≪七節;哭く聖剣≫
〔そして戦端は―――ベルルーイ付近のダブロイ平原にて拓かれ・・・
今回の初戦を先に拓いたのは、“花”のセシル―――
彼女は何より手堅い戦をすることで仲間内にも知られ、
その手並みは、よくよく防衛線などに回されることが多かったのですが・・・
実は何よりも得意としていたのは 速攻 ―――
その中でも追撃戦はお手の物だったのです。
そのことをよく知っていたリリアは、今回の戦はセシルに任せておけば、
まづ敗けを拾うことはないだろう・・・と、判断していたのです。
しかし―――追撃を仕掛けるセシルの前に立ちはだかったのは・・・〕
セ:はっ―――! あれは・・・・!!
ギ:フフフ・・・ワシらが速やかに退かんとするのを、どうして知りえたか―――
そこは訊かずにおこうか・・・
―――が、大事な部下を全員無事撤退させることが、今回ワシに課せられた任。
ゆえに、ここからすぐに退かれるか、あるいは―――・・・
セ:その鎧一式・・・ミルディンさんとギルダスさんのと同じ―――
ギ:ほぉう―――あの二人を知っておったか・・・
ここのところ姿を見ないと思っていたが、そちらのほうに身を寄せていたとはな。
セ:では・・・―――と、いうことは、あなたがギャラハット=シャー=ザンフィル殿・・・
そうは云っても、カ・ルマの悪行を知りながら、何ゆえ加担するのですか・・・
パラディンであるあなたが、判らないはずもありませんでしょう―――!!
ギ:フ・・・なるほど、よく似ておられる―――
あ、いや、これはこちらのこのなのだがな。
そうか―――やはり退かれぬようだな。
〔こちら側が撤退するのを知られ、追撃をかけられたら一溜まりもない―――
そう感じていた今回の智謀の立案者により、よろしく殿(しんがり)を任された彼は、
やはり予測していた通り、フ国軍と渡り合うこととなったのです。
しかも―――その相手は、今回の策謀の立案者であるカインの・・・実の妹であるセシル―――
その彼女を一目見たとき、ギャラハットはすぐにそう感じたのです。
しかし、例えそれが自分の同士の実妹だと云えども、今は敵味方であるためあえて相手をしなくてはならないのです。
それに・・・そういう思いはセシルのほうだとて同じこと―――
同士であるミルディンとギルダスの二人と、同系統の鎧を着付けているこの武人を、
ギャラハットだと知るに至り、あたらなめてかかっては無事ではすまないと思い・・・
そして両雄は火花を散らしあうこととなり―――・・・〕
セ:我が剣イクセリオンに―――! 今こそ我が思いをこめて―――!!
ギ:聖剣ロンバルディアよ―――我が不屈の闘志を糧とするがよい!!
セ:うぅっ・・・く―――さすがは『十聖剣』の中でも、このイクセリオンより上位だとされるロンバルディア・・・
でも―――今ここで敗れるわけにはいかない!!
ギ:―――中々のお手前のようで・・・永らく錆び付いていた我が闘志も、甦ってきそうだよ・・・。
セ:(やはり・・・手強い―――ミルディンさんの云っていたように、
東国最強とまで云われた『天籟騎士団』を束ねていただけのことはあるわ・・・
でも・・・だとしても―――ここは踏ん張らなければ・・・うっっ?!!)
ギ:(ふむう・・・やはり一筋縄ではいかんか―――うん??!)
ピィイイイイ〜〜――――・・・
セ:(け・・・剣が―――共鳴?! いえ、これは・・・哭いている?!!)
ギ:(まるで・・・久方ぶりの再会を、こういった象(かたち)でなしていることを嘆いているかのようだ。)
〔彼らの持ち合わせているそれぞれの剣は、『十聖剣』と呼ばれるモノのうちの一振りであるとされ、
このままだと戦が長引くものと思われていたのですが・・・
いつの頃からか、二本の剣が共鳴しあうようになり、しかもその鳴り様があたかも哭いているが如くであったがため、
両者とも一旦躊躇するしかなかったのです。
そしてギャラハットが機を見計らい、完全撤退を終了させたため、
セシルはベルルーイを難なく奪還することに成功したのです。〕
To be continued・・・・