≪四節;呼び戻し≫
〔このまま―――≪楯≫のエルムと同様に、こちら側になびいてくれるものだと思っていたのに、
なんとも凄まじい啖呵を切って、≪鑓≫であるヱリヤはゾハル山へと戻ってしまったのです。
その様子を、呆気に取られながら見ていたパライソ首脳陣と、エルムは―――・・・〕
公:ヱリヤ様を―――
婀:怒らせてしまった・・・と、云うのか―――?
タ:そのようだな、こちらとしては不手際をした覚えなどないのだが・・・
エ:―――いや、相も変わらず・・・と、云ったところだよ。
聞き分けのないガキみたいに意地張っちゃって―――
タ:・・・エルム様、お気持ちとしては判らなくもないのですが、今はエリア様もおられぬとあっては、
そのようなことを云われるのは、いかが―――なものか・・・と。
エ:そうは云うけどねぇ〜〜―――あんたたちが、折角私たちのために宴会の席を用意してくれたんだろう。
―――だったらさ・・・ちょいと待ってな、あいつが嫌がったって、首に縄をかけてでも連れ戻してやるよ。
タ:(なんなのだ・・・今の違和感は―――あの方々は、元々仲が悪いというのでは・・・)
あ・・・陛下―――申し訳ございません。
どうやらこちらの不手際によりまして、生憎な結果と―――・・・
ア:いや―――これでいいんだよ、タケル・・・。
それに、あの二人の調子を見ていると、思い出すこともままにある・・・
〔その方は―――このような事態に陥ったとしても、どこか平然としたままでした。
それは、今回迎え入れることが出来なかった二人のうちの一人が、怒って自分の住む場所に戻った・・・と、しても、
『またそのうち戻ってくるよ―――』と、でも云うように、今回のあり方を捉えていたのです。
それにこうも述べられたのです、『あの二人の調子を見ていると―――』・・・
“あの調子”―――・・・?
下手をすれば、そこで流血の惨事が繰り広げられても可笑しくはなかった、それほどまでの言葉の応酬が・・・?
確かに、あのやり取り―――タケルも少なからずの違和を感じ取っていたのでした。
“仲が悪い”―――と、云うのは、あの両者の態度を見ても判ったこと・・・
でも、流血沙汰まで持ち込まなかったのは、両者とも気心というものが知れていたから・・・?!
けれども、あんなものを自分たちの前で披露して、何の得があるとでも―――・・・?
タケルたち、現代を生くる者達には、知ろうはずもない―――・・・
『帝國の双璧』の、その真価を―――・・・
<伝説><口伝>の類は、“昔そうではなかったか―――”・・・を基に、人の口や書物にて後世に伝えたこと。
それは同時に、過去にあった栄光の歴史を風化させぬよう、数倍も事実を膨らませて伝えようとした嫌いは否めなくはないけれども、
ある事実として―――『帝國の双璧』たちにまつわる伝説に限っては、これから明らかとなってくるのです。〕
To be continued・・・・