≪九節;己に課せられし使命≫
ア:あ、あの―――大丈夫なのです?
ス:ん?ああ、何の―――大した事はありやせんよ。
それより、あんたさんは、これからやる事がありなさる・・・こんな、ヤセ犬なんかに付きまとっているどころの話じゃないんだよ・・・・。
ア:え・・・?な、何の事です? やる事?
ス:今、分からなくともいずれ分かる事さね。
それに―――あんたさんを掻っ攫うには、ワシの器では小さすぎる。
ア:で、では・・・このわたくしが付いて行きます!!
ス:ダメだ!! そいつは一番やっちゃいけない事だ―――
どうやら、ワシは・・・一度、あんたさんの前から消えたほうが良さそうだ・・・・。
ア:あ・・・ああ・・・。
お、置いて行かないで―――待って下さい―――!
ス:来るな!! ・・・・来ちゃあいけない。
あんたさんは、今、自由になったんだ・・・どこへでも、羽ばたいてお行きなさい。
そして―――屈託のない笑顔を―――世の人々に、見せておあげなさい・・・。
―――それじゃあね・・・。
〔こうして彼の者は、どこへ行くともなく、闇の中に消えていった・・・と、云う事なのです。
それから、暫らくたって・・・彼方より騎馬の音が・・・・〕
婀:ハいっ!どぅ―――どう―――!
ア:あ・・・あなたは!
婀:やぁ―――ご無事でしたか。
・・・に、しても―――なんとも、盗みの手際のよさよ・・・まんまとしてやられたわ。
ア:いいえ・・・あの方は、何も盗らなかった・・・。
それどころか、その身を挺して、このわたくしの身をお護りして下さったのです。
婀:いいえ―――あやつは、とんでもないモノを盗みおった。
それ、すなわち――――姫君、あなた様の心です。
ア:あ・・・は、はいっ。
〔その馬上の人とは、先程―――忘れ物があるから取りに戻る・・・と、云って、他のギルドの連中と離れた、女頭領だったのです。
そして、その女頭領の云う事には、かの盗賊は―――姫君の心を奪い去った―――とは・・・
しかし、姫君も、それを否定することなく・・・とは、まれに見る美談だったようです。〕
To be continued・・・・