≪五節;(非)協力者≫
〔一方その頃―――マグレヴを虎視眈々と狙っている国の内部では・・・〕
将:ほう・・・ご挨拶代わりの偵察隊を蹴散らしたと云うのか―――
あの国も、存外兵力を温存していたと見られる・・・。
官:ルクスゥ様―――
ゾ:(ゾズマ=ルクスゥ=アグリシャス;男;元はシャクラディア帝国所属で、当時「雷帝」と称していたスターシアの配下にして実子。
尚、ヱリヤは彼の姉に当たり、キリエは彼の姪に当たる。)
どうした・・・ベナルカントス―――
べ:只今・・・最後の報告を齎(もたら)した者が、事切れました―――
その者が、今わの際(きわ)に申したことが―――・・・
ゾ:・・・聞いておこう―――
べ:貴方様に非常に酷似した気を持つ者と・・・不可思議な術式―――「裏面式」なるモノを操る術者が、あちら側に付いている・・・と。
ゾ:なんだと―――?(この私によく似た気に・・・「裏面式」!?)
べ:いかがなされましたか・・・ルクスゥ様。
ゾ:いや・・・何でもない、下がってよいぞ。
〔その国―――マルドゥクと呼ばれた国家の主要城塞都市「ビヨンド」の、恐らくは将軍の私室と思われる場所にて、
この度派遣した偵察部隊の報告を聞く、マルドゥクの軍事顧問とみられる男・・・
身を包む全身鎧も他を圧倒し、「シミター」と呼ばれるセレスティアル・ハルバートを得物に持つその男こそ―――
ゾズマ=ルクスゥ=アグリシャス・・・
その彼が―――彼自身と非常に良く似た気を持つ者・・・と、その昔よく知っていた存在が使っていた「裏面式」のことを聞くなり、
彼自身「まさか・・・?」とは思っていたようですが、よもや元所属していたシャクラディアより遠隔のこの地において、そんな偶然は有り得ないだろうとの見解に至ったのです。
そんな時・・・別の場所に斥候に出していた者より、不審な男女二名を連れてきたとの報告に、立ち会うことになったゾズマは・・・〕
ゾ:その者達は・・・?
斥:はっ―――「世を隔てし壁」にて、不審な行動を取っておりましたので、至急連行に至った次第であります。
どうか吟味なさってください。
〔「世を隔てし壁」・・・余りにも切り立っており、且つ人の力では克服できない高さゆえ、この先の向こうにある世界と隔てられていることを、
この地に根付く住民が嘆いていた際に漏れた言葉・・・それが、この異彩を放つ地域の名称になってしまったのです。
そんな場所近くで・・・この界隈ではあまり見かけない容姿の男女―――
女性の方は、生来から紅かった髪を、こう云った場合―――潜入捜査時にばれないように灰色に変換し、眸の色も瑠璃から灰褐色に変えた・・・シホ某と云う存在。
片や男性は、身の丈が七尺八寸はあると云う、ベェンダーと呼ばれる巨漢。
しかし・・・この二人は―――
すると、ゾズマの前に引き立てられたシホ某の方から・・・〕
シ:ほお―――・・・あんたがゾズマって云うのかい。
斥:なにっ―――お前・・・このお方をどなたと心得おる!
ゾ:まあ待て、それよりお主・・・以前どこかでお会いしたか。
していないならなぜ私の名を―――
〔不遜・・・不遜と云うには、あまりにも相応しい態度―――
こちら側は、どうしてあの場所に―――の、理由を聞こうとしていると云うのに、このシホ某は名乗りさえもまだだと云うのに、ゾズマの名を名指しして見せたのです。
しかも・・・マルドゥクの下級将校程度では、外すことすら敵わない戒めを―――〕
斥:あ・あっ―――・・・! 「戒縛(かいばく)」が!!
ゾ:(なんと―――・・・)
シ:フフフ・・・驚いて声も出やしないかい―――
こんな別嬪を、こんな無粋なモノで縛り上げるのは風情がないんだよ。
ゾ:・・・貴様、何者だ―――
シ:まあ―――まあ―――まあ―――・・・待ちなよ。
私は何も、あんたと闘り合うためにここまで来たわけじゃない。
その逆・・・あんた達の力になってやろうと、来てあげたのサ。
〔本来は、違則を犯した将校・官吏を罰するために考案された、「戒縛(かいばく)」と呼ばれる拘束縛式―――・・・
そんなモノを、果たしてどうやったらそうなってしまったのか・・・シホ某と呼ばれる女性は、自分のチカラで強制解除してしまったのです。
そんな事実に、驚きの色を隠せないゾズマと斥候―――
当初は、難民の類いかと思い油断していましたが、目の前でこんなものを見せられては・・・さすがのゾズマも尋常ではいられなくなり、すぐさま種族の色を濃くしてしまうのです。
そんなハイランダーの感情を透かせるかのように、シホ某の口からは、これからはマルドゥクの国益にも繋がるような・・・そんな甘い誘惑をして近づいてきたのです。〕
To be continued・・・・