≪六節;サウロン立つ≫
〔それはそれとして―――カレンとブリジットが新たなる種族になり変った頃。
やはりシェルタープラントに襲撃を仕掛けてくる、ウィドウたちの魔の手は緩められることがありませんでした。
そこで、女禍は新たな手立てとして、点在としていたシェルタープラントを、この際ひとつの集落にまとめる コロニープラン を立ち上げ、
それを実行に移そうとしていたところ―――・・・〕
女:さあ急いで―――彼らに見つかる前に!
老:ああ・・・私はもうダメだよ―――あんたたちだけでも逃げ延びておくれ。
若:ダメだ!うちらの指導者が諦めていないんだ、オレ達も諦めずに生きよう!
子:ケホン!ケホン―――! 苦しいよう〜!もうマスクを取りたいよう〜〜!
親:何を云っているんだい―――これをしなけりゃ、すぐに肺が腐って生きてられないんだよ・・・
〔ブラックウィドウの魔人たちが、いつ襲ってくるか判らない―――そんな恐怖に慄(おのの)きながらも、移動をする生き残った人間たち。
しかし、そこでも・・・今まで自分たちが暮らしていた環境とは思えないほど、様変わりをした地球―――
放射能の嵐が吹き荒(すさ)び、未だもって黒い原子雲が立ち込め空を覆い、自然の陽光が拝めない・・・
しかも、河の水や湖の水・・・果ては海岸線まで後退してしまい、元の地形が分からなくなるまで惑星の形は変化していたのです。
そして、皮肉にも―――〕
魔:ぬぅふあっはは―――見ぃ〜つぅ〜けぇ〜たぁ〜ぞぉお〜!
女:あっ―――お前たち、何をする! やめろ・・・やめるんだ!!
魔:やめろと云われてもぉ〜〜♪ ぶぅわかめえ―――キサマは虜となって、ヱニグマ様の慰み者となれぇい!
〔あるシェルタープラントから、集落となっている コロニー に移ろうとしていた時、
タイミングの悪いことにウィドウたちに見つかってしまい、蹂躙されそうになったのです。
しかし―――この移動は女禍の指導の下に行われており、彼女の的確な指示の下、弱者を護る陣形を取ろうとするのですが・・・
さらには―――〕
誰:―――やめておけ、お前たちではその者に勝てる見込みなどない・・・
女:あっ―――アベル・・・? ・・・いや、違う―――アベルはヱニグマの手にかかって、もうこの世にはいないはず・・・
―――だとしたらお前は?!
サ:(サウロン=カルマ=アドラレメク;女禍の愛した人間、アベルから分かたれた邪悪なる存在・・・“本篇”での ラスボス 。)
フフ―――・・・吾の名は、サウロン=カルマ=アドラレメク―――
女禍よ、お前が愛した男の、もう一つの姿だ―――
女:・・・なにを世迷いごとを―――確かに私は、アベルのことが好きだった・・・愛していた・・・
だが、それは彼に限ったことであって、アベルの贋者であるお前などに―――
サ:フ・・・ッ、ではこれはなにかな―――?
女:あ・・・っ―――それは??!
サ:フフフ・・・お察しの通りだ―――いくらお前が吾のことを否定したくとも、この身体はお前が愛したアベルそのものなのだ!!
〔サウロン―――と、云う、アベルのもう一つの姿に、女禍は動揺してしまいました・・・
“純粋なる悪意”であるヱニグマに囚われ、新たに、悪意に従順になるよう創りかえられてしまった存在・・・
肌と肌との付き合いが多かった者同士だからこそ、判り合えていることがある―――・・・
女禍がそこで見たサウロンの姿は、かつての想い人そのもの・・・
けれども、何かが違っていた―――そう・・・決定的な 何か が・・・
それゆえに悄然としてしまった女禍に、サウロンの容赦ない魔の手が伸びようとしていた時・・・〕
サ:―――ぬう!ナニヤツ!!
エ:なにが“ナニヤツ”だよ、バカ野郎・・・眠たいこと云ってるんじゃねぇぞぅ・・・。
サ:お前は―――フフ・・・なるほど、ヴァンパイアのエルムドアか。
エ:・・・随分とまた偉くなったもんだな―――アベル・・・いや、サウロン!
手前ェのその捻じ曲がった根性―――
サ:フ―――・・・時間稼ぎなどどうでもよい。
吾にはこれからやらねばならぬことがあるのでな・・・!
まとめて相手をしてくれるわ―――ラゼッタにマグラ!!
ス:・・・気付いていたのか―――油断がならんな。
女禍様、ここは一刻も早くコロニーにお移りください、この狼藉者の始末は、私たちが必ずや・・・!
サ:―――ぬう?! させるか!! 女禍は永遠に吾のモノとなるのだ!
エ:―――させるかよ! 手前ェの野望は・・・
ス:ここで潰えて果てるのだ―――!
〔しかし―――フロンティア側も、何も手を拱(こまね)いていたわけではなく、人間たちの移送中にウィドウたちが襲いかかってくることは十分に考えられたため、
このときも ハイランダー と ヴァンパイア が、彼らの迎撃の任にあたっていたのです。
けれども、サウロンにしてみれば、当初からの目的が女禍ただ一人だったために、マグラとラゼッタの邪魔はただ煩(わずら)わしいばかりとなり、
それでもその場は激しい闘争の渦中となったのです。
そのスキに―――女禍と彼女に引率された人間たちは、無事コロニーの内部に収容し、
あとはマグラとラゼッタを待つばかり―――・・・だったのですが・・・
どうやらサウロンを諦めさせ、撤退させることはできたようなのですが、コロニーに戻ってきた二人の戦士の身体には予想以上の負傷の痕があり、
これからの彼らとの諍いが、無傷では終わらないことを予感させたのです。〕
To be continued・・・・