≪八節;見えてきた・・・男の正体―――≫
〔そして、リリアが立ち上がったところ―――〕
イ:―――リリア・・・そこまでです。
リ:あ・・・イセリア―――
イ:この度のご無礼、まことに恐縮でございました―――
“清廉の騎士”タケル=典厩=シノーラ殿。
リ:・・・ええっ?! こっ―――この人が・・・“清廉の騎士”・・・?
セ:あらら〜・・・そんなことも知らずに決闘を申し込んだの?
すみません―――先生・・・この子も悪気があって・・・
タ:セシル殿―――やはりそなたのお知り合いでしたか。
いや―――なに、ワシのほうこそ、なまじ腕が鈍っていないものかと思っていましたところ、
よい稽古台がいてくれて助かりました。
リ:私が・・・稽古台? そんなつもりは―――・・・
イ:リリア―――もうよろしいのよ・・・
それにしても、婀陀那様とのご婚約、おめでとうございます。
タ:ああ・・・いえ―――そのことに関しましては、身に余る光栄にございまする。
実を云いますと、今から主上のところにそのことの奏上を・・・と、していたところだったのですが―――
さても、公主様にいたりましては、このような図体のでかいばかりの能無しを婿に向かいいれるなど・・・
それがフ国のためであるという“政略”の名の下とあっては、仕方のないところだったのでしょうか・・・。
〔リリアには―――もう、立ち向かっていく闘志というものが失せていました。
佩剣を抜いてかかっていく自分を―――まるで武術の稽古でもしているかの如くにあしらう男・・・
この男は強い―――自分と同じく、武器を使わせたなら、今以上の実力を発揮するだろう・・・
そんなリリアが、棒立ちになったところへ駆けつけ、中止を求めた声の主こそ、
リリアの仲間であるイセリアなのでした。
しかも、イセリアの口からは仰天の事実―――この男こそ“清廉の騎士”であるということを・・・
道理で敵わない筈―――この男こそは、木偶の坊などではなく、最強の剣士の称号を持つ者・・・
自分ごときが逆立ちしたところで、敵う筈もなかったのだ―――
それに・・・無礼一方を働いた自分に対しても寛大な心遣い―――
仕方がないか・・・こんな人になら、婀陀那様を盗られても―――
リリアは・・・もう、悔しくなんかはありませんでした。
けれども、こんな自分を退けたとしても、威意高々に振舞うでもなく、
逆に寛大な態度で応じてくれたことで、
心から祝福は出来ないものの、二人の仲が永遠に続くことを、願いもしたのでした。〕
To be continued・・・・