≪七節;“白竜”が棲み付く地≫
〔ともあれ、三大難所の一つを攻略するために、キリエはあることを事前に云い聞かせてきたのです。〕
キ:これからは私が先行をして、足場なりを確保するからみんな確実についてきて。
それからこのカラビナと云う道具は、唯一あなた達を護る命綱―――それと、平常心を忘れないようにね。
〔高所登山で必要なのは、日々の訓練での基本と、どんな危機的状況に陥ってもパニックにならないと云うこと。
これを忠実に守っていけば、どんな難所も克服できることをキリエは知っていました。
そしてこの時でも、氷の絶壁に対応しうる基本中の基本―――三点確保を忠実に守り、そこからの応用を利かせて行くことを前提としたのです。
それにはまづ、キリエが先行をし・・・足の位置や手の位置などを、後続する者達に守らせたのです。
それにしても・・・この難所の奇妙な名の由来とは―――?
この難所自体は、全体が氷でできており、幅も20m程度だったのですが・・・
ただ単にそれだけだったならば、別段ヴァーナムの三大難所に数えられるほどのことでもなかったのです。
そう・・・つまりは―――この氷の絶壁が、そう呼ばれるようになった理由が・・・〕
キ:(!)来た―――・・・ 皆、壁に張り付いて、「白竜」よ―――!!
ル:えっ?? あ・・・っっ―――!!
ナ:ぅ・・・わっ―――!!
シ:きゃっ―――!!
レ:う・・・ううっ―――!!
マ:ひゃああ〜〜っ―――??!
〔「これが・・・“白竜”の正体―――?? 踏ん張らないと、身体ごと持って行かれそうだわ。」
突然彼女達を襲い来たのは、平地でも立っていられないほどの突風・・・
もしこれが、キリエのような熟達者の同伴ではなく、ガルバディアに来た時と同じように彼女達だけだったら・・・
しかもこの現象は一度きりではなく、絶壁を乗り越えようとするまで間断なく襲われ続けたのです。
そして・・・今更ながらに思い起こされるキリエの決断―――
ユミエ自身も、「白竜」に何度となく煽られながら、自分達のために心血を注いでくれるキリエに感謝をしていたのです。
こうして・・・苦労の甲斐あって、三大難所の一つを乗り越えた彼女達を待ち受けていたのは・・・〕
ユ:あっ・・・こ、ここは―――!
レ:見覚えがあるわ・・・この景色!
ル:私達の国・・・マグレヴ―――とうとう、帰って来られたのね。
マ:それにしても、沈む太陽さんの・・・なんと眩しいことかにゃ〜♪
〔三日目の夕刻―――陽が沈みかける最中(さなか)・・・彼女達は、懐かしい故郷の景色を、再びその眼(まなこ)に収めていました。
それに、故郷への帰路、失った人数は・・・0―――
マグレヴを出立した当初は十数人いた同士達が、知識もないままでの越山で、なんとかガルバディア大陸に辿りつけたのは、この六名でしかありませんでした。
そのことを思えば、たった一人の熟達者をつけただけで、同士達の生存率が非常に高くなってくるとは・・・
「アルパイン・スタイル」―――迅速ながらも的確な知識を身につけ、高所登山・難所を悉く克服してきた技術に、
そんな技術に心酔したある者の眸は、その技術の唯一の継承者に熱い視線を注ぐのでした。〕
To be continued・・・・