≪第四節;盗賊と姫君≫
〔そして・・・〕
ス:なあ、あんたさん。
ア:はい、なんでございましょう。
ス:あんた・・・・人を疑うっちゅうことをしないんで?
ア:あの・・・それはどうしてでしょうか?
人というものは、生まれながらにして“善”である・・・そう、わたくしは教わりましたが・・・
ス:はぁ〜〜ん・・・成る程ねぇぇ〜〜・・・。
ア:あの、その前に・・・
ス:うぅん?何ですかい?
ア:あなたのお名前・・・なんておっしゃるのです? わたくしはアヱカ・・・と、申す者です。
ス:ふぅ・・・ん、ワシはステラバスター・・・ステラでいいよ。
ア:そうですか・・・ステラさんと、おっしゃるのですね?
本当に・・・見ず知らずのわたくしを・・・なんて御礼を申し上げてよいやら・・・
ス:それよりあんたさん、腹ァすいてないかね?
ア:はい?え・・・えぇ、わたくしは先程ので十分・・・
あ・・・あはは・・・
ス:ふふ・・・体はウソ、言わんねぇ。
どれ、ここで会ったのも多生の縁だ、ワシの行きつけでよけりゃ、案内して差し上げるがね。
ア:ええっ?!よ・・・よろしいのですか? 本当に・・・まぁ、まぁ・・・どうしましょう。
全く知らないお方に、ここまで善くしてもらえるだなんて・・・感謝してもしきれないくらいですわ。
ス:は・・・左様ですか・・・。(はぁ〜〜・・・いや、しかし参ったね、こんなにも純粋なお人が、まだこの世にいるたァ・・・これじゃあ、まるで・・・)
〔こうして、姫君と盗賊は奇妙な成り行きから、この盗賊行きつけの、食べ物を食べる処へ行くまで、ご一緒することとなったのです。
そしてその道中・・・〕
ア:あの・・・ステラさんは、何をしなさっているので?
ス:それよりあんたさん、ここがどういう処かご存知なんで?!
ア:いいえ。
ス:・・・だろうね。
まっ、ここは世に言う野盗や盗賊・・・山賊なんかの類がうろちょろしてる、まぁ・・・いうなれば“悪の巣窟”みたいなものさね。
ア:はぁ・・・野盗や、山賊・・・ですか。
あの、なんなのです?それ・・・。
ス:〜〜―――・・・。
ア:あ・・・あの、どうかなさったのです??
ス:(はぁ〜〜・・・ヤレヤレ、ここまでモノを知らないでおれるもんかね??)
つまりだね、人の物を盗ったり、またそれをするにしても、他人(ひと)様の迷惑を省みない、悪人なんだよ、ここに住んでる大概の者はね。
ア:まぁぁ、そんな・・・。
でも―――・・・
ス:(ぅん??)
ア:でも、きっとステラさんは違いますわね。
わたくしのこの路銀入れ、落としていたのを、ご親切にもわたくしに届けて下さったんですもの・・・。
ス:(ヤレヤレ、どーにも敵わんねぇ・・・)
ところで・・・あんたさんは、どこから来なすったんで??服装身なりからしても、この界隈じゃあ、あまり見かけん処からみたいだが?
ア:わ、わたくしは・・・さある国の王族・・・だった者です。
ス:さある・・・国?(だった??)
ア:はい・・・。
ス:(な、泪??!)
〔ここで彼女達は、互いの素性をよく知ろうと、色々と聞きあいをし、姫君はここがどういうところなのか知りえたようです。
(しかし、目の前の自分より背の低い男が、盗賊・・・ましてや、自分の路銀入れをスッた張本人とは気付かないでいたようです。)
そしてこの盗賊は、今、姫君がお召しになっている衣装などから、彼女がこの夜ノ街近辺の者ではないと判断したようですが・・・
この姫君が、今、自分が置かれている境遇を話す際には、なんと彼女の目からは落涙が・・・
そして・・・・姫君は、泪ながらに語りだしたのです・・・・
何が自分の国に起こったのか、なぜ自分がこんなところにいるのか・・・・を。〕
ア:わたくしの国、テラは小さいながらも、そこそこ繁栄をしておりました・・・。
城の兵士といえども、兵役のない時は農民達と混ざり、田畑・野山で山菜などを収穫しあっていたものです・・・。
ス:ほぉぅ・・・。(成る程、それで・・・人が好すぎるのも、世間を知らずにおれたのも、これで合点がいったわけだ・・・)
ア:ですが、先立って、敵対していた隣国カルマの襲撃にあい、わたくし以下、全員皆殺しの憂き目に遭ったのです・・・。
ステラさんの言うように、他人の物を盗んだりする者達が悪人なら、彼らは一体何者なのでしょう??
