≪六節;怒号≫
〔とは云え―――当面の目的であるルリ達の勢力と接触できたことを報告するため・・・
それと併せて、今回疑問に上がったある事を母に訊くため、キリエは通信衛星経由で交信回路を開き・・・〕
キ:―――ママーシャですか。
ヱ:≫そうだけど。≪
キ:当初の目的である、ルリさんの勢力との接触は果たせたのですが―――・・・
ヱ:≫あら、それは上出来じゃない。
それにしても・・・「ですが」?≪
キ:・・・ママーシャは、過去に私達の一族から離れた者のことを存じていらっしゃいますか。
ヱ:≫・・・あるけど―――≪
キ:そう・・・ですか・・―――
ヱ:≫・・・どうしたの―――≪
キ:いえ、実は―――・・・
〔そこでキリエは、今一番疑問に感じていることを、母であるヱリヤに訊いてみることにしました。
それにキリエ自身、過去に同じような疑問に当たったこともあったのです。
感情を昂ぶらせると、半人半竜となってしまう「スキュラ形態」・・・
こんな奇怪な種族が、なぜ自分達だけなのか―――と・・・
しかし大人達は皆、それはキリエ自身がまだ未熟だから・・・と、声を一つにして云うのです。
・・・が―――そのこととは別に、何かを隠そうともしていた雰囲気も感じられたのです。
そのことに、まだ幼かったキリエの頭の中にも、自分達と同じような種族がいる―――との、淡い期待も出来てきたのです。
けれどそのことは、母であるヱリヤには云えなかった・・・聞けなかった・・・
そうすれば必ず、また怒られもするから―――
するとやはり・・・思い当たるどころの話ではなかったらしく、キリエから事の経緯(なりゆき)を、ほとんど聞かずに―――・・・〕
ル:・・・あの―――もしかすると・・・?
キ:〜〜さすが・・・ルリさんは陛下の影をしていただけあって、私の母の性格をよく知っていますね。
そうです―――激しく怒っちゃいまして・・・
レ:あの方・・・怒らせると見境がありませんからね―――
シ:・・・一番に知らせたのは、やはりまづかったのでは―――
キ:とは云っても・・・心当たりは母しかいなかったことなんだし―――他の誰に聞けと・・・
マ:エルムちゃんだったらどうだったの?
キ:うぅ〜ん・・・どうかな―――あの方は長話が好きだし、それに私たち一族のことまで知っているとは・・・
誰:・・・それは恐らく―――ゾズマ=ルクスゥ=アクリシャスのことであろう。
キ:そうそう―――そのゾズマって、私の叔父に〜?
・・・つて、え゛え゛え゛〜〜っ?? だ―――大公爵様?! ど・・・どうしてあなたが―――?
ス:ふむ・・・この御仁のことを知っていますのか。
この御仁でしたら、この四週間くらい前にふらりと現れましてな、素姓を聞こうにもただ笑っているだけで―――
ですがな?厭な顔一つせずワシらの手助けをしてもらって助かっておりますのじゃ。
キ:(しばらく顔を見なかったと思っていたら・・・)
―――でも? ・・・と、云うことは―――
大:余が・・・なぜに弱き者を弄(なぶ)って悦に浸れようか。
それに・・・そんな要請もなかったことだし―――な。
ス:・・・この御仁てそんなに強いの? 顔色が悪いんでとてもそうには見えなかったんだが―――
ユ:大臣・・・(ダメですよ、見かけで人を判断しちゃ―――)
大:フ・フ―――だが、余が張っている結界を破って入ってきた者に関しては、余が直々闘争の手ほどきをしてやっているのだがね。
〔いつか―――キリエがまだ幼かった時分に、母の愚痴めいたことで知るところとなる・・・自分の叔父の存在。
けれど、キリエがこの世に産まれてくる前に叔父の存在はいなくなっていたため、キリエもそんなには詳しく知らなかったのです。
それに・・・大人達が直向(ひたむ)きに隠そうとしていた感すらあった―――結局キリエが知るところとなるのは、叔父の名前だけ・・・
それが―――ゾズマ=ルクスゥ=アグリシャス・・・キリエと同じく、アグリシャスの姓を冠する人物。
それに、この姓名に関してだけは、母より何度も云い聞かされてきたのです。
アグリシャスとは―――母が冠するアトーカシャと同じく、種族の一・二を争う名家であり英雄の血筋なのだ・・・と。
そこで見え隠れしてくるのは、種族の・・・家の存続―――と、云うことなのですが、それはまた別の話し・・・
それにしても、一族であるキリエですら知らない事実を知る人物が、ここに一人いたのです。
それが誰か―――と、思い、キリエが声のした方を振り向くと、なんとそこには・・・
「カルマ平定戦」の折、一体いつからいなくなっていたのかと思われていた人物―――大公爵・エルムドア=マグラ=ヴァルドノフスク・・・
かつての「龍皇」と比肩されるくらいの実力を兼ね備え、良くも申せばガルバディアでの闘争に飽きてきたからこそ、未知なる闘争を求め新天地に舞い降りてきた・・・
そうとも勘繰られなくもありませんでしたが、どうやら様子を見て行くうちにも、この地にいる闘争の相手も多寡の知れてしまったようで、あたら暇をもてあまし気味にも見えたのです。
いや・・・それにしても―――
自身が産まれる以前に行方の知れなくなっていた叔父が、なぜここに―――・・・
その思いとは裏腹に、キリエの身体に廻っていた熱き血潮が滾ってくるのを、氷の蒼き龍は感じずにいられなかったのです。〕
To be continued・・・・