≪五節;催し前の珍事≫

 

 

〔それはそれとして―――ヱリヤがこの度の緒戦で得た戦功の証しを見せてみたところ・・・〕

 

 

婀:なんと・・・これは―――平寇将軍の印綬では・・・。

  それを此度はそなた一人が―――・・・

ヱ:フフフ・・・そのハズ―――だったのだが・・・な。

 

皇:―――そう云えば・・・もう一方お呼びになっていたハズでは・・・

ア:―――そう、だったね・・・。

 

ヱ:フフ―――ヤツのことに関しては、そのうちひょっこりと顔を出すでしょう。

  それに、シュターデンも今では立派な将軍殿なのだ、あたら恥をかく真似まではしますまいよ。

 

ア:(皮肉を云っているのか―――)ヤレヤレ―――・・・

 

 

〔そう―――≪鑓≫のヱリヤがいるのならば、ここには同じくして召致に応じた≪楯≫のエルムもいなくてはならない・・・

それが、今時分どこへ行ってしまったのか―――それさえも定かではないまま、その日も陽が落ち、

シャクラディア城内では≪鑓≫であるヱリヤを歓迎するための催しが開かれたのです。

 

 

―――ところが・・・その前にちょっとばかりトラブルが・・・

 

この―――今回の催しに出されるはずの料理や、食後に出されるデザートの類が、出品を前に数が足りなくなった―――・・・と、云うのです。

この原因究明や、数の足りなくなった品目を補填するのに時間が割かれ、開催の時間が夕刻にズレ込んだ―――ようなのですが・・・

―――ともあれ、それ以後は何事もなく、催しは開かれたのです。〕

 

 

タ:―――ナニ?作り上げた最中から?

シ:はい―――急に数が足りなくなりまして・・・

レ:それで、間に合わせの一品をお作りしたのですが〜―――・・・

ナ:それを、今度はこのバカがつまみ食いするもんだから―――

  まさか、さっきのもお前じゃないだろな?!

マ:ち〜が〜う〜ってぇ〜〜―――! あたしだって、慣れないことで悪戦苦闘してて・・・それでお腹が空いちゃって―――つい・・・

 

ユ:こんなときに疑われるのは、平生(へいぜい)が往生―――ってコトね。

  それに、あんたには一度前科が付いて回ってることだし・・・

マ:ほえ? ナニさ―――前科・・・って。

 

ユ:忘れた―――とは云わさないわよ、『第十章』の扉画・・・

マ:そんなぁ〜〜―――昔のコトを今穿(ほじく)り返さなくってモォ〜〜

 

ユ:・・・食べ物の恨みってのはね―――結構後引くものなのよ・・・

 

タ:コラコラ―――仲間内で争うのはよしなさい。

  それに、まあ何とか間に合ったのだから、それでよしとしようではないか―――

 

 

〔会場の片隅で、タケルと=禽=―――それも、今回の催しをする際に料膳番を担当したシズネとレイカの両名から、

今回のコトの発端が語られたのでした。

 

自分たちがせっかく作り上げた膳の数々を、その端(はじ)からつまみ食いする存在がどうやらいるのだという―――・・・

 

けれども、時間が差し迫ってきていることもあり、今回の犯人探しはまた後日に回すことにし、

急いでの埋め合わせをするために、手の空いた仲間に手伝ってもらっていたところ、

今度は仲間のマキが、お腹が空いていたことを理由につまみ食いしていたところを、運悪く現場を取り押さえられてしまったのです。

 

そんなこんなで、お取調べ―――と、なっているのですが・・・

皮肉にも嫌疑をかけられたマキは、=禽=たちの主であるタケルによって弁護されていたのです。

それというのも、どうやらマキはタケルの別命でどこかへ飛んでいたのだから、

最初の件に関しては、マキが容疑者ではないことはタケルには判っていたようなのです。

 

―――とは云っても・・・〕

 

 

タ:・・・それにしても―――もう一人のお客人、“ヴァルドノフスクの城主”であるエルム様はどこへ行かれたのか・・・

  未だに手がかりは―――

ユ:―――はい、つかめておりません・・・まるで雲を掴(つか)むかのようです。

  あなたたちも―――よくそんな存在を捉えることが出来たわね。

ナ:―――とは云ってもなぁ〜見つけたのはルリなんだし。

 

ユ:―――そうだったの?

マ:ウン〜♪ でもさぁ―――あたしたちが見つけようとしていたの、まさかエルムちゃんだった・・・とは思わなかったんだにょ。♪

 

ユ:なにそれ―――あんた知ってたの?

マ:う〜ん・・・知ってたの―――って云うよりか、忘れてたの。

  でもさぁ〜あの一本だけ ぴょ〜ん て伸びた触覚のような髪の毛が、たまらなくキュートでさぁ〜♪

 

シ:・・・えっ?ちょっと待って―――なにそれ、“一本だけ ぴょ〜ん て伸びた触覚のような髪の毛”・・・って―――

レ:・・・ねェマキ?ちょっとその人の特徴―――もっとわかりやすく説明できない?

 

マ:え〜っ? だからさぁ―――(スラスラ〜)画で描くとこんな感じ・・・

  前髪のさぁ〜ここからこういう風に、ぴょ〜んと伸びてて―――

 

レ:こっ―――この特徴〜・・・そういうことだったんデスメタル・・・

  つまりはこのアホ毛が、真犯人だったわけデスメタルね―――#

 

 

〔今回の主賓の一人であるヱリヤは、どうにか機嫌を直して再度現れてくれた―――・・・

のは好かったのですが、同じく召致したはずのエルムが今度はいなくなってしまっていたのです。

 

そこで、タケルはユミエとマキの二人にエルム捜索を依頼し、

その中途報告をするために一端集まり・・・そこでついマキの手が食事の膳に伸びてしまっていた―――

その現場を押さえられてしまい、やってもいない“自分より事前のつまみ食い”まで被ろうとしたとき、

ひょんなことから判ってしまった、もう一人の主賓の特徴と“つまみ食い”の真犯人の特徴―――

 

そう・・・つまりは、マキの証言によって、その人物がどこにいて、またその時分になにをしていたか―――知れてしまったのです。〕

 

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

 

 

あと