≪六節;奪い去られたモノ―――≫
ア:・・・婀陀那さん―――お起きになられて―――
婀:ぅ・・・うぅ〜ん―――
・・・これは―――?
(はっ!)姫君?! 姫君ではございませぬか―――?!!
いや・・・しかし? 薄っすらと光を帯びられているとはどうしたことじゃ―――
ああいや、それよりも―――あなた、起きてくだされ・・・陛下が―――
冷たい―――?! あなた・・・あなた―――?!!
〔なんと、その・・・アヱカと思われる発光体は、今度はタケルではなく婀陀那のほうに接触を図ったのです。
そのことに目を醒まさせた婀陀那は、こんな夜分に・・・しかもパライソ国で一番にお偉い人が、自分たちの家庭を訪れている・・・
そのことに不敬があってはならないとしてはいたのですが、ではなぜ薄っすらと光を帯びているのか―――・・・
その疑問も頭の隅におき、今は隣で寝ている伴侶を起こそうとしたのですが―――
触ると、愛する夫の身体は既に冷たくなっていた・・・?
そのありえない出来事に、思わずも取り乱しそうになるのですが―――〕
ア:ウフフフ・・・今は、何をしようとしても無駄でございますよ―――
何しろ、ここを限定の時間凍結にしてございますから―――
婀:(な・・・)なんですと―――? ここを・・・「限定の時間凍結」??
―――ならば、ナゼ妾とあなた様だけが・・・
ア:・・・動き―――喋っている・・・と、いう事でございますね―――
そのことを・・・微に入り―――細に入り―――説明して差し上げるのは・・・そう簡単な事ではございません―――
それに・・・時間のほうもございませんから―――・・・
婀:なんですと? 時間がない―――??
ア:一つ―――簡単にコトを申し述べますには・・・
今の、このわたくしの発現しているチカラの源は―――≪カレイド・クレスト≫と≪シャクラディア≫のチカラ・・・
その二つからの協力を得て―――ようやく成せていることに過ぎないのです・・・
婀:≪カレイド・クレスト≫と≪シャクラディア≫とは・・・しかし、それは―――
ア:ああ〜〜・・・申し訳ございません―――もう時間のほうも、残りわずかとなっております・・・。
それでは―――今宵・・・あなた方が番(つが)われたばかりのモノ・・・
―――この、わたくしが頂戴いたします・・・
婀:うっっ―――? な・・・なにを――― 姫君!お気を確かに!!
ア:―――大丈夫でございます・・・今のわたくしはアストラル・バディ・・・
母体であるあなた様の身体を傷つけることなく―――その胎内にあるモノを・・・・
〔その―――アヱカの姿をした発光体は、簡潔にこういうことが出来ている理由を述べると、
この・・・複雑にして莫大なエナジーを要するチカラを、短時間でしか発現できないということを諭し、
早急に本来の目的を遂げようとしたのです―――。
しかし、この存在の本懐とは、畏れ多くも愛する二人が愛し合った結果の「それ」―――
そのことを、あたら霊体に近しいその存在は、婀陀那の胎にあるモノを取り出すため、
手を・・・その部分に弄(まさぐ)り当て―――総て掬い取ってしまったのです。
そして―――本懐の成就を遂げたその不徳なる存在は、定石に倣い彼らの記憶を彼方へと追いやり、
時間凍結の終了と共に、その場から消え去ってしまったのです―――。〕
To be continued・・・・