≪六節;盗賊の思惑≫
〔それはさておき、一方の左馬亭では・・・・〕
ア:わたくしの国が、カ・ルマの襲撃に遭い、わたくしを残す総ての者が、その歯牙にかけられました・・・。
これは、わたくしを含む王族だけでなく、兵や民までも・・・・ですが、これからお話しすることは、その後の事です・・・。
わたくしは、二人の護衛により、城の脱出口、そして国境近くの洞窟・・・と、その居場所を転々として来たのです。
そして・・・最後の護衛の者が、このわたくしの身代わりとなり、散っていく前に、とても奇妙なことを言っていたのです。
それは・・・「姫様、あなた様は、我らが国だけでなく、このガルバディアにある総ての国家の、最後の希望である・・・」・・・と。
ス:(ナンッ・・・だってぇ??!)
ア:わたくしは・・・・最初は、この事が何かはわからなかったのですが・・・ステラさんにお会いして、非常に多くの事を学びました。
この・・・私のなんでもない笑顔が、多くの人達の安堵の対象になる・・・という事を!!
ス:ふぅんむ・・・。(成る程・・・そうかい・・・・そういう事だったのかい・・・じゃあ、恐らく今はこの人が・・・・)
ア:あの・・・・もし?ステラ・・・さん?
ス:・・・・・・。(だがしかし・・・今は確証がもてない・・・それに、本人が無自覚でいることだし・・・・)
ア:あの・・・・あの・・・どうかされたのです?
ス:・・・・・・。(それに・・・もしかすると、さっきのヤツらが執拗に追いかけていた・・・って言うのも、強(あなが)ち・・・)
ア:ス・テ・ラ・さん??
ス:・・・・・ん?
ぅわッ!ビックリした・・・なんだい・・・脅かすなぃ・・・。
ア:あ・・・・っ、どうも・・・。
でも、どうされたのです?先程から・・・わたくしの話を聞き終えてから、考えに耽(ふけ)っていたようですけれど・・・。
ス:いや、なんでもないんだよ・・・。
それより、ワシはちょいと用ができちまったんでね、下がらさせてもらいやすよ。
なぁに、ここはスラム地区でも、特に荒(すさ)んでるんでね、野盗共もおいそれとは入り込んじゃあきやしないよ。
ア:そうですか・・・それでは、用が済まわれたのでしたら、ここへ帰ってきて下さるのですね?
ス:えっ?!い・・・・いや、ワシは自分の棲み家があるから、帰るならそこへ帰るよ。
ア:あ・・・ッ、そ、そうですか、そうですよね。 ごめんなさい、つまらないことを申し上げて・・・
ス:いや・・・いいんっスよ・・・。(ヤ~~レ、ヤレ・・・こいつぁどうにも敵わんねぇ・・・。)
さぁて・・・・ちょいとひとっ走りするかねぇ・・・。
〔姫は・・・今現在の自分の事の顛末を、自分が理解している上での言葉で綴ってみました。
すると盗賊は、姫君の話してくれた事に、何か心当たりがあるようです。(何なのでしょうか?)
それより、この盗賊・・・・とある処へ行くようです・・・・。
どこへ?
それは、先程、激しいまでの言い合いがあり、そして未だ興奮冷めあがらぬ、あの人物の処へ・・・・〕
ス:ちょ~~いと、ゴメンなすってよ・・・。
盗:ああん?なんだ?おめ・・・・
ス:なぁに、あんたらの同業者よ。 それより、ここの首領、今いるかね?
盗:同業者あぁ??あんまし、みね―ツラだなぁ。
ス:へへっ、まっ、一匹狼なもんでね、こちらにゃあ所属はしとりゃあせんのよ。
盗:はぁぁ~~ン・・・・で?頭領に会いたい・・・って?でも、まぁ・・・止めとけ、止めとけ。
たったいま首領、えっれぇ機嫌悪いんだからさぁ。
ス:・・・・・何かあったんかね?
盗:何かあったどころの話じゃあねぇよ。
全身黒ずくめの、無愛想な連中によ・・・一方的なコト、突きつけられてよ・・・それで頭ァきてんのよ。
ス:(成る程・・・ヤツらが・・・と、なると・・・今ここに来といて正解だったな。)
ンじゃ、中にいるんだね。
盗:お・・・・おいおい、止めときなって、殺されても、文句いえねぇぞ??
ス:ふふ・・・・なぁに・・・・「虎穴に入らずんば、虎児を得ず」だよ。
それに、それしきの事で臆してたんじゃあ、この先が思いやられる・・・。
盗:はぁぁ??な・・・ナニいってんだい、あんた・・・。
ス:フ・・・学が足らんよ、少年、もちっと書を読むこったな。
そんじゃあ・・・・失礼するよ。
〔盗賊、自分に心当たりがあることを、ギルドの頭領に伺いたててみるようですが、
先程の今、この部屋で何があったかを知っていた扉番は、今この中に入れば無用な死体が一つ増えるだけだという危険性を指摘したのです。
ところが―――盗賊・・・なにやら難しい事を云い、この扉番の者を困らせたようですが・・・・
それより、いよいよこれからが正念場です!!〕
To be continued・・・・