≪七節;驚かされる女皇の生態≫
〔けれども、驚かされることは、追々(おいおい)にしてあるようで―――・・・
早速、葵と茜が、パラ・イソ女皇の親衛隊として機能し始めた、ある日の出来事・・・〕
葵:―――ちょっと・・・茜、いた?!!
茜:いや・・・いないわ―――どこに行かれてしまったんだろう・・・
〔そのある日の早朝より、狼狽してしまう二人・・・
本国では実に優秀で、公主様の側を付かず離れず―――
まるで“番犬”の如きだと思われていた二人が―――・・・
一体どうしたというのでしょうか。
それが、実は―――・・・〕
葵:あぁ・・・っ! お役目を授かってから、日にちも経たないうちに・・・こんな失態を晒してしまうとは―――!!
茜:これでは―――公主様に合わせる顔がないわ・・・!!
〔彼女たち二人が、狼狽するに足る事実―――
それは、親衛隊に就任してまもなく、常に身辺を警護しておかなければならないはずの対象を―――
この国の女皇陛下が、ご自分の部屋に いない という事実―――・・・
“油断”―――職務を軽んじたつもりもないけれど・・・
やはり、ココロの片隅に、どこかそう云った気持ちが芽生えていたのではないか・・・
そう思い、早朝であるにも係わらず、城内をくまなく捜索していたのです。
しかし―――依然として女皇の行方は知れず、ここに進退の窮まった親衛隊の二人がいたのですが・・・
棄てる神あらば拾う神ありき―――・・・
絶望に打ちひしがれている二人を見かけたのは―――・・・〕
官:―――あの・・・二人とも、どうされたんですか?
葵:・・・え? あなたは・・・・?
官:私は―――
ゼ:この国の=将作大匠=である、ゼシカ=ノーム=ヴェスティアリです。
それにしても・・・こんな朝早くから、血相を変えて―――どうかなされたんですか?
葵:えっっ・・・あぁ・・・じ、実は―――
私たちが護らなければならない女皇陛下が・・・
茜:私たちがお部屋を伺うよりも前に、いなくなられて―――・・・
ゼ:えっ?! ああ〜〜そのこと―――・・・
そうか・・・そういえば、あなたたち、この国へ来るのは初めてだものね・・・
だからあの方のこと、知らないのも無理はないか―――
葵:はぁ? それは・・・どういう―――・・・
〔今朝も、早朝から、シャクラディア城に備え付けられている、あらゆるシステムのメンテナンスに出ていたゼシカが、
この二人の苦慮しているのを見て、どうしたのか―――と、訊ねたところ、
女皇であるアヱカが、早朝より日課としていることを知る由もなかったようで、
ゼシカが代わって二人に教えてやり、ある場所へと葵と茜を案内してあげたのです。
そう・・・この城の、裏庭に存在する、あの場所へ―――〕