≪四節;光の中へ≫
〔今度こそ完全なる決着をつける為、プルミエールは業(わざ)の解放を試みました。
しかし―――今度ばかりは、周囲になんの変化も見られなかったのです。
そう・・・何も―――・・・
これは一体何を意味しているのか―――それは、ジョカリーヌの推理により、ある一定の事が垣間見えてきたのです。〕
ジ:(そう云えば・・・アヱカは今の今まで、自分が得意としている業(わざ)の解放を行わないままだった―――
どうして・・・
それどころか、ジィルガ姉さんと手を組んで、姉さんの得意としている術式を行使できるなど・・・
―――もしかすると・・・今までアヱカが見せてきたモノの、力の源とは・・・「ヴァーミリオン」?!
・・・と、云う事は―――・・・)
〔「ヴェリザの方陣」にしろ、「夢幻陣」にしろ・・・いづれも元々は、ジィルガの得意としている術式でした。
それを―――貸与しているとは云え、アヱカが行使出来ていると云うのは・・・
それに、この術式を行使出来る力の源となっている、「アーティファクト:ヴァーミリオン」の顕現(ちから)の流出が、僅かながら行使者であるアヱカから感じられるに至り、
ジョカリーヌも、今回の計略の壮大さを知ってしまったのです。
それに・・・アヱカとプルミエール―――両者が解放できる業(わざ)の源は、遥かな昔女禍に敗れた際に、
地球の衛星である「月」の「裏側」に轟沈した、「リヴァイアサン」と云う・・・ある悪の組織の旗艦。
それを同時に使ってしまっていては、自分が成さねばならない事以前に、「リヴァイアサン」の容量が尽きてしまい、
一体何の為に「生まれ変わり」などをして、生き恥を晒してきているのか判らなくなると云うモノ・・・
それでなくとも、女禍との激闘で、大量にあった力の源泉は、現在では微々たるものになっていると云うのに―――・・・
そう云ったものを総合的に考えると、実はプルミエールがしていた事とは、自殺行為にも等しかったのです。
それに・・・たった一度きりで良かったのです―――こんな忌まわしい業(わざ)を解放するのは・・・
だから、自分で自分を斃す際―――マグレヴの各地を巡る形で描いていた「魔法陣」・・・
それのほぼ中央―――いわゆる「天元」の位置に、術式の発動の契機ともなる、本来の大きさの100万分の1の大きさの方陣を描いた時・・・
各地に描いておいた「七教会」の御幣が作用し、ヱニグマの分身(クローン)であるプルミエールを束縛する、遠大な「ヴェリザの方陣」を形成させていたのです。
その事は同時に、アヱカ自身の力の源泉である「リヴァイアサン」が、再びアヱカに戻った事を意味し―――
そして終(つい)の御業(みわざ)ともなった、「果てしなく続く永遠なる地獄」を意味する「インファナル・アフェア」は、
存在自体を包み込み・・・無へと―――光へと―――連れ去って逝ったのです。〕
To be continued・・・・