≪六節;タケルの思惑≫
〔それに、このタケルの思惑を、やはりこの時一緒に聞いていたヱリヤは、すぐに理解にまで至りました。
タケル自身が一番に信頼する妻に、戦局において一番に重要な地点を任せる―――
またそれと同時に、この国の将に対抗心を植えつけさせて、士気の向上を図る・・・
そう云えば・・・自分達も、過去にはマエストロにそうやって競わされてきたモノだ・・・
そのお陰もあって、現在では親友同士―――・・・まあこれは、「腐れ縁」だと云う話しもあるようなのですが・・・
しかしその一方で、婀娜那の方も、夫の策には理解を示しました。
けれども一抹の不安は拭いきれなかったのです。
今回の戦は、ガルバディアで展開されたモノのそれとは勝手が違う・・・
気候も―――地形も―――何一つ知らないのに、タケル一人を敵地奥深くに潜入させてよいものだろうか・・・
そう云った思惑交々(おもわくこもごも)がありながらも、各戦線にて展開をするべく、戦地に赴いて行く将兵達・・・
「ジブ」には、平地での戦闘で無敵を誇っている「ハイランダー」の母子(おやこ)―――・・・
「ミレット」には、足場は悪くとも、闘技(アーツ)を駆使する「公爵」を始めとし、「子爵」・・・そしてこの度新しく一族に迎えられた「伯爵」を擁する「ヴァンパイア」の一族―――・・・
「カルカノール」には、上記二つの戦場の中間地点となっている事もあり、殊の外激戦が繰り広げられるだろうと予測される為か、
パライソ国、元・大将軍婀娜那・・・と、マグレブでは随一の勇を誇れるテツロー・・・
しかもこの二人は、タケルの思惑もあり、互いの武勇を競わされようとしていたのです。
そして、それらとは違う―――別働隊・・・
自分達と友好関係を築いているマグレヴと敵対する―――マルドゥク・・・
その彼らが、マグレヴを攻める足掛かりとする為に、重要である前哨の砦と見定めている「ユグノー」・・・
そのまたさらに後方に、この砦に物資を輸送させている兵站戦ともなっている拠点「ダニューブ」を陥落(おと)す事を宣言し、
密かにその地へと潜行する為、アーク・ゼネキスを離れるタケル・・・と、その彼を追うように二つの影―――
実は、この二つの影の正体とは―――〕
タ:ユミエにナオミ―――お前たち良いのか、ルリの下(もと)を離れたりして・・・。
ユ:フフ―――・・・先程のテツローの弁(ことば)ではありませんが、私達の国は私達が守る・・・
ナ:そんな私達が取るべき行動は、最も適した行動・・・
なに、ルリの事なら大丈夫だって、今までにもレイカやシズネの二人が護ってきたんだから。
だから・・・私は―――自分のシュミレーションに従って、自らの責務を全(まっと)うするまで・・・
この私に内蔵されている―――「ノヴァ・ハーツ」のプログラミングには、それだけのモノがあるのさ・・・。
〔それは紛れもなく、以前まででも、自分の手足としてガルバディアを所狭しと、縦横無尽に駆け抜けていた『禽』の二人・・・
けれど、故国に戻ってしまえば、彼女達もマグレヴを構成する大切なピースの一つ・・・
しかしまた今回、タケルに従属したと云うのも―――誰からの命令でもない・・・自分の意志・・・
つまり、自分達が認めたこの男の為ならば・・・と、先駆ける刃にならんとしていたのです。
こうして、三路をして敵兵力を分散させた後、別働隊によって後方の兵站戦を断つ計略は、着々と進められて行ったのですが・・・
そんな彼らの知らない処で―――・・・もっと的確に云ってしまえば、この大陸の支配を握る重要な決戦の地は、彼(か)の三地点なのではなく・・・
マグレヴ王宮―――アーク・ゼネキスにて繰り広げられるのでした。〕
To be continued・・・・