≪四節;慰労の言葉≫
〔それはさておき―――・・・自分が、実に大層な部屋に寝かされている・・・そう自覚したキリエは。〕
キ:(・・・・――――はッ!!)(ガバッ!)
こ・・・ここは??!
ア:やぁ―――・・・気がついたかい、キリエ。
キ:(あ―――・・・っ!!)こ・・・これは主上!!
(はっ!!)こ・・・これはとんだことを――― この、私めの薄汚れた身体で、御寝所を穢してしまう事になろうとは・・・・(そそくさ)
ア:いや・・・構わないよ、そのままで聞いておくれ。
この私やアヱカが、枕を高くしていられるのは、偏えにお前達官が、一生懸命にその職務を全うしてくれているおかげなのだからね・・・
それを咎めていたのなら、こんなところにいる資格もないし――― それに、今に重い罰が下されるよ。
キ:も―――・・・勿体のないお言葉を・・・(ほろり)
ア:それよりも――― 連絡のほうが遅れてしまったね・・・。
もう少し早くに、コみゅか乃亜のどちらかに、ガク州に来た事を話しておくのだったよ・・・
そのお蔭で、お前達はレイ州まで下ってしまったのだろう?
コ:そうですよぅ――― 女禍様がお知らせしてくれないんだから、コみゅたちくたびれもうけしたみゅ―――・・・(ぷぅ)
乃:はんしぇ――してくだちゃい。(ぷりぷり)
キ:こっ―――こら、コみゅ、乃亜・・・
ア:あはは――――いいんだよ、キリエ・・・。
そうだ、お詫びのしるしといってはなんだけども――― こんなので・・・どうかな・・・。
〜ふわぁっ〜
コ:ふみゅ・・・・女禍様・・・暖かい―――
乃:いいにおい―――に、いいきもち・・・
キ:あ―――・・・ぁぁ・・・・・。
ア:(ぅん?!)どうしたんだい―――キリエ・・・。
もしかして、お前もこうしてもらいたいのかな?
キ:は―――― はい。(ぽ♡)
ア:(うふふ・・・)相変わらず、甘えん坊さんだね。
でも―――いいだろう・・・こちらにきなさい・・・・。
キ:ああ―――陛下・・・。
〔いわゆる―――女禍様と、その昔からの官達による、この仕草は・・・端から見ると、母親が子供を抱いている光景に、見えなくもなかったようです。
しかしそれは、女禍様の強い母性愛の顕われであり、実際に先程まで怒っていたコみゅ・乃亜も、
この何者にも勝る、無償の愛により、なだめられたのです。
そして、人心地つき――――〕
キ:そういえば主上―――― 先程馬車で、どこへ出られようとしていたのです?
ア:うん―――? いや、なに・・・単なる領内の見回りだよ。
着任当日から、凄まじいものを見せられたからね・・・。
それで、アヱカ自身が、自発的に領内の見回りを実施すると共に、激励を行う―――・・・と、いったところなのさ。
キ:そうでしたか――― では、不肖のこの私めも、それにご同行させていただきます。
ア:しかし―――お前は、昼夜を問はずの長旅をして――――
キ:いえいえ、このようなことは、気力さえあれば乗り越えられる事です。
平気にございます。
ア:そうか――――でも、あまり無理をしてはならないよ。
キ:はい――― そのお言葉だけ、頂戴しておきます。
〔実に・・・“真”の主従とは斯く在るべきか・・・・。
その『主』は、従者を労わり――― また、その『従者』も、主の想いに応えるべく、務めに勤しむ――――
それは・・・現在ではとても古臭い事のように感じられるけれども、いざ実践してみようものならば大変に難しいもの・・・・
けれども、この主従は、それがあたかも当然であるかの如く、その手本として指し示したのです。〕
ア:ところで――― グノーシス・・・夜ノ街はどうだった?
キ:それは――――
そのこと・・・ここでは少々――――
ア:・・・・何か、あったのか―――
キ:その事も含めて―――――
ア:そうか・・・分かった、ならばそうしよう―――
〔そしてアヱカが、キリエが今まで赴いていた処の、諸事情を聞きだそうとするに及び、
この街に降りかかった、ある不幸が、白日の下に晒される事となったのです。〕
To be continued・・・・