≪八節;見えてきた真実≫

 

 

〔それはそうと―――今回やるべきことを終えたアベルは・・・〕

 

 

ア:さぁ―――て・・・と、これで一応お師匠から云われてきたことは済ませたし・・・オレもそろそろ帰らなきゃ。

女:アベル・・・すまなかったね、私が侮りさえしなければこんなことには・・・

 

ア:いや、そうは云うけどオレも女禍さんに会いたかったのさ。

  オレを・・・アフガンの砂漠でキャンプを張っていたPLOの一部隊―――

  そこを業火の海に沈めようとした米から救ってくれた人を・・・

 

  それに、この美しく素晴らしい世界をオレに知らせてくれた恩人を、見捨ててしまう・・・というのもどうかと思うけどね。

 

ブ:うん? 今―――PLOだと?! それに米・・・そうか、そういうことか―――。

  もしかすると、女禍・・・あなたがかの国を滅ぼした要因が―――

 

女:ウン・・・まあそれも一つにはあったんだけどね・・・。

  けども―――あのときには私もそこまでするつもりはなかった・・・

  それが・・・あの国に蓄えられていた 核 に激しく憤ってしまってね・・・

  恥ずかしい限りさ、姉さんたちならあんな風にはしないのだろうにね。

 

 

〔アベルは、自分の師より帯びていた使命を果たし終えると、ゼニスに帰る仕度をしていたのですが・・・

ふとしたことでアベルの出身を知ってしまったブリジットは驚きもしたのです。

 

“PLO”―――またそのテロ組織を壊滅させるために派遣された“米軍特殊部隊”・・・

その無慈悲のなせる業に、“懲罰”を執行しようとした裁き人が眼にした“不徳なる物体”―――

そのために人格が失われてしまい、“禍を引き起こす者”へと転化してその国を滅ぼした―――

 

それが原因―――・・・

 

そして―――ブリジットたちはその原因の究明をするために、“ある会”に属していた・・・

 

やはり“火のないところに煙は立たぬ”―――ではあったけれども、今こうしてその火元が判ったのです。

 

あの国は滅んで当然―――むしろそれだけの不遜なことをやらかしてしまったのだ・・・

しかしそうであったとしても、自分の盟友はそんな者達にでさえも慈悲を・・・情けをかけようとしている。

 

本当に悪いのは自分たちのほうなのに―――・・・

 

ブリジットは、そんな人の良い盟友を前に、下手な思いやりは相手を増長させるだけだ―――と、説こうとするのですが・・・

今の女禍の発言を聞いたアベルは―――・・・〕

 

 

ア:女禍さん―――確かに自分自身を責めるというのは、自身の存在を善き方向へと導く行動だと思われるけれども、

  それをオレは賢いとは思わない・・・。

 

  第一彼らは、自分たちを省みない行動を常にとり、女禍さんを追々にして怒らせてしまったのだから・・・

 

  それから―――彼らの信ずる聖典の中にもあるように、“正しき、その一人の為に我は滅ぼさじ”・・・と、あるけれど、

  事実としてソドムとゴモラは、その一人もいなかったがためにヤコブの天の火によって滅ぼされている―――

 

女:―――だけど! ・・・あのときの私の他愛のない怒りによって、一体どれほどの命が失われたか・・・知っているのか?

  そんなものは、単なるものの数なんかじゃない―――尊い命の数を奪ってしまったんだ!!

 

 

〔済んでしまったコトの経緯を、自分の最も反省すべき点と置き換えてしまう女禍に、

アベルは自分の信教ではない、いわばブリジットやカレンたちが信仰している宗教の聖典を引用して慰めようとしたのです。

 

けれども・・・彼方は云う―――その国が滅んだ際に亡(うしな)われてしまった数億という数は、

タダ単なる数値だけの問題ではない―――と・・・

尊い、生命の個数である他のものではない―――と・・・

 

それこそは“命の等価”―――何物にも代え難きもの・・・で、ある―――と・・・〕

 

 

 

 

 

To be continued・・・・