≪四節;用意周到≫

 

 

〔ところで―――自分が治めるべき国に戻った者達は・・・〕

 

 

ア:ふう・・・これでようやく、わたくしのやるべき事が済みましたね。

タ:何を気弱な―――これからでございますよ。

  これからこの国は、あなた様主導の下・・・大いなる発展を―――

 

ア:もう・・・よいのです―――タケル。

  わたくしは、わたくしなりの「けじめ」は着け終わりました・・・。

  これからは、ゆっくりとさせて下さい。

 

 

〔殊の外、女皇はこの度の動乱で疲れていました。

それに、そもそもこの動乱の因(もと)を糺(ただ)せば、過去に自分が蒔いた禍根の種でもあったがため、その芽を摘むことが自分の責務のように感じ、

全身全霊で臨んでしまった事が、その原因であったのだとしたのです。

 

それにアヱカ自身、この度の動乱が終息した暁には、ゆったり・・・のんびりとした悠久の刻を過ごそうと考えていたのです。

 

―――が・・・

 

それは存外、甘いことだと思い知らされるのでした。

それと云うのも・・・〕

 

 

ジ:そうは行きません―――

ア:ジル・・・どうしたのです、あらたまって―――

 

ジ:まずはこれを―――・・・

ア:(?)・・・これは―――・・・辞表ぉ~?! あの・・・これ・・・

 

ジ:あんただけこれから楽しよう―――ってのは、世間様が赦さないと思うのよぉ~~

  それに、やっぱりそゆことするんだったら、ちゃんと順序は弁(わきま)えとかないと―――

ア:じゅ・・・順序~~って―――この国の丞相であるあなたが・・・

 

ジ:あぁ~ら、それならここにいるタケルちゃんに、またなってもらえばいいことじゃん。

タ:う゛・・・ワシ―――ですか??

 

ジ:それにぃ~婀娜那ちゃんも、録尚書事に戻ってもらわらないと―――

婀:わ―――妾も??

 

ジ:当~然―――でしょ?

  第一、私も元はこんなことやるつもりじゃなかったのにさ―――女禍ちゃんと・・・あと、ついでにこいつから「お・ね・が・いv」されちゃ、厭だって露骨には云えないでしょ・・・。

 

ア:~~・・・・。(上目遣い)

 

ジ:そーゆー目で見たって、今回ばかりは聞きません!

 

タ:~~・・・・。(上目遣い)

婀:~~・・・・。(上目遣い)

 

ジ:あなた達も!

  ・・・まさかあんた達―――女禍ちゃんや私に、これから後の面倒事押し付けて、自分達は楽しようって思ってなかったでしょうねぇ?!

 

ア:・・・。(図)

タ:・・・。(星)

婀:・・・。(☆)

 

ジ:あっきれた―――・・・あのねぇ~あんた達・・・

 

 

〔この主従達の、それまでのやり取りを知っていたかの如くに、ある書付(かきつけ)を手に―――

女皇不在中に国権を預かっていた、丞相・ジィルガ=エスベラント=デルフィーネが、女皇の部屋に入ってきたのです。

 

そして彼女が手にした文書を見て、アヱカは驚きの表情しか見せる事が出来ませんでした。

それもそのはず―――その文書には、自らの意思で職を辞したい旨が書かれていたのですから。

 

それに、これからの日々を、どう静かに暮らしていこうか・・・と、考えていた者達の計画を、根底から覆してしまいそうな一葉の文書に―――

またどうやって抗おうかとしていた処に・・・〕

 

 

ア:あ・・・っ! これ―――わたくし達が戻る前日に、効力を発生・・・って―――

ジ:ニヒヒヒ♪ そおゆう事―――♪

  じゃ・・・あんた達には悪いけど、この後のスケジュールって秒単位で刻んであることだしぃ~・・・

  ま、あとは頼むわ―――じゃね~♪

 

 

タ:う・・・うぅむ―――なんと手際のよさ・・・

婀:その計画は・・・妾たちに知られることなく、着々と進められていたようですな―――

ア:仕方ありませんね・・・まあ、ジルの事だから、するべき事の最低限はしてある事でしょうから・・・

 

タ:では―――・・・

ア:・・・ごめんなさいね? またあなた達に、もう一骨折りしてもらう事になりますけど―――・・・

婀:そこは構いませぬよ、姫君のそれも・・・妾たちに比べれば大変なことにございますから。

  なにとぞ、お身体の方・・・ご自愛されませよ。

 

 

〔それこそはまさに用意周到―――

一体どう云う風にして他の大陸が統一され、この国の君主達が戻ってくるかの時間を割り出したのかは知らないけれども、

きっちりと戻る前日に「辞表」の効力が発生する細工が施されており、ここにアヱカ達は、自分達の望みが断たれた事を知ったのです。

 

しかし、ジィルガの事を良く理解していたアヱカは、何も彼女が職責を丸投げにして辞めると云うのではなく、

これから来(きた)るべき平穏な世の中を予知するかのような、法の整備や制度の改正を盛り込んだ計画書を、自分の後継者に託して職を退いていた事を知るのです。

 

 

そして―――長い外遊から戻ってきた女皇は、また新たに丞相職にタケル・・・録尚書事職に婀娜那を据え置き、

これからは争い合うことなく、平等に―――皆が手をとりあって共に生きて行く事を採択し・・・

 

ここに本当の―――平和な世の中が訪れることとなったのです。〕

 

 

 

 

To be continued・・・・

 

 

 

 

あと