≪九節;処断された―――“縄目”≫
〔しかし・・・このとき、アヱカ―――いや、女禍様が下した断は、紛れもなく・・・〕
スラリ―――☆
キ:覚悟は・・・出来ているわね―――
ユ:もう・・・この世に未練など残ってはいない・・・さっさとやるがいい―――
レ;(ふ、副長〜〜―――)(ガクリ)
キ:(・・・潔い、あのときの私とはまるで―――)
では・・・
御免―――!!
ア:<ああ・・・・っ!!>
女:―――・・・。
レ:(副長・・・・)
ユ:(カオリ・・・今すぐ、あなたのところに――――)
シュッ――― シュッ――――
ぶっつっ―――― ぷつっ――――
パラ・・・ ぱらり〜〜
ユ:――――えっ・・・?
レ:――――・・・。
ア:<え・・・あら?>
女:うふふ―――・・・(クスクス)
キ:(キン――☆)・・・以上、処断の方、終わりました、主上。
ア:うん―――ご苦労だった、キリエ・・・。
さて、それでは戻るとしようか・・・
キ:ははっ―――!
ユ:ち・・・ちょっと待って―――!!
これは一体どういう事なの?!
レ:(・・・・えっ?あ、あれ?? わ・・・私の―――まで・・・)
キ:・・・はて?“一体どういう事”とは・・・?
もしかして―――あなた達を縛り於いた、その・・・縄目を模したようなモノの事?
ユ:えぇっ―――?!!
レ:縄目を模した・・・“ようなモノ”??
キ:聴くに―――またこの辺りにて、孝士を縛り於く、不埒なモノノケが横行していると云う・・・
私はそれを切り棄てたまで―――・・・
ユ:わ・・・私たちが“孝士”? どうしてそんな事が言えるの―――?!!
私たちは・・・自分の意志で、州公を襲った・・・なのに、それがどうして“孝士”だと言えるというの!!?
キ:・・・それは―――見解の相違といえるものね・・・
確かに、あなた方のやった事とは、現在のあなた方の“主”の総意ではないかもしれない・・・
ただ―――あなた方の言い分も分かることだから・・・。
レ:それは―――どういう事なのです?
ユ:(この人は・・・・分かっている―――)
それは・・・この人たちが、私たちにとって、厄をなするかもしれない・・・その事を分かっているからよ―――
キ:そう・・・。
でも、今回のあなた方がやらかした事で、どうしても罰を受けたければ・・・
あなた方の主である『典厩』と呼ばれる人物に、須らく今回の事を話し、その上で償うといいじゃない。
〔このとき―――州公アヱカ乗り合いの馬車を襲った“賊”を処断すべく、
キリエは佩剣を抜き、寸分違わずその切っ先を振り下ろしたのですが・・・
なんと、キリエが斬ったのは、二人の“孝士”を縛り於いたその『縄目』・・・
その事に更なる疑念がわき、思わず口を吐いて出た問いかけに・・・
その問いかけに、キリエは自分自身にも言って聞かせるように、その二人に応答(こた)えてやったのです。
身分ある者に対し、害をなそうとした自分たちが・・・どうして“孝士”なのか、そのことを―――・・・
そして、その応答(こた)えを聞き、『禽』の副長=鵺=事ユミエは、さながらにこう思うのでした・・・
もう―――この方々に委ねるしかない・・・
と・・・。
こうして、州公遭難の件は、当の被害者である、ガク州公アヱカがうやむやにしてしまった事で、その収束を見ることとなり、
その後―――馬車は一路、治領であるガク州へと帰っていったのです。〕
To be continued・・・・