≪八節;目覚め≫
主:うぅん―――・・・ふわぁ〜・・・・。
大夢 誰か先づ醒む
平生 我自ら知る
草堂に 春睡足りて
窓外に 日は遅々たり
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ア:――――・・・・。(今の詩は・・・)
主:ふむ―――・・・・・・(うん?)
〜チリン♪ チリン♪〜
ラ:はぁ―――い
主:外にいらっしゃるのは誰かな?
ラ:エェ〜〜ッと・・・州公様が、訪ねてきているんです。
主:(州公―――・・・)どうしてワシを起こしてくれなかったんだ。
ラ:え・・・だってぇ―――州公様がいい・・・って・・・
主:(ほう・・・)そうか―――
〔目覚めのついでに詩篇の一つでも浮かんだのか、起き掛けに読んだ詩歌―――
そのことだけでも、この人物の教養が見て取れるというもの・・・
しかし―――次に彼は、庵の外に他人がいる気配がしたので、童子のラクシュミを呼んでみれば・・・
これまで幾度となく、庵を訪れてきている、件(くだり)の州公様だとは―――・・・
そのことに主は、ラクシュミを叱りもしたのですが、州公様当人が、
自分を起こさないでいい―――と、言ってくれた事に、感じ入ったのか・・・〕
主:(ス―――・・・)これは、州公様・・・(ペコリ)
お尋ねあったとも知らず、失礼のあったこと、何卒お許しいただきたい。
ア:いえ―――こちらこそ、勝手に参上した失礼のほうを、詫びねばならないでしょう。
さぁ・・・面を上げてください―――
主:では・・・お言葉に甘えまして―――(スッ・・・)
ア:≪ああっ―――!! この方は・・・やはり―――!!≫
女:(この者が・・・そういうことだったか―――)
〔身の丈は七尺もあり、肌は棗色をなし―――顔つきは精悍そのもの・・・
ですが、アヱカはこの人物の面持ちを見ただけで、この庵の主・・・ タケル=典厩=シノーラ なる人物が、
何者であるかが察する事が出来たのです。
そう―――彼こそは・・・アヱカが、『夜ノ街』にいた頃、カ・ルマに身柄を拘束されそうになった時・・・
自分の身を挺して救い出してくれた、彼の人物に相違なかった・・・
そして―――庵を訪ねること、五度目にして、意中の人物と会えることが出来たのです。〕
To be continued・・・・