≪七節;真説・ボルティーユ丘陵の闘い≫
〔今に伝わる「ブラッド・フィストの惨劇」とは、当時あった「ボルティーユ丘陵」での戦闘であり、
地面から乱立する岩々が、恰(あたか)も「指」に譬(たと)えられたことから、別名「フィスト・ヒル」とも呼ばれていましたが・・・
ここであった戦闘を境に、いつしかその場所は「ブラット・フィスト」(血塗(ちまみ)れの指先)と呼ばれるようになってしまったのです。
その当時―――まだ将軍の位に就いて間もなく、外敵排除の経験も浅かったヱリヤが、
誤って敵国カルマ領内深くに潜入してしまったことから起こってしまった、不幸な事件・・・
彼女が我に返った時、周囲(まわ)りは総て敵兵―――カルマ兵で埋め尽くされており、それでもヱリヤは徹底的に反抗したのですが・・・
多対一で一番に考慮に入れておかなければならない事は、ペース・スタミナの配分・・・
最初に全力を持って戦局を覆そうと云うのは、判らなくもないのですが―――・・・
それにも勝る物量投資―――人海戦術を使われてしまえばどうだろうか・・・
所詮、そんな時に精神論は通用するはずもなく―――次第に失われていく体力が、限界に近づいてくるに従い・・・
そこでヱリヤは徹底的に叩かれた―――散々に嬲(なぶ)られ、姦(おか)され、弄(いたぶ)られ・・・とても筆舌しがたい経験を、そこでしてしまったのです。
そんな―――絶望の淵に立たされた時・・・
ヱリヤの身体からは、生きとし生ける者総ての生命の灯火を燃やし尽さんとする、「黒焔」が纏わりついていたのです。
それからは想像に難(かた)くなく―――敵であろうが、味方であろうが・・・
ヱリヤの前に蠢く物体は、総てがその対象となった―――
その時の損失・・・敵味方併せて数十万―――
そして、それだけの血は・・・かの地を「血塗(ちまみ)れ」に変えてしまい、当時「シャクラディア帝国」の『皇』であった女禍も、
異例とも云える遺憾の声明文を発表し、遺族たちに謝罪をしたのです。
そして、この時の経験は、ヱリヤ自身にも相当重い負担となり、そんな落ち込む親友を、影なり日向なり励ましたのがエルムだったのです。
つまり・・・違う種族である彼女達が、喧嘩をしてはいてもいつも一緒にいる―――
云わば・・・周囲(まわ)りからしてみれば、「仲が良い」とは、こう云うことにも原因があったのです。
そして―――あの時と同じ状況に追い込まれた時・・・
私達はまた一つ・・・歴史を目撃することとなるのです。〕
To be continued・・・・