≪九節;陥(お)とし穽(あな)≫
兵:ン〜〜――――なんだ? やけに外が騒がしィ・・・・あっ!!や、奴は――――
フ:――――どうしたのだ・・・
兵:はっ――― 白銀の甲冑を纏いし、恐らくギルドの長と思われる者が、単身で―――
フ:来ておる・・・だと?
(フフ・・・)中々に―――退屈をさせぬ輩が・・・おるものよなぁ。(ニィ)
どれ・・・ワレが一槍教授してやろう・・・
誰:お待ちくだされ―――
フ:ナニ―――? なんだ・・・来ておったか、ウォルザ。
ウ:(ウォルザ;もう一人の軍酒祭謀、前述したダインと比肩するほどの狡猾さを持ち合わせる。)
はい・・・。(ニャ)
実は―――上のお方に、
『万が一、敗れるようなことはなかろう・・・が、万が一も、可能性は可能性、努々油断ならぬように・・・』
――――と、言われておりまして・・・そこで、私めを使わされたのです。
フ:ナニ? 大王閣下がそのようなことを―――?
ウ:いえ・・・ビューネイ様でございます。
フ:あやつが―――?!(ち・・・)自分が魔将の筆頭だからとて、いい気になっていやがるな・・・まぁいい―――それで、どうする。
ウ:はい―――実は、あの者・・・生け捕りにされてはいかがなものか――――と・・・
フ:なんと―――では、この“トライデント”『アクター・ネファリウス』で、倒すのをやめよ――――と?
ウ:はい、しかも丁度よいことに、単騎で侵入――――それに・・・“あの者”の所在も、知ってか知らず・・・とか。
フ:“あの者”―――『女禍の魂』の所持者か!!
ふふ―――・・・成る程な、よし、よかろう、それで・・・どのようにするのだ。
ウ:はい―――実は・・・
〔その場にいたのは、もう一人の、この軍(いくさ)に従軍している、軍酒祭謀の・・・ウォルザだったのです。
しかも、恐るべき事に、このウォルザなる者は、単騎侵入してきた婀陀那の胆力を気に入り、討ち取る事よりも、むしろ生け捕る事を念頭においていたのです。
しかも―――婀陀那が、もしかすると『女禍の魂を有する者』=アヱカの事を知っているのでは・・・?と、し。
この魔将の心をぐらつかせたのです。
そして、そのこと―――女禍の魂の所持者を知っている事に、異様なまでの興味を示したフォルネウスは、
ウォルザの提案に乗り、そこで何かの策を授けられたようです。
そして――――〕
婀:ぅおおお―――! どけぇ〜〜―――!退けぇぇ〜〜――――!!
(ど・・・どうじゃ―――これで、かなり追い散らしたはず・・・)
あっ―――あれは!!
フ:フッ――――フフフ・・・中々に大暴れしてくれたな、キサマ・・・
我が陣をこれだけ騒がして、タダで済むと思うなよ・・・・。
婀:(・・・・他の者より、甲冑の造り込みが違う―――よもやこ奴が、この軍を束ねし者か!!)
そこなる者―――カ・ルマの将とお見受けする・・・・
推して、参る――――!!!
フ:ぬかせ―――! とぅりゃあ―――!!
婀:なんのっ―――!!
〔互いに交差させ・・・火花を散らす、剣と三叉の鉾・・・
だが、魔将は含むところがあるので、十合ぐらい打ち合って、逃げ出したのです。〕
婀:ぬっ―――待てい! 逃げるとは卑怯なり!!
フ:(ククク・・・)そうだ―――・・・こっちへ来い・・・・
〔そして、やや開けた広い場所に出る両名――――
でも、ここで、フォルネウス騎乗の馬は、大跳躍をしたのです。
――――が、しかし、逆に婀陀那は・・・〕
グ ラ
婀:あっ―――??!
(な―――・・・? お、堕ち・・・・)
ド ス ン
〔なんと言うことか・・・婀陀那騎乗の馬は、彼女もろとも、一丈(約3m)はあろうかという、深い穴の中に落ちてしまったのです。
こうして・・・いつまで経っても、戦線は膠着したまま・・・一向に崩れる気配のないカ・ルマの陣営に、
早、頭領・婀陀那の武運が尽きた事を悟ったギルドの陣営は、速やかに各方面に散らばって行ったのです。〕
To be continued・・・・