≪三節;暗黒の本体≫

 

 

〔―――ともあれ、パライソに対しての今後の方策も定まり、散会をしようとしたところ・・・

黒き丞相を呼び止めるビューネイの姿が・・・

 

先ほどのような発言が、これからもないとは限らない―――そう思った魔将の筆頭からの警告が与えられるもの・・・

その場にいた他の魔将の目には、そう映っていたに違いはありませんでしたでしょう。

 

しかしこの二人こそは―――・・・〕

 

 

ビ:マエストロ―――今回ばかりはさすがに冷や汗が背中を伝いましたよ・・・

  それに、あのようなことを公言なさらなくとも―――

ジ:・・・判ってるわよぅ―――けど、ムカついたんだもん・・・

  やつらの一人や二人、いいってコトじゃない―――

 

ビ:そういうわけには―――創主様・・・

シ:コラ―――あんましうちの子をいぢめてんじゃないよ・・・お前は。

 

ジ:・・・ですが―――お姉さま・・・

シ:もうチョイの辛抱だから―――ヤツらが余程の油断をしてくれない限りは、ヤツらの本体は現れてはきやしない・・・

  <アウゴエイデス>(暗黒体)と呼ばれるイデア(意識体)が・・・ね。

 

 

〔あの場にいた他の魔将たちは、不適切な発言をした事を咎めるような厳しい勧告が、

大王と魔将の筆頭の二人から黒き丞相へ―――と、なされるものと思っていました。

 

けれども疑うなかれ・・・この二人は“同志”―――

それも、世をカルマ一色に塗り替えんとするこの国のそれなどではなく、

この国深くに潜り込み、あわよくば転覆させることを第一の目的とした“同志”―――

 

しかしそのことは、表面上からでもそうであると読み取れるものではなく、

他の者達からしてみてもやはり自分たちと同じように、この大陸を漆黒一色に塗り替えんとする“同志”であるように見えていたのです。

 

それに、こちらのほうの計画も徐々に進みつつ―――であるかのように、彼ら“同志”を束ねる総責任を担っている人物から、

今まで及びもしなかったような一言が紡がれだしたのです。

 

それこそが―――・・・<アウゴエイデス>(暗黒体)・・・

実はこれこそが彼ら・・・魔将たちの正体/本体とも云えるものであり、

別の言葉を借りるならば“暗黒のイデア”であり、これを破壊しないことには延々と再生・再構築がなされていき、

望むべくもない消耗戦に陥っていくことでもあったのです。

 

そのことを・・・シホは―――いえ、この宇宙唯一の“総てを知りし者”であり、また“死せる賢者”<リッチー>でもあったガラティアは、

彼らのこの特性にいち早く気付いていました。

けれども、気付いてはいたけれども・・・それを妹たちに教えてやることは叶わなかった―――

 

ガラティアがそのことを解明した100万年もの昔―――彼女が身を置いていたのは、

自己幽閉先である<空間の澱み>と称された『次元の狭間』であり・・・

そこでは、自らのレゾンデートル(存在意義)を紡ぐことで精一杯だった―――・・・

かつては『裁きの代行者』であるエクスキューショナーの長であり、宇宙開闢のエナジーに匹敵するアーティファクト≪ユニバース≫を携える彼女であっても・・・

総てを呑み込まんとする空間においては、そうすることが精一杯だったのです。

 

 

―――ともあれ、斯くもガラティアはこの世に復活を遂げ、この天体が現在どのような状況下に置かれているかを瞬時にして察知し、

自らの行動理念に従って行動を開始し始めていたのです。〕