≪六節;我が身を犠牲に・・・≫

 

 

〔何かを決定・執行するべくの報告会に、女禍は今更偽りの報告をするつもりはありませんでした。

 

それに二人の姉も、これまでの女禍の98年間の努力を知らないわけでもなく、

だからこそジィルガは、女禍が地球人たちを救いたい一心で、今回の報告会では必要以上にガラティアに食い下がり、あともう少しの猶予を強請(ねだ)るかもしれない・・・

もしその時には、ガラティアの決定に逆らってもいいから、女禍の後ろ盾としての後押しをしてあげよう―――とまで考えていたのです。

 

ところが―――・・・ガラティアは、ジィルガからの嘆願めいた言葉など耳を貸すまでもなく・・・

すると女禍からは、彼女の口からはとても信じられない言葉が紡がれてきたのです。〕

 

 

女:・・・私ならば、一向に構いません―――どうか姉さんのおチカラで、この惑星を元通りに甦らせてください。

 

ジ:>女禍・・・ちゃん? あなた―――<

ガ:>・・・どうやら、覚悟はできていたようだね―――それで・・・なのかい、お前が管轄しているコロニーだけ、お前のクルーザーに収容させたのは。

  だけどどうして、お前の所有している艦であるシャンバラではなく―――クルーザーであるシャクラディアなんだい。<

 

 

〔女禍の一番大きい姉であるガラティアは、総てを見通していました。

それであるが故の物云い―――

 

おそらく女禍が、現段階において見苦しく抵抗してこないのは・・・

自らを犠牲にするため―――

 

そのことを、もちろんガラティアは拒絶することもできる・・・

けれどその時には、女禍は今までにない態度を示してくることだろう―――それは勿論、自分たちや組織に背を向けるということも考えなくてはならない・・・

 

それだけの決意の光が、女禍の瑠璃の眸に宿されている―――

 

ガラティアは、女禍がこれからどんな条件の提示をしてくるのかさえ、判っていました・・・。

 

だからこそ、彼女たちがこれからなそうとしていた計画―――

 

ポール・シフト

極の大移動

 

の提案を、いともたやすく受け入れたのだ―――としたのです。

 

一口に ポール・シフト とはいえども、地球にしてみれば数億年単位でなされることでもあっただけに、

それを事もあろうに人為的に起こそうとしていた・・・

けれども、彼女たちノーブルエルフには、それだけの技術と権限を与えられてもいたのです。

 

でも―――それをしてしまえば、今現在ある生態系がガラリと変わってしまう・・・

そのために女禍は、一部だけでもどうにかしようと、もはやどうにもならないと判った数年前から、自らのクルーザーでもあるシャクラディアで培おうとしていたのです。

 

それに・・・ガラティアから問われた最後の質疑に、女禍は沈黙を持って返答(こた)えました―――

それはそうでしょう―――それが・・・女禍の覚悟だったのですから。〕

 

 

ジ:>―――えっ? 今・・・なんだって??<

ガ:>―――・・・。<

 

女:私は―――姉さんたちの決定に抗うつもりは毛頭ありません。

  けれど・・・云わば、私たちが来てしまったことでこの惑星は急速に衰えだしてしまった。

  だからこそ、ポール・シフトの案は、私は呑みましょう・・・

 

  けれど―――私はそれで、私自身を許したわけではありません・・・

  この上は、彼らと同等の傷みを私に―――

 

  私は・・・私が所有する艦であるシャンバラを、地球のコアと同化させ、この惑星に残留する有害物質の排除・・・並びに、活性化させることを提言いたします。

 

  ・・・もし―――この提言が受け入れられなかった場合には・・・

 

ガ:>―――はいはい、そこまで・・・それだけ云ってくれれば十分だわよ。<

女:―――それでは?

 

ガ:>ああ〜仕方がない―――・・・私にしてみれば、お前が考えていたことのほうが、よっぽど厄介だからねぇ・・・<

ジ:>しかし〜〜お姉様? この子がその能力としているモノの半分である、カレイドクレストを失っては・・・<

 

ガ:>ダ〜ヨネ―――・・・つうことで、カレイドの半分の・・・そのまた半分は分割化してお前が持っていなさい。<

女:い・・・本当にいいんですか―――姉さん!

 

ガ:>(ヤレヤレ―――あんな嬉しそうな顔しちゃって・・・)

  ああ―――いいよ、その位なら・・・<

 

 

〔女禍が受け入れた覚悟――― ポール・シフト という、いわば力にモノを云わせた決定を簡単に呑んだ物事の背景には、

シャンバラと云う自分の半身を失ってまで、この地球を元通りの姿に戻そうとした、女禍の苦肉の策でもあったのです。

 

それに―――シャンバラと云う個体だけでは、自浄化作用は悖(もと)らない・・・

それゆえ、女禍の旗艦シャンバラの動力源であり、また・・・女禍のチカラを物質具現化させるアーティファクト カレイドクレスト をも、手放そうともしていたのです。

 

しかしそれでは、女禍の存在意義<レゾンデートル>が極端に薄まることとなり、

宇宙の法の摂理を代行する 執行官<エクスキューショナー> の権限までも失ってしまうことになる・・・

それに、無限に存在すると云われるノーブルエルフとしての寿命も、短く限られることになってしまい、

どう見てもリスクばかりが目立ってきてしまうのですが―――・・・

 

それでも女禍は、自らが愛してしまったこの惑星を―――住人たちを―――救おうとするために、彼らと痛みを分かち合おうとしていたのでした。〕

 

 

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

 

 

 

あと