≪五節;ヱニグマ・・・畏るべきその本性―――≫

 

 

〔“女性”―――そこにいたのは、紛れもなく“女性”・・・

それも、危険な香り漂う―――黒き衣の良く似合う・・・“女性”―――

 

そして当時―――宇宙で最も危険であるともされた“女性”・・・

 

ブラックウィドウ首領

純粋な悪意を持つ誰でもない者

              

 

その存在と、知ってか知らずか―――アベルは・・・〕

 

 

ア:ここからの眺めが絶景なんですよね―――ヴェネチアは・・・

  旨いお茶と麗しの女性・・・今のこのひと時は、この星のどの男性よりも優越を感じますよ。

 

 

〔・・・なぜ―――この者は、わたくしの眸を見ようとはしない・・・

口では、こんなにもわたくしのコトを讃えるかのようなモノを紡いでおきながら―――

なぜ・・・総ての異性を虜に出来る、このわたくしの眸を見ようとはしない―――・・・

 

ヱニグマは、いつも自分が常套として使う手段を講じて、アベルに堕落へと誘(いざな)う術を仕掛けたのですが、

それをアベルは―――・・・〕

 

 

ア:・・・どうしてオレがあなたの眸を見ないか―――って?

  そりゃ当然でしょう・・・あなたのような妖艶な女性の眸を、一瞬でも見てはならない・・・そう師匠に教わっていますから。

 

ヱ:―――・・・。

 

ア:―――おや、思っていたより驚きませんね。

  逆にそちらが新鮮味があっていい・・・。

  それと同時に―――あなたが女禍さんの頭痛の種だと、ようやく確信が持てましたよ。

 

ヱ:ウフフフ―――・・・つまり、わたくしが何者であるか・・・など、すでに知りおきながらあえてわたくしのお誘いに乗じた・・・と。

  素晴らしいわ―――こうも胸がときめいたのはいつ以来のことでしょう。

  それとともに、今のこの瞬間からあなたがとても欲しくなりました。

 

  いかがです―――このわたくしと・・・

 

ア:それは出来ない相談だね―――何よりオレにはすでに心に決めている女性がいる・・・

 

ヱ:あら、それは残念―――でも・・・ウフフ・・・このわたくしに逆らうことなんて出来はしませんよ。

 

                     

 

ア:うん―――?!

 

ヱ:ウフフフ――――このわたくしが、誘惑<テンプテーション>しか扱えない愚か者に見えまして。

  アレはほんの導入・・・本来、強力に過ぎるこのわたくしの真の力を真(ま)に受けても、壊れにくくなるよう全身の感覚を麻痺させるもの・・・

  さあ・・・お覚悟候(そうら)え―――今・・・あなたはわたくしのモノとなる・・・

 

 

〔女は―――しかし、自分の正体が見破られても身動(みじろ)ぎ一つしませんでした。

それでも女は、そんなこととはお構いなしに、自らの持つ強力な・・・とても強力なチカラを放出し始めたのです。

 

その チカラ は、女が、その存在を紡ぎ始めた頃より、すでに見につけていたもの―――・・・

その大意を―――

 

終わることの莫き果てしなく続く地獄

インファナル  アフェア

 

それこそは―――チカラの奔流・・・

まさしく、傍らに人無きが若き様は、激流に揉まれる一葉の木の葉にも似ていた・・・

例えそれが、グランドマスター級のハイディスクリプト(高弟)であったとしても、所詮はディスクリプト(弟子)程度如きでは、

全くと云っていいほどお話しにならなかった―――・・・

 

アベルは、全身に激痛が迸(ほとばし)る中―――傾想している異性の名を口ずさみながら、強大なチカラの流れの中に呑まれた・・・

 

高らかなる―――まるで勝利を確信し、蒼く美しき天体を己が手中にしたかのような・・・

女の哄笑を耳に遺して―――・・・〕

 

 

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

 

あと