≪五節;血を吸う事の意味≫
〔何か―――そう、黒い「何か」が、云い争っているサヤとマキの脇をすり抜け、マルドゥクの・・・四人いた中の三人を血祭りにあげてしまったのです。
ですが・・・そう―――その「黒い何か」とは、云うまでもなく・・・サヤとマキ以外のヴァンパイア―――
彼らにしてみれば、最も注意を払わなければならなかった存在・・・「公爵」エルムなのでした。
しかも、「血の制約」からの呪縛から解き放たれたかのように、「過去」のエルムを伺い知らしめるような言動の数々・・・
それは―――エルムの「父」である、大公爵・エルムドアがそうであるように・・・
血を―――闘争を―――求めて已まない・・・そんな実態が露わになろうとしていたのです。
そして―――生き残った者も、歯応えがある者と思ってみれば・・・
存外、他の者と大してそう変わらなかった―――その事にエルムは・・・〕
エ:―――フン・・・この程度のもんだったのかい。
色々がっかりさせてくれたもんだねぇ、紛らわしいんだよ―――お前・・・
大して違わないんだったらさぁ、生き残ってくれてるんじゃないよ―――判るかい、今のこの私の憤りがどれほどのものか・・・お前に。
けど―――もうここには、私が求めていたのは無くなっちまったみたいだ、なら・・・エンデ―――と、逝こうか・・・
――〜契約完了〜――
――=プロヴァ・ディ・セルボ=――
〜例えるなら・・・そう、嵐の前夜に咲いた、花一輪。〜
〔やはり、実力の程度と云うのは、直接闘(や)り合ってみない事には判らない・・・
けれど―――こうしたように、期待を裏切られる結果となるのも少なくありませんでした。
今回の一例も、まさにその内の一つに当てはまるモノであり、闘争の渦中で愉悦に興じようとしていた者の期待を裏切った者には、遍(あまね)く公爵自らの制裁が待ち受けていたのでした。
自らの体を傷付け―――そこから大量に溢れ出る血潮・・・
しかしそれは、見る見るうちに一つの―――それも巨大な掌を形成し、相手を掌握してしまうと・・・
行使者自らの膨大な魔力で創りだした、巨大な契約書に―――さも、印章の如く捺印されてしまったのです。
でも、これこそが、彼ら―――ヴァンパイアの流儀・・・
血は―――彼らにとって生きる糧・・・
血は―――彼らにとって魂の通貨、命の貨幣・・・
つまりこの事が示すモノは、血とは―――ヴァンパイアにしてみれば、命の取引の媒介物でしかない・・・
血を吸う―――と、云う事とは、命の全存在を自らのモノにする為の、通過儀式でしか有り得ない・・・
それが、この「契約書」の意味する処であるのは、疑いようのない事実でもあるのです。〕
To be continued・・・・