≪七章;交換条件≫
〔そして―――大方の予測通り、強行突破を試みるものの、伏兵に次ぐ伏兵に・・・
さらに、遠巻きにされながら、乗っている馬を狙われたギャラハットは―――〕
ギ:(むぅっ―――)やはり・・・敵にはそれなりの備えがあったというわけか。
―――ええいっ!怯むな!! なんとしても突破を図るのだ!!
〔彼は・・・自らの、そして友軍の窮地を救うべく、ただ、がむしゃらにそこを強行突破しようと試みました・・・。
けれど―――・・・彼は、それをしようとも、出来なくなってしまったのです・・・。
なぜならば・・・〕
ギ:ぬぅぉオオオ――――!!
カ:そこまでだ―――!!
ギ:な―――何者だ、貴公は・・・。
カ:(ふふ―――・・・)私も―――なるべくなら、こういう手を使いたくはないのだが・・・
そなたほどの“虎将”を大人しくさせるのには、もはやこの手しか残されていなくてね・・・。
ギ:(な―――に・・・?)
カ:―――連れてきたまえ。
ギ:(あ・・・・ぁあっ!!)
〔彼が、騎乗している馬に、最後の突撃をかけるべく、鞭を入れようとしていた―――
まさにその時―――彼を押しとどめるべき声が・・・その声の主が、あのカインだったのです。
カインは―――ギャラハットをどうしても無傷で手に入れたい・・・
その一念で、捕縛の対象を、手強い彼ではなく、ギャラハットに付き従うようにいた、
彼の副将であり―――養女でもあるヒヅメに絞ったのです。
そして―――こちらのほうも、やや苦労はしたものの、やはりギャラハットに比べれば―――
と、いうこともあったのでしょうか、すくない犠牲で彼女を組み伏せる事に成功をし・・・
今、まさに―――抗っている虎将の前に突き出されたのです。〕
ヒ:ご―――ごめんなさい・・・お養父さん・・・。(ポロポロ)
ギ:ヒ―――ヒヅメ・・・
カ:・・・今―――大人しく我が軍門に下るというのなら、そなたの命は勿論、この娘の・・・まではとらない、
それは約束しよう。
ギ(ぅん―――?)・・・それは、真か―――?!
カ:うむ、天地神明に誓って―――!!
長:は・・・・はぁあ゛あ゛?! カ、カイン殿―――あんたなに考えてんの??
長:そうですとも―――今、この者達の命を、ここで断っておかないことには・・・
カ:ン~~―――・・・まあまあ・・・。
あんたたちには分からない事だろうが・・・私にしてみれば、むしろこの者を手中にすることのほうが、本懐なのだよ。
カ・ルマの国益がどうの―――と、いうことは、この際問題ではない・・・。
ヒ:(・・・えっ―――?)
キ:(この者・・・は―――)
〔このとき―――ヒヅメは、自分が捕縛された事に、ひどく恥じ入っていました。
自分の養父(ちち)の手助けをすべく―――のはずだったのに・・・これでは養父の足を引っ張ってしまうことになる・・・
そのことの悔恨に、泪していたのです。
そして―――彼女の・・・流していた泪の意味を察知した、彼女の養父(やしないおや)、ギャラハットは・・・
振り上げていた剣を力なく下ろし・・・もはや、自分たちの命運が尽きた事を悟ったのです。
―――が・・・しかし、ここでカインは意外な申し出をしたのです。
そのことに、ギャラハットは多少の違和感を覚えたのです。
それはなぜ・・・
それは―――カインの言った『今回は、カ・ルマの領土拡張は、さほど問題ではなく、有能の士を手中にすることが、我が本懐』
だということ・・・。
今回のように、カ・ルマに激しく抵抗した(してきた)者は、例えそれが将来カ・ルマのためになるかもしれないとしても、
須らく断を下してきた―――・・・
それが、今も昔も変わらない、カ・ルマの“恐怖”だと、誰しもが認識していた事だった―――のに・・・
なのに―――だったとしたら、このカインという者は、ナニモノ・・・?
そう・・・ギャラハットと、ヒヅメは思わざるをえなかったのです。〕
To be continued・・・・