが、瓦解し始めた―――・・・
なんと、目の前の女が云うには、七魔将・・・いや―――それどころか、自分達を束ねるサウロンすら、このお話しの始まりからいなかったのだと云う。
では、自分たちが日頃忠誠を誓っている、コキュートスの玉座に座る漆黒の甲冑の中身は何者??
それについ先ほど、魔将の筆頭がいつもの口調で自分にですら反骨の疑いを掛けたばかりだと云うのに・・・
最早べリアスの混乱ぶりは極致となり、目の焦点さえ定まる処ではなかったのです。
しかし―――だとしても、無情にも裁きの刃は彼の下に振り下ろされる結末となるのです。〕
To be continued・・・・