罪もない民や、無抵抗な者達までその手にかけ・・・自分達は英雄気取り・・・!!
いうなれば彼の者達こそ、大罪人なのではないでしょうか??!
ス:なぁるほど・・・・ねぇ・・・。 ここに至るまでに、そんなん惨(むご)い目に・・・。
だがね、時の流れは移ろいやすい、常に強者がその頂点に立っているとも限らない。
「朝(あした)には紅顔ありて、夕べには白骨の身となれり」とはこの事だ。
それに、「因果応報」というのもある。
悪い事をして成功してても、いづれその借りが倍になって、その身にふりかえってくる事さね。
ア:まぁ・・・。
ス:うん?どうかしなすったね?
ア:いえ・・・あの―――学の方がおありのようだったので、つい聞き蕩(と)れてしまいまして・・・済みません、失礼な事を申し上げて・・・。
ス:はは、いやぁなに、こいつは昔習っていた、師の受け売りよ、ワシ自らの言葉じゃあねぇ。
ア:うふふ、ご謙遜家でいらっしゃいますのね。
ス:フ・・・・ほれ、つきましたよ。
〔ここでアヱカは、今までの自分が遭った境遇を、他人であるステラバスターに話して聞かせました。
すると・・・意外なことに、このステラバスターなる人物、学識を持ち合わせていたというのです。
その博学さに、目を丸くするアヱカ―――・・・
それよりも、互いに談笑しあいながらも、どうやら目的地に着いたようです。
でも、そこは、先程姫君が食事をしたような店舗ではなく・・・雨ざらしの屋台といったような処だったのです。〕
ア:あの・・・・ここ?・・・・です??
ス:ああ、そうですよ・・・っと、ちょっくらゴメンよ。
さ、何でもあるから、好きなものをおあがんなさい。
ア:(は・・・)そ、それでは・・・・これと、これを。
あ・・・・お、美味しい。
ス:意外・・・でしたかね?
ア:えっ?あ、はい。
お味は少し濃いようですけれど・・・それがまたなんとも・・・
ス:フ・・・っ、そいつはどうも、お口に合って何よりでしたな。
どれ、それじゃあワシも一つ・・・ぅんっ!この煮卵なんざ極上だねぇ。
〔どうやら、味付けはちょっぴり濃いながらも、お腹を空かせた姫君のお口には合ったようで、
するとこの盗賊も、好物の煮物や惣菜を口に入れているようです。
すると・・・どこから来たのか、可愛い双子の姉妹が、こちらの様子を物陰から窺っているようです。〕
ア:あら?どうか・・・したの?こっちへ、来る?
コ:(コみゅ;5歳くらい;この姉妹の姉の方、一見すると人間の子・・・に見えるのだが??)
み゛っ!!?・・・・・・・・みゅぅぅ・・・。
乃:(乃亜;5歳くらい;この姉妹の妹の方、いつも姉の後ろについてきている甘えん坊さん。)
みぅぅぅ・・・。
ア:うふふ、そんなに怖がらなくても、ほら、こっちへいらっしゃい。
コ:みゅ?! ・・・・・。
乃:みぅ。
ア:はい、どうぞ。
コ:みゅ。
み・・・みゅぅ・・・。
乃:みぅ。
ア:あらあら、余程お腹がすいていたのね、この子達ったら。
〔どうやらこの双子の姉妹、相当にお腹が空いていたようで、姫君が与えた食べ物に、夢中になってかじりついているようです。
と、すると・・・・?〕
ア:あ、あら??!こ・・・この子達・・・尻尾??
ス:お気づきになりやしたかい。
ア:えっ??
ス:その子らは「スピリット」、いわゆるところの妖精ですよ。
普段は人様、警戒して懐(なつ)きもしやしないが・・・あんたさんは余程気に入れられたと見える。
ア:はぁ・・・・そうなん・・・ですか。
ス:それも、しおれてたあんたさんじゃあなしに、本当の笑顔を見せてるあんたさんにね。
〔そう・・・この姉妹は、いわゆる人外の者―――
けれどステラは、例えそんな者がこの街にいたとしても、人畜に無害であれば構わないとしていたのです。
それにしても・・・自分が与えた食事に、夢中になって噛り付き―――さらにはその愛くるしい動作に、思わず笑みが・・・
なんと・・・ここ数日の出来事で、久しく忘れていた、本物の・・・・ありのままの笑顔というものを、姫君は取り戻せていた・・・ようでございます。〕
To be continued・・・