≪二節;代替案≫

 

ア:ところで、すっかりと問題が切り替わってしまったが・・・

  結局、キリエは何が言いたかったのだ?

 

キ:ああ―――そうでした。

実は、以前からガク州を治めていた、州牧に加担をし、同じくして甘い汁を吸っていた者が、いはしなかったか―――と・・・。

 

ア:なるほど、それは十分に考えられる事だな。

  それで―――?

 

キ:はい・・・そこで、以前の所業に目を瞑る変わりに、その贅沢品を高値で買い取らせては―――と、思うのです。

 

ア:・・・・ふっ―――、それはまるで詐欺・・・だな。

キ:主上―――

 

ア:ああ―――悪かった・・・。

  つまり、お前が言うのには、その品々を金銭に替え、そうしたモノを州の財政にし・・・

  土木工事等の“賦役”の『人件費』や、孝行者に出すための『報奨金』に充てては―――と、いうことなのだろう?

 

セ:(な―――なんと??!)

 

キ:は―――はいっ!その通りでございますっ!!

 

 

〔ここで、キリエの献策を聞いたセキは、驚くしかなかったようです。

 

なぜならば、彼女のしたモノは、少し高度なある政策に、似通っていたからなのです。

それは・・・宮廷内にある余分な物品を、豪商達に買い取らせ、そこで得た金銭を、朝廷の財政とし、

新たに課する賦役や報奨金の類に割くという―――『循環法』。

 

 

そして、その法の効果が絶大である事を、セキは知っていた・・・だから驚いたのです。

 

つい先程まで、不審者として門前で足止めを喰らい、しかもアヱカとは主従の契りを交わしていたという、

キリエという女性が、この政策を知っていたということに・・・。〕

 

 

セ:(ふぅむ・・・先ほどまでは、単なる布衣であったかに思えたのだが―――・・・

  この女性、アヱカ様とすでに主従の契りを結んでいる事といい、今の善政の政策にしても、古えに倣うとは・・・

  ふ・・・アヱカ様をただならぬお方として見てきたが・・・これはいよいよもって―――だな。)

 

 

〔先程までは、盗賊たちが統括していた夜ノ街や、果てはギルドとその首領の事に詳しくもある、州公アヱカに疑惑の目を向けていたセキ、

―――が、それは今ではどこへやら、また一転して観る目を変えてしまったようです。

 

 

それからしばらくして―――〕

 

 

ア:ああ―――、すまないが、またここで停めてもらえないだろうか。

 

御:へっ―――? ああ・・・へいへい―――

 

ア:有り難う――― 二人は、ちょっとここで待っていてはくれないかな。

 

キ:は? はあ・・・私なら一向に構いませんが―――・・・

セ:アヱカ―――様?? まさか、あなた様はまた・・・・

 

キ:(“また”??)あの―――どういう事なのですか?それ―――

セ:ああ、いや・・・・それが〜・・・ああっ!

 

 

〔アヱカが、馬車の御者に対し、停車させるよう求めた場所―――

それこそは、初めにガク州城に赴く際に、途中下車した“あの場所”―――・・・

 

そして、またあの時と同じように・・・・いえ、今度は、あの時と同じく在野の布衣ではなく、

新・ガク州公として下り立ったアヱカがいたのです。〕

 

 

ア:ふう―――・・・・・。

 

  <アヱカ・・・見て御覧、この前よりか、開墾が進んでいるよ・・・。

  それにあのあと、すぐに種を植えたんだね、もう芽が吹いている・・・。>

 

 

ア:<そんな―――・・・婀陀那さんが・・・>

女:<もう・・・いい加減に嘆くのはおよし。>

 

ア:<ですが・・・あんなにも良くして下さった方なのに―――>

女:<(ふう・・・ヤレヤレ)あのね、アヱカ―――

  これから私が言うのは、ほんの気休め程度の事かもしれない・・・けれども、少しの間、耳を傾けておくれ。>

 

ア:<――――・・・。>

女:<・・・・いい子だね。

  実は、私も確証は持てないのだけれど、あの婀陀那という人は、まだ生きているのじゃあないかな。>

 

ア:<どうして―――?! どうしてそのようなことが言えるというのです?!>

女:<だって―――・・・キリエは、『敵の手に陥ちた』とは言ったけれど、

『生命を断たれた』とか、『死んでしまった』などとは一言も発してはいないのだよ?>

 

ア:<あっ―――そう言われてみれば・・・>

女:<だから―――まあ、確かにあの街は、カ・ルマからの襲撃に遭い、陥落したかもしれないけれど・・・

  もう少し、考え方を前向きに―――ポジティブに持っていこうよ。>

 

ア:<はい―――・・・申し訳ございませんでした。>

 

 

〔やはり――― と、申しましょうか・・・元から性根の優しいアヱカは、

夜ノ街が陥落し、その街の主に等しかった女頭領・婀陀那が、“敵の手に陥ちた”と聞くのに際し、

またも自分に関わった人間が死んでしまったのでは―――と、悲観にくれていたようなのです。

 

それを―――女禍様が労わるように、少しづつ宥(なだ)め、気も落ち着いたところで、

本来の行動に移るようなのです。〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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