≪七節;夫君の行方≫
リ:お早うございます―――婀陀那様。
婀:ああ―――お早う、リリア殿にハミルトン殿。
カ:お早うございます―――
それよりつかぬ事をお伺いいたしますが、タケル殿とは一緒ではないようですが・・・
婀:ああ、そのことならば―――・・・
『たまっていた政務の処理のほうを須らく終わらせてしまったから、今夜は帰宅はせずに城の宿直室へ寝泊りする・・・』
―――と、連絡がありましてな。
それが、今朝方の三の刻のことじゃ―――
リ:ええっ―――?真夜中??
そんなに遅くまで政務を・・・・それも「終わらせてしまった」―――って・・・
カ:・・・あの―――山のようにたまっていたものを・・・一晩のうちに、ですか・・・
それもお一人でなされるとは―――・・・
婀:フフ―――まさに、我が夫ながらに畏るるべきお人よ・・・
この妾とて、こと政務を見るに関しては無能の輩(ともがら)ではない―――と自負をする者ではあるが、我が夫のやりようを見る限りでは、そうと思わざるをえますまい・・・。
〔リリアとハミルトンの鴛鴦の夫妻よりも仲睦まじい婀陀那とタケルの夫妻・・・
その二人が、珍しくも朝の出仕に婀陀那の姿しか見なかったことに、ハミルトンは不自然を感じそれとなく訊いてみれば―――
婀陀那は、自分の伴侶は昨日の夜遅くまで、戦があったことで放置しがちだった多くの書類に眼を通し、決済をし終えた―――と、したのです。
そのことに、今更ながらタケルの政治手腕の高さを再認識し、賞賛するに至るのですが・・・
そこにいた誰も―――いえ・・・この国に住まう者の誰もが、そのあと彼に降りかかった受難など、知ろうはずがなかったのです・・・。〕
To be continued・・・・